2012年03月06日
玉:玉内 編:編集部
編 ちょっと疑問があるんです。デジタル撮影ということは、要するに後から補正や調整ができるということですよね。
玉 そうですよ。
編 じゃあライティングで無理に適正露光を取らなくても、後で直せばいいじゃないですか?
玉 そうとも言えますね。ただ後からの補正は画像に無理がかかる。何度も話したように、中間グレーを取りハイライト、シャドーがヒストグラム内に納まっているデータを作り、細部を調整していく方が、効率が良い。露出の極端な後補正というのはやはり救済措置です。
編 どのくらい救われるんです?
玉 最終使用サイズや被写体によっても違いますが、まずハイライト部分、たとえば露出オーバーで完全に飛んでしまった部分というのは、データ上RGB数値が0ですから救えない。「オーバーにならないように撮りましょう」としか言えません。
カメラの感度ISO100で、3段アンダーの状態。これ以上ライトの光量を上げられない時、どうするか?
編 では、アンダーの場合は。
玉 ストロボの光量が足りないとか、そちらの方が、実際にあり得る状況ですね。
編 たとえば3段アンダーの写真は救えますか?
玉 プロの撮影で、ライティングをして3段アンダーなんて、まずあり得ないですよ。それはもうミスショットでしょう。
編 計画停電とか節電とかで、光量が足りないとか。
玉 そんなバカな 。でも試しにやってみましょうか。さすがに3段アンダーはなくても、少しアンダーだった写真を適正の明るさにする時の参考になれば。
撮影時の光量が足りない時、対処方法としては、大まかに3つあります。まず1つはカメラの感度設定を上げる。2つ目はRAW撮影で現像時に露出補正をする。3つ目がPhotoshopで画像補整をする。
サードパーティ製の補正ソフトなどもありますが、とりあえず今回は考えないでおきましょう。
ISO100、適正露光で撮影
カメラの感度はISO100で、適正光量で撮影。つまり通常の状態での撮影。当然ながら、ノイズもなくチャートも分離している。
ISO800、感度3段アップで撮影
上の作例の適正光量からストロボの出力を3段分アンダーにし、カメラの感度を3段分上げて撮影(ISO800)。露光的には適正だが、全体にノイズが乗ってくる。
編 で、どれがよいのですか? 感度を変えるのが一番楽そうですが。
玉 確かに簡単ですし一番自然な感じに仕上がります。ただしカメラの感度を上げるとノイズが乗ってくる。最近では高感度でもノイズが少ないカメラが出ていますが、それでもある程度、感度が上がるとノイズは出る。ブツ撮りなどでは厳しいということもあります。その辺はカメラの性能にもよるので、使用するカメラが、どの程度の感度でどのくらいノイズが出るか、把握しておくと良いでしょう。最近のカメラなら1段、つまりISO100を200にするくらいなら問題ないですね。
RAW現像でプラス3段
3段アンダーのまま撮影したデータを、RAW現像の際、プラス3段補正。適正露光の画像になるが、黒の部分が潰れ気味で、階調の分離も悪い。ノイズはISO800での撮影よりは少ない。
Photoshopでプラス3段
3段アンダーの画像をPhotoshop CS5の「明るさ・コントラスト」ツールで補正。ヒストグラムの細かい起伏がなくなったことでわかるように、各明るさでの階調の情報が失われ、そのため写真が硬くなったように見える。また色も捻れている。
編 1段アンダーぐらいなら感度設定でなんとかなる。RAW現像やPhotoshopの補正はどうですか?
玉 これも1段ぐらいの補正なら問題ないのですが、それ以上になってくるとアラが出ますね。RAW現像段階での補正は画質のロスが少ないと言いますが、シャドー部が詰まっていてコントラストが高くなる。
Photoshopではさまざまな方法で調整が可能なのですが、やはり3段アップはシャドー部の分離ができないし、面倒なのは色のねじれが出てきてしまうこと。
編 うーん、じゃどうすればいいんですか?
玉 だから3段アンダーは失敗写真ですよ。まぁ、どうしてもと言うなら手がないわけではないですが。
編 それを早く言ってください。
玉 合わせ技です。カメラでノイズが気にならない程度に感度を上げて、RAW現像の際、補正。最後にPhotoshopで詰める。たとえば感度で1段、RAW現像で1段、Photoshopで1段みたいな補正ですね。それぞれのデメリットを補って補正する。
2段アンダーなら感度で1段、RAW現像で1段でもいいかもしれません。その辺は、シャドーが多めの画像なのか、ハイライト寄りの画像なのかでも結果は変わってきます。
編 なるほど。でも面倒ですね。
玉 だから最初から適正で撮ればいいんですよ。
感度1段アップ+RAW現像1段補正+Photoshop1段補正
カメラの感度を1段アップ(ISO200)して撮影。RAW現像の際、1段露出補正。さらにPhotoshop CS5の「明るさ・コントラスト」で1段分補正。上の「ISO100、適正露光で撮影」と近い仕上がりとなった。ノイズもなんとか許容範囲。しかし、あくまでいざという時の救済措置と考えて欲しい。
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玉内公一 Kohichi Tamauchi
ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。
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