2010年06月17日
玉:玉内 編:編集部
編 これまで色々とライティングの基本をお伺いしてきたわけですけれど、特にブツ撮りで、何か私でも簡単に格好良く撮れちゃう裏技みたいなものってないですか?
玉 そんなのないですよ。ライティングはまずしっかりとした基本があって、その上で経験とセンス です。
編 いや、たとえばですね、ネットオークションの写真とか、中華料理屋のオヤジさんが自分で撮ったメニューの写真って「いまいち」というか、プロが撮ったものと根本的に違いますよね。
玉 当たり前でしょ。
編 でも、最近のデジタルカメラなら、それなりの解像度もあるし、ホワイトバランスもオートだし。でも、決定的に何かが違うというか 。細部のグラデとか細かい技術は別にして 。
玉 ああ、そういうことなら、内蔵ストロボやクリップオンストロボで撮るか、外部ストロボで撮るかの違いじゃないですか?つまり順光と逆光の違いですよね。カタログなどに見られるプロの写真と比べて見ればわかります。
玉 ブツ撮影でも料理写真でも、商品撮影と言われる多くの写真は、被写体を台に置いて斜め上からのアングルで撮ることが多いですよね。これはプロの写真もアマチュアでも同じだと思います。でも「いまいち」に見える写真は、内蔵ストロボの順光ライティングで撮ったものが多い。一方、プロの撮影では外部ストロボを使う。その時、被写体を挟んで反対の位置からライトを入れるのが、特に小物や料理写真の基本となっているんですね。それだとちょうどレンズの光軸に対し、半逆光の光が入る。カタログや広告などの商品カットでは、その半逆光のライティングをベースにした写真が多いのです。
編 確かに。だけど、なんで半逆光だとよく見えるんでしょう。
玉 まず、単純にカメラと同じ方向から光をあてると、影は被写体の向こう側に出ますよね。つまり被写体表面にある細部の凹凸の影もカメラ側から見えないということ。影がないため、立体感、質感のないノッペリとした写真になるんですね。
編 なるほど。ディフューズしてもダメですか?
玉 被写体によっては、正面からの光でも拡散したものであれば、ある程度自然に見えます。でも、斜めアングルの撮影では正面からの光だと画面が落ち着かないんですね。
編 落ち着かないというのは?
玉 やはり画面構成として、画面上部分が明るくて、下が暗い方が生理的に落ち着くというのかな。斜めアングルの撮影で手前から光を入れるということは、できあがった写真の画面下が明るくなる。一方、半逆光で撮れば当然、奥が明るく、つまり画面としては上が明るくなる。だから自然に見えるわけです。
カメラと同方向からライトをあてる
被写体に対し真上からライトをあてる
被写体の向こう側から半逆光でライトをあてる
玉 しかも半逆光は被写体の奥のエッジ、つまり画面上、被写体のトップにハイライトが入り、その被写体が輝いて見える。だから半逆光はテープルトップ撮影の基本的なライティングなんです。特に料理写真などは、出張撮影で複雑なライティングができないという理由もありますが、1灯でトレペ越しにディフューズした柔らかい逆光をあてるのが、定番のライティングになっていますよ。
編 なるほど。それがわかればあの店のオヤジさんにも、美味しそうな写真が撮れるんですね。炒め物は絶品なんですがね 。
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玉内公一 Kohichi Tamauchi
ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。
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- 第29回 3段アンダーの画像を救う3つの方法
- 第28回 グレースケールをヒストグラムで見る
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- 第20回 ボトルのエッジを光らせろ
- 第19回 天からのスポットで被写体を強調
- 第18回 透明感を演出するライトテーブル撮影
- 第17回 バンクライト2灯でクラムシェル
- 第16回 商品撮影に便利な「天トレ」セット
- 第15回 モーテンセンの5つのパターン
- 第14回 ポートレイトライティングの組み立て
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- 第11回 半逆光でモノがよく見える
- 第10回 透明物の透過光撮影と黒締め
- 第9回 入射光式露出測定と反射光式露出測定
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- 第7回 鏡面の被写体を撮る
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- 第1回 フィルインライトは 天空の輝き?