2010年10月05日
玉:玉内 編:編集部
玉 前2回、ポートレイトライティングの基本パターンについて話しましたが、今回はそれをベースにライティングの組み立て手順を追っていきましょう。
編 仕上がりが上の写真です。この写真の灯数は?
玉 メインライト1灯、フィルインライト1灯、それに背景のグラデーション演出用に1灯、計3灯です。物撮影でも人物撮影でもベーシックなライティング構成は、①一番見せたい部分を輝かせ、陰影を作り立体感を出す「メイン(の光)」、②メインを補い全体の明るさを調整する「フィルイン(の光)」、③特別の演出や強調のために入れる「アクセント(の光)」に分かれます。
編 メイン、フィルインについては以前、この連載でもやりましたね(第1回)。
玉 まずメインありき。メイン1灯の表現もありますが、フィルインでバランスを取り、必要ならばアクセントを入れる。アクセントとは、たとえば髪に光沢感を出すライトなどですね。ですから上の作例で言えば人物に関しては、メインとフィルインの2灯ライティングです。
玉 ではそれぞれのライトの役割を見ていきましょう。まずメインですが、ここでは右斜め横からループライティングの位置にセットしています。作例1はメインをリフレクター直光にしたもの。
作例1:リフレクター1灯でのループライティング
編 確かに鼻の影がループになっています。
玉 陰影が強い昔の肖像写真風ですね。左側のシャドーはレフで起こしていますが、女性を撮るには少しコントラストが強すぎる。そこで作例2ではメインをアンブレラ+ディフューザーの拡散光に変えてみました。
作例2:拡散光でのループライティング
編 顔の左側にも光が回ってきますね。
玉 鼻の影も弱まってきた。しかしもう少し、肌の明るさ、輝き、滑らかさを出していきたい。そこで作例3では、フィルインライトとして、正面からアンブレラ+ディフューザーの光を入れています。
作例3:フィルインライトを入れる
編 かなり現代的な写真になったという印象を受けます。
玉 最近はこうした回し気味の光が主流ですからね。やはり、ループやレンブラントのライティングパターンはモノクロ写真時代に考えられた手法、つまり光と影の表現です。しかしフィルムがカラーになると、ライトコントラストよりも色の美しさ、滑らかな繋がりが重視されるようになった。カラーではどうしてもシャドー部は色が濁りますから、中間調からハイライトを重視した回し気味の光の中で、階調を美しく出していく表現になるのですね。
編 そう言えばモノクロのポートレイトでは、今でも明暗のコントラストをつけた表現が多い。
玉 さて、作例4はさらにフィルインの出力を上げて、メインとの差をなくした完成カットです。こうなるともう、顔左側の影もなくなり、レンブラントでもループでも関係なくなりますね。
作例4:メインとフィルインの光量差を少なくする
編 へ ? 関係ない?
玉 だってレンブラントもループも、シャドー部の影の形で決まっていたのですから、影がなくなったら、もうレンブラントやループもないでしょう。だから最近はあまりレンブラント、ループが意識されなくなった。
編 それじゃ、過去2回の講座は無駄だったということ?
玉 そんなことはありません。たとえばこれからライティングを習得しようとする人は、今回の説明のように、まずメインの位置を決める時、レンブラントやループからスタートして、表現を広げていけばいい。もちろんレンブラントやループが絶対ではない。だけど実際、レンブラントって言葉を知らなくても、大体、斜めからメインライトをあてるでしょ。その時、顔の陰影がきれいに立体的に見えるように考案されたのが、レンブラントだったりループだったわけですから。
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