玉ちゃんのライティング話

第30回 グレーバランスとRGB数値

解説 : 玉内公一

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R: 115
G: 117
B: 122
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R: 125
G: 139
B: 170
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R: 129
G: 150
B: 131
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R: 177
G: 142
B: 112

玉:玉内 編:編集部

 前回まで、グレースケールと光量/明るさの関係を見てきたわけですが。

 中間グレーの数値が119なら適正露光ということでしたよね。

 そうです。でも、グレースケールには適正光量を知るだけでなく、もう1つ、重要な役割がある。特にデジタル撮影では、適正露光を計るよりも、重要かもしれない。

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ニュートラルグレーのRGB値が均等に再現されていれば、その写真の色味は正確と言える。このグレーのバランスは、デジタル撮影では撮影段階や後処理で調整が可能だ。また、あえてカラーバランスを変えることも簡単にできる。上の作例はRAW現像段階でカラーバランスを変えている。上段左のカットがRGB値115〜122で、ほぼ適正露光、グレーバランスも取れている状態。上の写真の数値が各写真のグレーチャートのバランス。

 グレーバランスですね。

 今更ながらですが、一応、説明しておくと、デジタルカメラはフィルムと違って、決まった「対応色温度」がない。言い換えれば、対応する色温度というのはカメラの設定で自由に変えられる。色温度が低いタングステン光下でも、色温度の高い晴天下でも、カメラの設定を合わせれば、正確な色で写る。

 正確な色とは?

 この場合の「正確な色」とは「見たままの色」ではなく、「ニュートラルなグレーが、色のかぶり、色の転びがなく正しく写っている」ということですね。そのための基準として、グレースケールやグレーカードが用いられる訳です。

さてデジタルのRGBデータで、ニュートラルなグレーとは、RGB数値が均等になっていることです。コダックのグレースケールのM点(中間グレー)の数値がR=119、G=119、B=119であるなら、適正露光であり、かつグレーバランスが取れているということですね。

厳密に言えば、中間グレーだけでなく、シャドー側、ハイライト側のグレー、コダックのスケールならB点、A点でもRGBが均等でなくてはならないのですが、ベースとなる基準として、中間のグレーが合っていれば、絵柄全体もほぼ合っていると考えて、まず中間グレーのRGB値をチェックするわけです。

 中間グレーのRGB平均数値が119で適正の明るさだとしても、各数値が違っていたら…。

 グレーバランスがズレているということです。でも、フィルム撮影のように、フィルムと光源の色温度を合わせるため、ライトにカラーフィルターをかけたりする必要はなく、カメラの色温度設定を調整したり、RAW現像やPhotoshopの後処理で簡単に補正できるんですけどね。逆にカラーバランスを変えた表現も、上の作例のように、デジタル処理で簡単にできてしまうわけです。

ただ問題なのは、簡単に補正できると言っても、あくまで単一光源の場合で、たとえば2灯ライティングでそれぞれのライトの色温度が違っていたら、補正は面倒ですよ。従来通り、フィルターで2つライトの色温度を揃えておくのが理想です。

 同じ種類のストロボでは、そんなに色温度の違いはないでしょう?

 それが意外とあるんです。新品のストロボヘッドは大体色温度が5000〜5500K(ケルビン)、いわゆる「デイライト」ですが、発光の度に細かいホコリがチューブに蒸着して、1年ぐらい使っていると黄ばんでくる。大体500Kぐらいはすぐに下がってしまう。昔は新品のストロボヘッドを買ったら、古いストロボと色温度を合わせるために、たばこの煙を吹きかけたりしたんですよ。ある程度、黄ばんだら後はあまり変化しないから。

 また、健康に悪そうな…。

 黄ばむと言えば、バンクやディフューザーなども、黄ばんでくると、色温度が低くなる。古いバンクに古いストロボヘッドなんて組み合わせだと、1000K以上、違ってくるんじゃないかな。

すべてのストロボが平均的に下がっているなら問題ないんです。後で補正できる。でも、たとえば新品ストロボの直光と、古いバンクのミックス光だと、かなりの差があるわけで、これが、撮影時点では気にならなくても、後の色補正などで、色むらが強調されたりするんですね。

手持ちのストロボやバンクの色の傾向は、グレースケールを撮ればすぐにチェックできるので、一度、確認しておくといいですよ。

手持ちのライトの色味をチェックしてみよう

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色温度を数値で計る場合は、カラーメーターがあると便利だが、色の傾向を把握するだけなら、グレースケールを撮り、RGB値をチェックすれば良い。撮影の際、周辺光、壁のバウンスなどの影響を受けないように注意する。

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セコニック
カラーメーター
「C-500」

新品ライトヘッド、リフレクター直光

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img_tech_lightingstory30_13.jpg 新品のライトヘッドとリフレクターでライティング。カラーメーターの数値は5360Kで、ほぼデイライトと同じ色温度を示す。
グレースケールのM点のRGB値は、Photoshopの情報パレットで確認できるが、こちらも各数値がほぼ均等に揃っている。

新品のバンクライト

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img_tech_lightingstory30_15.jpg 新しいバンクに、新品のライトヘッドをつけて撮影。カラーメーターの数値は5250K。リフレクター直光よりも、90Kほど色温度が低くなったが、RGB値ではほとんど変わりない。ディフューザーなどを透過すると、基本的に色温度が下がる傾向にあるが、この程度なら問題ない。リフレクター直光の作例と、背景の濃度が違うのは、リフレクター直光と拡散光の差。

古いバンクライト

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img_tech_lightingstory30_17.jpg 廃棄寸前の古いバンクライト。ディフューズ面が黄ばんでいるため色温度は3300Kと低くなってしまった。RGB数値も大幅にズレ、Bが低く、アンバーに転んでいる。これは大げさな例だが、古いバンクを多灯ライティングで使う場合、他のライトと色温度が合わないことがあるので注意したい。

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玉内公一 Kohichi Tamauchi

ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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