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初のDolby Vision使用作「トゥモローランド」グレーディングの新たな試み

ワイルドかつ精巧なビジュアルエフェクトをグレーディングで向上

現在公開中のディズニー映画「トゥモローランド」は、ジョージ・クルーニー主演、「Mr.インクレディブル」「レミーのおいしいレストラン」の2作品でアカデミー賞を受賞したブラッド・バートが監督を務めたSF作。かつての天才少年フランク(クルーニー)と、科学に対してあふれんばかりの興味を抱く明るい少女ケイシー(ブリット・ロバートソン)が「トゥモローランド」として記憶の中に共有された秘密の地を掘り起こすというミステリーアドベンチャーだ。

img_special_bmcase02_01.jpg©2015 Disney Enterprise,inc. All Rights Reserved.

この映画は、カラーテクノロジーとコントラスト比を向上したHDRを提供できるDolby Visionを使用した最初の公開作となった。グレーディングにはDaVinci Resolveが使用され、新しくDolby Visionプロジェクト用のパスが作成された。製作に携わったポストプロダクション「Company 3」のスティーブン・ナカムラ氏は語る。

「『トゥモローランド』は現実世界よりも幾分か明るくサチュレーションが高いのですが、黒つぶれや白飛びはなく、極端なルックの世界ではありません。エフェクトをわずかに調整して滑らかにするために、Resolveで多くのPower Windowを使いました。同作ではワイルドかつ精巧なビジュアルエフェクトが多用されており、全体を見た時に、他のショットとの関連で常にグレーディングで向上させられる要素がありました」

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ある登場人物が初めてトゥモローランドに足を踏み入れるシーンでは、驚異的なVFX シーケンスが使用されているという。

「この約2分のシーンには、Industrial Light & Magic(ILM)が作成した膨大な数のエレメントが使用されています。彼らがエフェクトを作成している間に、私はILM のスタジオでカラーグレーディングを行ないました。Resolveのカラーマッチのソフトクリップ、ハイライトツール機能やクロマキーを使ってフレームの一部のサチュレーションを調整したのです」

ナカムラ氏はまた、Dolby VisionパスでDaVinic Resolveのソフトクリップ/ハイライト機能を使用したという。

「従来のDシネマ P3フォーマットをPQフォーマットに変換する際、フレーム内の明るい部分を2倍の明るさにでき、さらに非常にディープなブラックを得られます。ブラッド(バード監督)とクラウディオ(ミランダ撮影監督)は、このハイダイナミックレンジをさりげない方法で利用することに関心を持っていました。

多くのDolby Vision グレーディングとは、まさに素材を再解釈することです。より幅広いダイナミックレンジに対応していても、他のエレメントを圧倒することはありません。例えば、ランプなどのフレーム内の明るい部分が、俳優の顔よりも強調されることはないのです。

Dolby Visionパスは、ハイライトの部分をこれまでのDシネマでは見たことのないほど明るくできる可能性を持っていますが、私はDaVinci Resolve のソフトクリップおよびハイライト機能を多用し、Dolby Vision 31.5 ft-L(フットランバート)を使って、標準の14 ft-L バージョンが持つ雰囲気を維持するようにしました」

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「トゥモローランド」はデイモン・リンデロフ、ブラッド・バード、ジェフリー・チャーノフ制作、ブラッド・バード、ジョン・ウォーカー、ベルナール・ベリュー、ジェフ・ジェンセン監督、ブリガム・テイラー制作総指揮で、現在公開中。

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