玉ちゃんのライティング話

第21回 ライトで背景のグラデーションを作る

解説 : 玉内公一

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img_tech_lightingstory21_02.gif メインはバンクライト1灯。サイドから被写体の二眼レフカメラの前面を、光がかすめるようにあてている。背景には赤のペーパーを垂らし、バーンドアで照射範囲を狭めた光をあてた。バックグラウンドライトの強さは、光の芯の最も明るいところで、適正より1/2段オーバー(カメラ絞りf11に対しf11 1/2。入射露出計での測定)。

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左手前がメインライト。背景に余分な光が届かないように、バンク周囲に布製ライトカッター、周辺光をカット。
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グリッド付きリフレクターに、さらにバーンドアをつけ、照射範囲をコントロール。

玉:玉内 編:編集部

 今回と次回は、ちょっと趣向を変えて「背景」のライティングについて考えてみます。

 「背景」のライティング?

 「背景」つまり「バックグラウンド」のライティングです。これまでメインとなる被写体を、ライティングでどう見せるかという話をしてきたのですが、主人公を引き立たせるには、その舞台もきちんと作ってあげなくては。

今回はライティングだけで背景にグラデーションを作ってみましょう。

 まず、基本的な質問から。黒と白のグラデーションバックを作るにはどうしますか。

 白黒のグラデーションペーパーを使う。

 ……それはそうなんですが、今回は単色のペーパーを背景にして、ライトのあて方でグラデーションを作るという主旨なんだから…。ライトの調整で思い通りのグラデーションを作る方法です。

まず背景にグレーペーパーを使う場合を考えてみましょう。話を簡単にするために、背景には余分な光があたっていない状態、たとえばメインの被写体を照らしている光が背景には影響していない状態を想定して下さい。さて、全く光があたっていない状態では、グレーのペーパーはどう写りますか? 

 黒ですよね。

 そうです。グレーのペーパーを背景に使っても、光があたらなければ黒バックになる。これは当然ですね。では、そこに光をあててみましょう。

リフレクターの照射範囲で光があたらない部分は黒に、適正の光があたっている部分はグレーに見えますよね。そしてライトの芯とか光が強くあたっている部分は白く飛んでいく。

これがライティング・グラデーションの基本、背景に白のペーパーを持ってきても、黒のペーパーを持ってきても、原理は同じです。

白ペーパーのグラデーション
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白いペーパーの背景にライトをあてる。カメラ絞りf11に対して、背景の明るさは光の中心でf11(入射露出)。ハイライトから、明るめのグレーへのグラデーションとなった。なお、手前の被写体はわかりやすいように、ライトをあてずにシルエットにしている。
グレーペーパーのグラデーション
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グレーペーパーの背景にライトをあてる。カメラ絞りf11に対して、背景の明るさは光の中心でf16(入射露出)。白ペーパーの作例よりも強めの光をあてることで、ハイライトから暗めのグレーまでの、滑らかなグラデーションを作った。
黒ペーパーのグラデーション
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黒いペーパーの背景にライトをあてる。カメラ絞りf11に対して、背景の明るさは光の中心でf16 1/2(入射露出)。黒いペーパーでも強い光をあてることで、コントラストの強いグラデーションができる。ただし、強い光を反射させるため、紙の「波打ち」が目立つ。

 白のペーパーはわかるのですが、黒のペーパーでも、同じように白黒のグラデーションはできるのですか?

 全く同じようなグラデーションとはいきませんが、背景用黒ペーパーは光を反射しますから、強い光をあてれば、グレーや白に写る。全く光を反射しないウールなどを背景に使えば、黒のままですけど。

 白、グレー、黒のバックはどう使い分けるのですか? 

 単純に考えて、白バックでグラデーションを作るのは、あまり光量を必要としない。むしろ黒の部分(シャドー)を作るのが難しい。現実の撮影では、被写体を照らしている光が背景にもあたっていますからね。だから最暗部が中間グレーよりやや明るめぐらいで、そこからハイライト方向にグラデーションを作るのに向いています。

一方、黒いペーパーは強い光をあてないと白くは写らないけれど、逆に少しぐらい余分な光があたっても黒く写る。だから黒の中にスポット的にハイライトがあるような明暗の差があるグラデーションに使います。

グレーバックはその中間という感じ。飛ばさず潰さず、中間トーンをメインにした滑らかなグラデーションを作る。

 なるほど。それはカラーペーパーでも原理は同じですよね。

 そうです。適正の光量があたっている部分は、そのペーパー本来の色に写り、適正以上の光があたっている部分は白く、適正以下の光量の部分は黒くグラデーションができる。ついでに言えば、きれいな色のバックペーパーを用意しても、背景にライトをあてて適正露光にしないと、その本来の色にはなりません。

カラーペーパーに光でグラデーションを作る
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カラーペーパーにライトでグラデーションを作ってみた。手前下がグリッド付きリフレクター❶。上センターがストリップバンク❷。上左右が透過アンブレラ(天井バウンス効果もプラス)❸❹。
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オレンジのペーパーに対し、❶を照射。センターから周辺に向けて円形のグラデーションを作った。

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グリーンのペーパーに対し❶と❸❹を照射。中心の広い部分が白く、周囲に行くに従いペーパー本来の色に。
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イエローのペーパーに対して❷❸❹を照射。上から下へのグラデーションで、被写体近辺を適正の明るさにした。

 さて次回は、カラーフィルターを使った背景の作り方を紹介したいと思います。

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ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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