2009年09月03日
玉:玉内 編:編集部
編 前回は、太陽の下でモノを見るのと近い状態を、メインライトとフィルインライトで作るという話でした。
玉 メインが太陽光、フィルインが空全体から拡散して降り注ぐ光という考え方ですね。今回は、それをもう少し応用して、メインライトの位置を考えてみようと思います。
編 普通、メインライトは斜めからあてますよね。
玉 斜めからあてた方が、正面からあてるよりも自然な影ができて、立体感が出るのは当然ですよね。また、やや上方からあてるのも、通常は太陽の光が上にあることに倣っているわけです。水平45度、垂直45度ぐらいの高さにライトをセットするのが、基本的なライティングですね。
下の作例の、両端から棒が出た立体の場合、被写体正面をカメラの光軸からやや斜めに向けた方が、形全体が見えて立体感を感じます。さらに被写体が向いた方向とは逆斜めからライトをあてると、手前が明るくなり、カメラから遠い部分に影が落ちて、奥行き、立体感が強調される。
これが同じ斜めからの光でも、被写体の向いた正面から光をあてると、全体がのっぺりとした印象でしょう? つまり「被写体の形状」「被写体の向き→カメラアングル」「光のあたる方向→ライトアングル」が、ライティングの重要なポイントなんです。
メインライトの位置でモノの見え方が変わる
小型バンクライトをメインにして、その位置を色々と変えてみた。
明暗のコントラストをつけるため、フィルインはストロボを使わずに、大きなレフ板を囲むようにセットした。
玉 ところでマジックアワーって知っていますか?
編 朝、夕の太陽が出る直前、太陽が沈んだ直後ですよね。クルマのロケ撮影は、その時間帯がいいと言われますね。
玉 そう、モノがとてもきれいに見える一瞬。マジックアワーとはメインの光源、すなわち太陽が地平に沈み、まだ明るさが残る空の光のみでモノを見る状態。ライティングで言えば、全体に回る光、フィルインライトだけで撮影する感じです。
編 メインライトがないと、立体感は失われませんか?
玉 強い影がなくなるので、明暗差による立体的な見え方はしませんが、全体を柔らかい光が覆い、被写体表面の凹凸が自然な感じで浮き上がってくる。また、ハイライトや濃いシャドーがなくなり、モノの自然な色、グラデーションが出てくる。 人物の場合、ホリの深い人なら、そのホリの凹凸がよりはっきりする。女性なら肌のトーンが出てくる。被写体がぐっと存在感を増すというのかな。だから、プロポーズは夕暮れ時がいいんですよ。
編 本当ですか? それってもしかして経験談? でも何十年前のことなんですか?
玉 いやいや、マジックアワーっていうのは、原理的には広い水平線が見えるような場所だからできるわけで、日本みたいに山が多いと、日が山に落ちて、すぐに暗くなってしまうのですよ。
スタジオライティングで、マジックアワーの状態を作るには、大きなディフューザー、沙幕などで被写体を覆って、光を回す。いかにきれいに均等に光を回すかがポイントです。人物撮影ではよく行なわれる手法で、メイプルソープのモノクロのポートレイトは、そんな感じですよね。物撮影だとハイライトを入れたり、もう少し全体の立体感がほしくなるんですが。
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玉内公一 Kohichi Tamauchi
ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。
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