Blackmagic ケース・スタディ

Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K 制作事例/谷川英司

谷川英司(映像ディレクター)

Interview 谷川英司(映像ディレクター)

現場の空気を捉えられるカメラ

何もない大きな部屋で歌い、踊り、花を食べる女性。凛とした佇まいでエネルギッシュに動きまわる彼女の姿に魅了される。これは「INORI -PRAYER-」など、実験的で美しい映像を作る谷川英司監督が、Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K(以下BMPCC4K)で撮り下ろしたオリジナル映像(ProRes422収録)だ。ハイスペックなカメラで何を撮ろうとしたのか。カメラ自体にどのような可能性を感じたのか。谷川監督と撮影監督の佐藤匡氏に聞いた。

img_special_bmpc4k_tanigawa_01.jpgDP:佐藤匡 振付:PSYCHE HM:宮崎秀規 フラワーアーティスト:西別府久幸
Pr:大澤康久(TOKYO) PM:田草川実希(TOKYO) T:我妻マリ

──谷川監督はBlackmagic Pocket Cinema Cameraを愛用していたそうですが、BMPCC4Kでなぜこの映像を撮ろうと考えたのでしょうか。

谷川 BMPCC4Kは4K収録でHS(ハイスピード)も撮れるし、今で以上にハイスペックで美しく撮れるようになった。コレで何を撮ろうかと考えた時に、もしかするとこのカメラなら表面的にではなく内面的な美しさを捉えられるんじゃないか。命とかオーラとか空気のようなものを捉えるとするならどういう表現ができるのかを考えていきました。「狂おしいほどの美しさ」を捉えようというキーワードを提示して、それをみんなが読み解いて美しくなる方向を探りました。紅葉はなぜ綺麗なのか。命の終わりを感じて最後に華やかになる様が美しい。そこでロケ地も木更津にある廃墟に決めて、我妻マリさんに出演をお願いしました。

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──我妻さんにはどのように演じてもらったのですか。

谷川 最初に「生命の誕生から終わりまでと聞いてどういう表現ができますか」と問いかけました。彼女は森の中に住んでいて、狼を追い払うために叫んだりするんだという話を聞いて、「では何かを感じたら声を出してみてください」と伝えると、精霊の歌を歌ってくれた。それがとても良かったです。今回の映像ではカットを繋いで作り込むような絵にするつもりもなかったのでワンカットで撮影しています。

──BMPCC4Kを使ってみた印象を教えてください。

佐藤 今回は三脚とRonin-Mで撮っています。監督の要望する内部収録でHSなどでしか撮っていませんが、実践的に使えるカメラだと感じました。

谷川 当初は照明を組んで撮ろうと思っていたんですけど、モニタで見る限り明るかったのでノーライトで自然光だけで撮りました。使ってみるとHSも効いたし、ダイナミックレンジも広いし、今回は制限された設定だったので、絵の美しさが必須だったんですけど、撮影した素材を確認するとここまで綺麗に撮れるんだという感動がありました。現場で見ていたよりも編集で見た絵の方が綺麗に感じました。

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──BMPCC4Kの色や絵作りはどう感じましたか。

谷川 肌の表現が素晴らしかったですね。ほぼ撮ったままの映像にLUT当てるだけでした。ノーライトノーグレーディングで、狙い通りのもの撮れたと思います。撮影が終わったらみんなが自然に拍手した。その達成感が良かったですね。撮った絵をみんなで確認した時、ちょっとした奇跡が起こったように思い描いていた絵が共有できた瞬間がありました。現場の空気を捉えられるカメラだと思います。

佐藤 深度が浅すぎず深すぎず程良いですね。トーンで攻められるカメラなので説得力のある絵が撮れるなと思いました。映画やドラマを撮ってみたいと思います。部屋が狭いとか路地だとかアングルの不自由さを感じることが多いので、このカメラで撮ったらどうなるんだろうと想像するだけわくわくします。

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Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K




※この記事はコマーシャル・フォト2019年2月号から転載しています。


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