2010年07月27日
玉:玉内 編:編集部
玉 これまでブツ中心にライティングの話をしてきましたが、今回はポートレイトライティングの基本をお話ししましょう。ポートレイトのライティングでよく知られるのは「レンブラントライティング」ですね。
編 あ、知ってます。影の部分が多い重厚なポートレイトの撮り方ですね。
玉 うーん、感覚的には間違っていないのですが、正確にはちょっと違う。「キアロスクーロ」という言葉は知ってますか? イタリア語のChiaroscuro。「明暗」という意味ですが、絵画や版画では、明暗のコントラストによって立体感を出す表現のことです。もちろん写真でもそうしたライト表現を「キアロスクーロ」なライティングと言いますが、レンブラントライティングはポートレイトにおける「キアロスクーロ・ライティング」のひとつなんですね。
編 つまりシャドーとハイライトのコントラストがはっきりしたポートレイトライティングが、すべてレンブラントライティングというわけじゃないということ?
玉 そうです。もっともレンブラントライトが広まったのは、かなり昔にコダックが写真館やポートレイトフォトグラファー向けに出した指南書からですから、今では、その解釈もあやふやになっているかもしれませんが 。
編 では具体的にレンブラントライティングというのは、どういうものなんですか?
玉 シャドーを多用してドラマチックな表現をした画家レンブラントにちなんで名付けられた名前ですが、基本的には人物の鼻筋に対して上方斜め45度から光をあてたライティングのことなんです。
レンブラントライティング(正面)
玉 顔半分に光があたり、一部の光が鼻筋を越えシャドー側の頬にもあたる。そこに三角形のハイライト部ができる。この三角形がレンブラントライティングの特徴です。レンブラントライティングは、顔の立体感を強調して力強い印象を出します。また顔を細く見せるので、ちょっと太った人をやせて見せたり、丸顔の人を大人っぽく見せたりできますね。
編 でもそれだけだと、シャドー面積の多さとか、重厚感とはあまり関係ないような 。
玉 それについてはショートレンブラントとブロードレンブラントの話をしなくてはなりませんね。重要なのはどの方向から顔を撮るか。たとえばカメラ位置から向かって右斜めに顔が向けられている場合、同じ鼻筋45度でも、左方向からの順光をあてれば顔の広い部分が明るくなります。それをブロードレンブラントと言います。一方、右から鼻筋に対して45度の光をあてると、カメラに向いていていない顔半分が明るくなり、全体としてはシャドー面積の多いポートレイトとなる。それがショートレンブラントです。
ブロードレンブラント
ショートレンブラント
レンブラント
(プロフィール)
玉 日本でレンブラントライティングと言えば、一般的にこのショートレンブラントを指すことが多いので、レンブラントライト=影の多い重厚な表現というイメージがあるのです。
編 なるほど。
玉 しかしレンブラントライトには問題点もある。立体感が強調され、重厚さが出るということは、顔が老けて見える。特にホリの深い外国人は、ハイライトとシャドーの部分のメリハリがつきすぎるんですね。それを解決するライティングは 。
編 その、ライティングとは?
玉 次回に続きます。
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玉内公一 Kohichi Tamauchi
ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。
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- 第34回 デジタルカメラの落とし穴
- 第33回 段階露光したカットをデジタル合成
- 第32回 ライティングと色味の調整で朝〜夕の光を演出
- 第31回 Photoshopでライティングの仕上げ
- 第30回 グレーバランスとRGB数値
- 「玉ちゃんのライティング話」が本になりました
- 第29回 3段アンダーの画像を救う3つの方法
- 第28回 グレースケールをヒストグラムで見る
- 第27回 ヒストグラムとライティングの関係
- 第26回 最初に揃える照明機材は?
- 第25回 ライトパネル+アンブレラで撮影
- 第24回 スローシャッターを使った表現
- 第23回 アクリルボードを使った背景の演出
- 第22回 カラーフィルターで背景を作る
- 第21回 ライトで背景のグラデーションを作る
- 第20回 ボトルのエッジを光らせろ
- 第19回 天からのスポットで被写体を強調
- 第18回 透明感を演出するライトテーブル撮影
- 第17回 バンクライト2灯でクラムシェル
- 第16回 商品撮影に便利な「天トレ」セット
- 第15回 モーテンセンの5つのパターン
- 第14回 ポートレイトライティングの組み立て
- 第13回 ループ、スプリットそしてバタフライ
- 第12回 レンブラントライティングで撮るポートレイト
- 第11回 半逆光でモノがよく見える
- 第10回 透明物の透過光撮影と黒締め
- 第9回 入射光式露出測定と反射光式露出測定
- 第8回 黒でシャドーを締める
- 第7回 鏡面の被写体を撮る
- 第6回 柔らかい光 硬い光
- 第5回 明暗のグラデーションを作る
- 第4回 円柱、円錐、球のライティングパターン
- 第3回 四角い箱のライティング
- 第2回 メインライトの位置を考える
- 第1回 フィルインライトは 天空の輝き?