玉ちゃんのライティング話

第9回 入射光式露出測定と反射光式露出測定

解説 : 玉内公一

img_tech_lightingstory09_01.png セコニックデジタルマスターL-758D
入射光式測定、スポット測定(反射光式測定)に対応。世界初、「露出プロファイル」と「ゼロ目スケール」搭載。フラッシュ測定・分割測光システムも装備した、デジタル撮影時代の多機能露出計。
http://www.sekonic.co.jp/

玉:玉内 編:編集部

 今回は露出計の話をしましょう。

 これまた初歩的な…。

 確かに露出計の使い方は写真の基礎。特にスタジオでライトを組む場合は必需品なんですが、カメラにはTTL露出機能が搭載されて、誰でも簡単に適正露出で写真が撮れるようになっているし、プロの現場でもデジタル撮影になったら「もう露出計はいらない」と言う人もいるでしょう。

 ホントにいらないんですか。

 Photoshopなら、階調のRGB値やヒストグラムでどこが飛んでいるか、潰れているかがひと目でわかるし、思った明るさでちゃんと撮れてるかは、モニタでチェックすればいいですからね。でも、それぞれのライトの出力、役割を把握しながらライティングを組み立てていく時には、やはり露出計が便利ですよ。露出計を使ってライトのバランスを調整して、細部の階調などは、デジタル上で確認するというハイブリッドなやり方が、効率的にも絵作り的にもいいんじゃないでしょうか?

 なるほど。ではその露出計ですが。

 当たり前のことですが、露出計は「明るさ」を測る機械です。受光部から入った光を計測し、それを元に適正露出の値(f値)を算出する。ただし明るさと言っても「照度」と「輝度」があります。

 ???

 ほら、基礎の基礎と言ってもこの辺を理解していないと、露出計も間違った使い方になりますよ。おおまかに説明すると、「照度」とは、光源がどれだけの明るさで対象物=被写体を照らしているか。簡単に言えばライトの明るさです。これを測るには「入射光式露出計」での測定になります。よくモデルの顔の前で露出計を構えるのは、そこにあたる光の「照度」を計っているのですね。一方、「輝度」は、被写体そのものの明るさのことです。物質は材質や色で光の反射率が違いますよね。黒い物体と白い物体を同じ明るさで照らしても、見える明るさは変わってくる。それを測るのが「反射光式露出計」または「スポットメーター」。18%グレーを基準に、f値を表示します。一眼レフカメラのTTL露出はこの「反射光式」測定ですね。露出計で測る場合も、カメラ位置から露出を計りたい位置に向ける。

入射光式測定

img_tech_lightingstory09_02.jpg
img_tech_lightingstory09_03.jpg
被写体の前のライトのあたる位置で測定。ライト単体、またはライト全体の照度を測定する。

反射光式測定

img_tech_lightingstory09_04.jpg
img_tech_lightingstory09_05.jpg
カメラ位置から、露出計のファインダーを覗き、受光部を被写体の計測したい部分に向けることで、その部分の輝度を測る。

 「反射光式」と「入射光式」の使い分けは?

 特にスタジオでライトを組む際は、ライトそのものの明るさを測る必要があるので、「入射光式」測定が基本です。そして、複数のライトを調整して完成したライティング全体の適正露出を測る時も「入射光式」測定になります。ライティングを組んだ時点で、各部分の仕上がりの明るさを予測する時には、「反射光式」測定で、一定のEV値の範囲内に収まっているかどうかを確認します。白バック、黒バックを飛ばしたり、完全に黒く潰したりといったライティングをする時も、バック素材によって反射率が違うわけですから、「反射光式露出計」で測ると正確に把握できる。たとえば白バックでも「反射光式露出計」で計った適正値で撮れば、18%グレーが基準ですから、グレーに写るわけです。被写体そのものが発光しているものの露出も「反射光式」測定でなければできません。ここで紹介したセコニックのハイエンド露出計などは、「反射光式」「入射光式」どちらの測定もできるので、必要に応じて使い分けていけばいいと思います。

白バック/黒バックの明るさを測る

白、黒バックの明るさを数値的に把握し調整するには、ライトの強さ(照度)を測定するのではなく、反射光式測定で背景そのものの明るさ(輝度)を測定する必要がある。

img_tech_lightingstory09_06.jpg

下の作例では白バック、黒バックそれぞれにバックグラウンドライトをあてて、背景の明るさをコントロールしてみた。被写体のリンゴの明るさはf11+.5、カメラ絞りf13で撮影。


白バック 完全に白を飛ばすimg_tech_lightingstory09_07.jpg
背景の明るさ リンゴの右横近辺で測定

反射光式測定 f22+.8
入射光式測定 f11+.8

背景にはリンゴとほぼ同じ明るさの光があたっているが、輝度の高い白のため、反射光式測定でf22+.8。適正露出より3EV弱のオーバー。完全に飛ばした白バックとなった。
白バック 薄いグレーimg_tech_lightingstory09_08.jpg
背景の明るさ リンゴの右横近辺で測定

反射光式測定 f22+.5
入射光式測定 f11+.5

左の作例よりバックグラウンドライトの出力を下げた。反射光式測定で22+.5。2EVオーバーで、薄いグレーの仕上がりとなる。

黒バック 濃いグレーimg_tech_lightingstory09_09.jpg
背景の明るさ リンゴの右横近辺で測定

反射光式測定 f 5.6+.5
入射光式測定 f11+.1

黒バックに対しバックグラウンドライトをあて、濃いグレーに仕上げた。反射光式測定ではf5.6+.5。メインのリンゴより2EV落ちの明るさ。
黒バック 階調のないブラックimg_tech_lightingstory09_10.jpg
背景の明るさ リンゴの右横近辺で測定

反射光式測定 UNDER
入射光式測定 f2.8+.2

バックグラウンドライトを入れずに、またメインライトも背景に回り込まないようにボードでカット。入射光式測定ではf2.8+.2。反射光式ではUNDER表示、つまり光のない状態になっている。

おすすめ商品・アイテム

写真:玉ちゃんのライティング話

玉ちゃんのライティング話

スタジオ撮影のライティングを基礎から知りたい人へ。月刊誌コマーシャル・フォトで約3年にわたり連載された「玉ちゃんのライティング話」を再構成。カラー作例をふんだんに使い、プロのスタジオ撮影の基礎を解説したライティング読本。

玉内公一 著 定価1,620円(税込)

写真:商品撮影の基本を学ぶ

プロが教える上達の早道商品撮影の基本を学ぶ

さまざまな広告写真で30年のキャリアのベテランフォトグラファー 熊谷晃氏が教える、商品撮影における極意。難しく考えられがちな「商品撮影」を楽しんで取り組めるようになる。

熊谷晃 著 1,800円+税

写真:クリップオンストロボの実践ライティング

基本をマスターすれば光は操れるクリップオンストロボの実践ライティング

便利なTTLオート発光や安心感のマニュアル発光など、クリップオンストロボの基礎知識からプロの現場での活用法を紹介。クリップオンストロボユーザーや、これからクリップオンストロボに挑戦するユーザーに送る1冊。

2,000円+税

写真:あなたにもできる実践ライティング&撮影テクニック

あなたにもできる実践ライティング&撮影テクニック

5人の講師によるセミナー形式でライティングと撮影テクニックを解説。豊富な作例、目からウロコのテクニック、便利な機材などの情報を満載。商品撮影から人物撮影まで、すぐに役立つ、真似したくなるプロワザを惜しみなく披露する。

定価2,160円(税込)

写真:基礎から始める、プロのためのスチルライフライティング

基礎から始める、プロのためのスチルライフライティング

スチルライフのジャンルでも、特にプロの世界で「ブツ撮り」と呼ばれるスタジオでの商品撮影をメインに、ライティングの基礎から実践までを解説する。

定価2,808円(税込)

玉内公一 Kohichi Tamauchi

ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

関連記事

powered by weblio




バックナンバー