2011年12月09日
これから照明機材を揃える、事務所の一角に簡易スタジオを作りたいという場合、「まずはモノブロック」という選択もある。アンブレラやバンクをセットしたリーズナブルな2灯セットも登場している。もちろん撮影台やポール、バック紙なども揃える必要はあるが、デジタル一眼レフでの撮影を前提とした場合、中判、大判のフィルムカメラを使っていた頃と比べると、かなり低予算で撮影の環境が整えられるはずだ。
玉:玉内 編:編集部
編 これまでライティングの基礎技法を色々と解説してもらいましたが、今回はちょっと目先を変えて、実際、これからライティングを始めてみよう、自分の機材を揃えようとする時のアドバイスを、と思います。
玉 具体的には?
編 たとえば私がアシスタントから独立して、事務所も借りました それでライティング機材も自分のものを揃えたい。ちょっとしたブツ撮りなら事務所のスペースを使ってできたらいいな、でもあまり予算がない。
玉 撮影はデジタル? カメラは?
編 最近だとやはりデジタル撮影ですよね。カメラは、まだ中判デジタルバックには手が届かないから、35mmデジタル一眼レフタイプで。
玉 なるほど。それならばお勧めはモノブロックタイプですね。一眼レフタイプのデジタルカメラは常用感度が高く、光量をあまり必要としない。むしろどこまで出力を落とせるかが重要なくらい。これまでロケ用というイメージがあったモノブロックも、メイン機材として使えるようになってきたわけです。
編 つまりモノブロックがあればロケ撮影にも、スタジオ撮影にも使えて便利というわけですね。
玉 そうした流れを受けて、ジェネレータータイプでもロケに持って行ける小型で低出力可能なタイプが流行です。
デジタル撮影ではモノブロックもメイン機として使える!?
プロペット MONO300N
従来サブ機、ロケ用と考えられていたモノブロックでも、常用撮影感度が高いデジタル一眼レフの撮影では、メイン機として使用できる。写真はプロペットのモノブロック「MONO300N」。300Ws〜38Ws無段階調光。リサイクリングタイムは2秒。入門機として売れている定番モノブロックだ。
http://www.propet.co.jp/
エリンクロームD-Lite-it To Go Set
エリンクロームのモノブロックD-Lite-it。D-Lite-it 2は12.5Ws〜200Ws、D-Light-it 4は25Ws〜400Wsの出力範囲。調光ステップは1/10EV。マルチボルテージ(90V〜260V)。D-Lite-it2灯、スタンド、バンク、キャリングバック他がセットとなった「D-Lite-it To Go Set」は、非常にコストパフォーマンスが高い。
http://www.takeinc.co.jp
玉 一方、デジタルでも、カメラバックタイプを使うなら、これまで同様に大光量が得られるジェネレータータイプが必要となってきます。昔、スタジオで中判、大判カメラを使い、ポジフィルムで撮っていたのと同じ感覚ですね。
また仕事も増え、大規模な撮影、多灯撮影が増えてくると、モノブロックだと物足りなくなってきます。大体、ジェネレーターはソケットが3〜4個あるから、モノブロックを何灯も買うなら、ライトヘッドだけを買い足していった方がコストパフォーマンスがよい。まぁ、頑張って稼いだらモノブロック、ジェネレーター両方揃える、ということでしょうか。
編 実際、最初は何灯あればいいですか?
玉 うーん、その人の撮影の内容によるけれど、最低、2灯は欲しい。メインとサブ。そこから背景用ライトが欲しいとか、アクセントライトがあればとか、ライティング表現でライトを増やしていけば良いと思う。
編 拡散用アクセサリーとして、バンクかアンブレラを選ぶなら最初はどちら?
玉 ブツ撮りが多いならバンクが便利ですが、アンブレラの方が応用範囲は広い。アンブレラの気になる点は、光モノの撮影できれいな映り込みが作れないことですが、そこは前回紹介したライトパネルなどと組み合わせることで、バンク的な使い方もできます。
編 じゃあライトパネルも揃えておいた方がよいですね?
玉 予算があれば。でも、ちょっとした撮影には便利ですよ。ライトカッターとしても、レフとしても使えるし、ロケにも持って行ける。事務所の簡易スタジオで使うだけなら、トレペやスチレンボードで同じようなものが作れるのですが。
ロケにもデジタル撮影にも対応、小型、低出力設定可能なジェネレーター
サンスター E 043
デジタルカメラ時代を考慮した設計の小型ジェネレーター。1回路あたり400Ws〜
6Wsと幅広い調光が可能な3回路独立調光タイプ。フラットパネル採用でシンプルなパネル面と直感的な操作が可能なダイヤル調光つまみを装備。セットに組み合わせるファンヘッドも大変小型で、収納や運搬も容易。
http://sunstarstrobo.jp/
ブロンカラー SENSO(センソ)
高機能だが高価という従来のブロンカラーのイメージを払拭する価格設定と、小型化を実現したジェネレーター。1200WsタイプSENSO A2は高さ218mm。均等/不均等切り替え3灯出力。マルチボルテージ自動対応。新設計の小型ヘッドとの組み合わせセットが標準となるが、従来のブロンカラーのヘッドももちろん使用できる。
http://www.agai-jp.com/
編 集光アイテムは?
玉 レンズスポットなどの特殊アクセサリーは、必要になったら揃えるか、レンタルでいいと思います。
でもグリッドはあった方がいいですね。ただ、注意しなくてはいけないのは、モノブロックタイプなどについているリフレクターは、アンブレラ用の小さい口径のものが多い。アンブレラ専用というわけじゃないので、デジタル一眼レフで小規模な撮影なら、それをそのまま標準リフレクター的に使っても問題ないと思いますが、グリッドをつける場合は標準口径のリフレクターに付け替える必要があります。
編 モノブロック2灯に、アンブレラ、それからできたらライトパネル、グリッドも これがあれば私でもやっていけますか!?
玉 プロとしてやっていけるかどうかはわかりませんが、機材的な面から言えば、ある程度の撮影はこなせるんじゃないでしょうか。
まぁ、事務所で簡単な撮影をできるようにしたいと言っても、照明関係機材の他に、撮影台やポール、テープやクリップなどの小物とか色々と必要になるし、デジタル撮影なら撮影用のパソコンもあった方がいい。予算、足りますか?
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玉内公一 Kohichi Tamauchi
ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。
- 最終回 照明機材発明の歴史は表現の歴史
- 第34回 デジタルカメラの落とし穴
- 第33回 段階露光したカットをデジタル合成
- 第32回 ライティングと色味の調整で朝〜夕の光を演出
- 第31回 Photoshopでライティングの仕上げ
- 第30回 グレーバランスとRGB数値
- 「玉ちゃんのライティング話」が本になりました
- 第29回 3段アンダーの画像を救う3つの方法
- 第28回 グレースケールをヒストグラムで見る
- 第27回 ヒストグラムとライティングの関係
- 第26回 最初に揃える照明機材は?
- 第25回 ライトパネル+アンブレラで撮影
- 第24回 スローシャッターを使った表現
- 第23回 アクリルボードを使った背景の演出
- 第22回 カラーフィルターで背景を作る
- 第21回 ライトで背景のグラデーションを作る
- 第20回 ボトルのエッジを光らせろ
- 第19回 天からのスポットで被写体を強調
- 第18回 透明感を演出するライトテーブル撮影
- 第17回 バンクライト2灯でクラムシェル
- 第16回 商品撮影に便利な「天トレ」セット
- 第15回 モーテンセンの5つのパターン
- 第14回 ポートレイトライティングの組み立て
- 第13回 ループ、スプリットそしてバタフライ
- 第12回 レンブラントライティングで撮るポートレイト
- 第11回 半逆光でモノがよく見える
- 第10回 透明物の透過光撮影と黒締め
- 第9回 入射光式露出測定と反射光式露出測定
- 第8回 黒でシャドーを締める
- 第7回 鏡面の被写体を撮る
- 第6回 柔らかい光 硬い光
- 第5回 明暗のグラデーションを作る
- 第4回 円柱、円錐、球のライティングパターン
- 第3回 四角い箱のライティング
- 第2回 メインライトの位置を考える
- 第1回 フィルインライトは 天空の輝き?