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ユニークなルックで登場人物の心情を表現「frozen expectation ジョウネツノバラ」

カメラアングルやトーン、グレーディングにも妥協しないこだわりの制作

img_special_bmcase04_01.jpg「frozen expectation ジョウネツノバラ」

「THE BLUE HEARTS ショートフィルムセレクション from ブルーハーツが聴こえる」は、日本を代表するロックバンド、THE BLUE HEARTSの楽曲をテーマにした短編オムニバス映画。6人の気鋭の監督たちがそれぞれTHE BLUE HEARTSの楽曲を選び、それをテーマに短編映画を制作している。

楽曲「ジョウネツノバラ」をテーマにした1編「frozen expectation ジョウネツノバラ」は、永瀬正敏、水原希子が主演し、永瀬は脚本も担当。禁断の恋愛模様を描いたこの作品は、ロサンゼルズ・アジアン・パシフィック映画祭にて『フェスティバル・ゴールデン・リールアワード(短編部門)』、『ニューディレクター・ニュービジョンアワード(短編部門)』の2部門に正式ノミネートされ、日本国内ではゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016で上映、高い評価を受けた。

img_special_bmcase04_02.jpg監督の工藤伸一氏(右)と、カラリスト・DITの三浦徹氏

この作品の監督を務めたのが、企画立案者でもある工藤伸一氏。工藤氏は、映像の力で「魅せる」ことが不可欠だったと語る。

「26分間セリフなしで、どれだけもつのかもひとつのチャレンジでした。観客を飽きさせないための画作りには相当こだわって、カメラアングルやトーン、グレーディングを含めて妥協せずに作りました。不安もありましたが、まったく26分の尺を感じさせない映像のパワーが伝わる作品になり、映画祭でも高い評価をいただけました」(工藤氏)

暖かいルックと冷たいルックの両方を使い分け、登場人物の心情を表現するために照明にもこだわった。シネマスコープの画角というのもこだわりのひとつ。撮影方法も、一般的なレンズで撮って後からトリミングするのではなく、アナモフィックのレンズを使用した。

「アナモフィックで撮るということにこだわり、テストグレーディングもかなり時間をかけました。グレーディングによって同じシーンでもこれだけ印象が変わるのかというのが実感です」(工藤氏)

工藤氏は映像の魅力をさらに引き出すため、株式会社スパイスのカラリスト・DIT、三浦徹氏にグレーディングを依頼した。三浦氏はVEやDITとして豊富な経験を持ち、現場でDaVinci Resolveを使って作業することも多いという。近年はDaVinci Resolve Advanced Panelを導入しての本格的なグレーディングも手がけている。今回の作品も、狙い通りのルックを与えるためにDaVinci Resolve Studioを選択している。

「アナモフィックレンズで撮影されたフッテージは、縦方向が2倍の状態で収録されるのですが、Resolveはボタンひとつでシネマスコープの画角に戻せるので非常に便利でした。今回は撮影から作品に関わったので、現場にResolveを持ち込んで作業して、そのデータをそのままグレーディングに引き継ぐことができたので時間の節約になりました」(三浦氏)

img_special_bmcase04_03.jpgDaVinci Resolve Studioを使用してグレーディングを行なった

試しに当てたLUTがユニークなルックを生み出した

今回、現場は低照度環境下での撮影が多く、三浦氏は「暗部が少し浮いたしっとりやわらかいトーン」を考えていたという。「でも、プレグレーディングの段階で試しにKodakのek200TのLUTを当ててみたんです」(三浦氏)。それは、病室で登場人物が亡くなるシーンだった。

「そのLUTを当てたことによって、暗部が締まってミッドとハイライトが上がり、独特のトーンが生まれました。フェイストーンがすごくマットな感じになって、現実とはちょっと違う雰囲気を作り出せたんです。この物語はその病室のシーンから始まるのですが、人が死ぬシーンとして今まで一番美しいんじゃないかと思うくらい美しいものができました。まったく生々しくなく、ホラーな感じもありません。死というものを非常に美しく捉えられています」(工藤氏)

撮影はデジタルで行なわれたため、フィルムの質感を引き出すことにも注力したと三浦氏は言う。

「よりフィルムっぽさを出すために、Resolveのプラグインで粒子を足しています。光学フィルターを使ってトーンの調整すると、平面的な効果しか出ないんです。今回は、古いアナモフィックレンズの光学ブロックと、ResolveのプラグインやLUTを組み合わせて使っています。アナログとデジタルの効果を組み合わせることによって、より立体的にトーンが調整できるんです」(三浦氏)

「トーンの硬さや柔らかさ、シャープネスなどはResolveを使って処理をすると印象が全然違ってきますね。上に何かを乗せただけではなくて、きちんと画全体になじんでくれる。デジタルなのかフィルムなのかわからないようないいトーンが出ています」(工藤氏)

最後に三浦氏はこう締めくくった。

「今回初めて劇場公開の作品をグレーディングしました。本当は劇場用のスクリーンで作業したかったのですが、モニター環境を完璧に合わせて作業したところ、劇場でも自分が思った通りのトーンが再現できていました。小さなハコですが、Resolveでここまで思い通りの色が作り出せたことはすばらしいです」(三浦氏)


「frozen expectation ジョウネツノバラ」予告編

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