玉ちゃんのライティング話

第3回  四角い箱のライティング

解説 : 玉内公一

玉:玉内 編:編集部

 今回は、立方体や箱モノのライティングの基礎トレーニングです。

 基礎トレーニング?

 商品撮影、テーブルトップ撮影の被写体って、四角い箱形のモノ、多いでしょう。その基本を理解、トレーニングしておくと、色々な被写体に応用できると思うんです。

 なるほど、で、その基本とは?

 まず立方体を撮る時、ライティングで考えるのは、1:どの面を明るくするか、2:その面の材質、3:各面の明るさのバランス。今回、材質のことはちょっとおいといて、面の明るさについて考えてみます。

ここに用意したのは、標準的な反射率の紙でできた立方体。テーブルなどに置くと、通常、3つの面が見える訳です。

 普通に斜め俯瞰から撮るとそうなりますよね。

 ではどの面を一番明るくするか? この無地の被写体のように、特に強調したい面がない場合、トップ(天面)を明るくするのが、一番自然なんです。

1 立方体各面の明るさのバランス

トップ(天面)を最も明るくし、各面の差をつけるのが基本。トップ以外の面を明るくした場合も、最も暗い面と中間の明るさの面を作り立体感を出す。


img_tech_lightingstory03_01.jpg
トップf22、左サイドf16、右サイドf11
トップを一番明るくして、各面、1段の明るさの差をつけた。自然な立体感が出せる。
img_tech_lightingstory03_02.jpg
トップf16、左サイドf22、右サイドf11
左サイドを明るく、右サイドを最も暗くした。左サイドが正面であることを強調したライティング。

img_tech_lightingstory03_03.jpg
トップf11、左サイドf22、右サイドf16
トップを暗くして、左をメインにサイド全体を見せるライティング。
img_tech_lightingstory03_04.jpg
トップf11、左サイドf11、右サイドf11
全ての面を同じ明るさにした場合。当然ながら立体感はなくなってしまう。

 それはやはり、太陽が上にあるから?

 そうです。そしてサイド面の一つを中間の明るさ、もう一つの面を暗くすると、立体感が出るでしょ。

 各面の明るさの差は?

 上の作例では、最も明るいトップがf22、左サイドがf16、右サイドf11。これはスポット測光の値です。ライティングの勉強としては、この1段差を基本にしてスタートするといいと思う。それで被写体や目的に合わせて、最適な明るさのバランスをつかむトレーニングです。

考え方としてはまず、一番明るくしたい面の明るさを決める。次に暗い面の暗さを決める。そして中間の面の明るさを調整する。作例のようにちょうど一段差のバランスだと、非常に優等生的というか、基本的なライティングですが、たとえば中間の面をもう少し明るくしていくと、ハイキーな印象の写真になるし、逆に暗くしていけば暗めのしっとりした写真になる。さらに明暗の差を強調したいなら、明るい面と、暗い面の差を大きくすればいい。

 サイド面を一番明るくする場合もあるんですよね。

 もちろん。トップを明るくするのはあくまで基本。たとえばサイドに一番見せたい部分、強調したい部分があるなら、そこを明るくします。その場合も他の二つの面の明るさのバランスが重要になる。要は立体に見えることがポイントですから。


トップ(天面)を明るくした作例
img_tech_lightingstory03_05.jpgスピーカーの上の面を明るくし、右サイドを一番暗くした作例。箱モノを撮る基本的なライティング。全体を過不足なく見せ、自然な立体感が出る。切り抜き写真やカタログなどのカットによく使われるライティング。
サイド(横面)を明るくした作例
img_tech_lightingstory03_06.jpgスピーカー前面(サイド面)を最も明るくして、他の面を暗くした作例。左の作例に較べ、いわゆるイメージカット的なライティング。他の面を暗くした結果、立体感、奥行き感が不足したため、Photoshopで背後に光を入れてみた。

img_tech_lightingstory03_07.jpg
バンクライト2灯でのライティング。作例右は上方からのライトをオフにして、横からのライトのみで撮影。

 上のスピーカー作例、左の写真は天面を最も明るくして、各面1段の差をつけたノーマルな撮り方ですが、右の作例はスピーカーコーンの面を強調、いわばイメージカット的な撮り方をしてます。

 トップを明るくした場合、サイド面は左右どちらを暗くするのがいいんですか?

 立方体でこのアングルだと、左右対称だから、どちらでもいいんですけど、たとえば細長い直方体だと、長辺、短辺、どっちを暗くするかで、写真から受ける印象が変わってきます。

下の作例2の板のような被写体の場合、短辺を暗くすると、板の厚みが強調され、長辺を暗くすると、長い板という印象が強くなりせんか?

 うーん、そう言われてみれば…。

2 どこを暗くするかで形の印象が変わる

細長い箱形の場合など、長辺、短辺のどちらを暗くするかで、印象が変わってくる。


img_tech_lightingstory03_08.jpg
短辺を暗く
このアングルの場合、短辺を暗くすると奥行き(板の幅)や厚みが強調される。
img_tech_lightingstory03_09.jpg
長辺を暗く
長辺を暗くすると板の長さが強調される

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ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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