2011年01月13日
2灯のバンクライトの出力を同じにした作例。左右から広い範囲で光をあてるため、縦に長い被写体でも全体的に光が回る。ライトの映り込みのライン(ハイライト)が、シャープになるのもバンクライトの特徴。
クラムシェルのセット
被写体を挟み込むように2台のバンクライトを設置した「クラムシェル」ライティング。カメラアングルはほぼ水平。被写体によってバンクライトの角度、間隔を調整する。
玉:玉内 編:編集部
玉 今回はバンクライト2灯を使ったライティングパターンを紹介します。
編 前回の「天トレ」と同じく、面光源で作る光ということですね。
玉 バンクライトというのは、そもそもディフューザー越しの面光源を簡単に作るために開発されたアクセサリーです。ちょっとおさらいをしておくと、特徴は「その1:光の効率がよい」。リフレクターの前にトレペを垂らすのと違い、周辺に光が漏れずにすべて前面に照射される。
その2「セットを組むのが簡単」。いちいちトレペを垂らす必要がないし、ライトの移動や角度調整も楽。
その3「シャープで均一な拡散光が得られる」。
というわけで、バンクはさまざまな撮影で使われますが、ライティングパターンとしては、バンク2灯を使った「クラムシェル」が挙げられます。
編 「クラム シェル 」?
玉 「二枚貝」です。
編 あ、Adobe Illustratorのパッケージのヴィーナスが乗っていた貝ですね。
玉 いや、元絵はボッティチェッリだし、その絵が使われていたのは、かなり以前のバージョンのパッケージだし。
話を戻して、その二枚貝のように、被写体を2灯のバンクライトで挟むライティングを「クラムシェル」と言うんです。2方向から均一の光を照射したい場合、ポールにトレペを垂らしたセットを組むより、バンクを2灯、ポンと置いた方が簡単でしょ。カメラは2灯のバンクの間にセットします。
編 確かに被写体側から見ると、貝が口を開けたようになりますね。で「クラムシェル」はどんな撮影で使うのですか?
玉 たとえば、テーブルトップ撮影で背の高い被写体を撮る時。天トレでは被写体下まで光が回りにくいし、そうした被写体は、トップよりサイドをきちんと見せたいので、カメラアングルは水平気味になるでしょ。そんな時、左右からバンクで挟み込むようにライティングするんです。
編 ワインのボトルとかですね。
玉 そうそう。特にライトが映り込むガラスのボトルや金属製品は、バンクならではのシャープなハイライトを入れることができる。もちろんバンク1灯で、逆サイドはレフで起こしてもよいのですが、光を全体に回したい製品カットなどは、バンク2灯で挟んだ方が、左右同じ光量にもできるし、光量の差をつける時も簡単です。
左右のライトの出力を調整し、1EV分の差をつけた(左f11:右f16)。左右均等に光をあてた左ページの作例に近い仕上がりだが、立体感、奥行き感が強まる。
左右で2EV分の差をつけた作例(左f8:右f16)。右からの光がメインライト、左からの光がシャドー部分を補うフィルイン的な役割となる。
編 今の話はバンクを左右に置いたセッティングですが、上下で挟む場合もあるのですか?
玉 物撮りだと、携帯電話などをポールの先にセットして宙に浮かせて撮る時、上下で挟みますね。それからビューティ撮影では、上下のクラムシェルは、基本とも言えるライティングですよ。
編 モデルの顔に対して上下から面光源の拡散光を入れるのですね。
玉 顔に陰影をつけずに、メイクの質感を出し、肌のトーンも柔らかく見せていく。ライトは1灯だけで、あご下はレフで起こす場合もありますが、下からもバンクで光を入れる方が光をコントロールしやすい。
編 その時の上下の光のバランスは?
玉 モデルの顔の形、メイクのポイントにもよりますが、基本は上の光がやや強めか、同じくらいが自然です。ただし、ほんの少し下を強めにするのも、印象的な仕上がりになる。
編 下が強いと、お化けになりません? 懐中電灯であごの下から照らすみたいな。
玉 強めと言ってもほんのわずかですよ。派手目のメイクやアートっぽいメイクの時、ライティングでちょっとしたスパイスを加える感じ。バンクを使ったクラムシェルならば角度や光量調整が簡単ですから、被写体に合わせて最適なライティングをしてみてください。
下のライトの出力を調整し、1EV暗くした作例(上f11:下f8)。天から光があたる自然なポートレイトライティングだが、ビューティフォトだと、口もと、あご下がやや暗すぎるかもしれない。
上下の光量を均等にして顔全体を明るく見せた(上f11:下f11)。ビューティフォトではこのくらいフラットの方が好まれる。ライトの角度を微妙に調整して陰影をコントロールするのも、バンクライトなら簡単。
下のバンクの光量を1EV上げた作例(上f11:下f16)。やや不自然な感じになり、通常はあまりやらないライティングだが、上手く使うと写真に独特のニュアンスを出すことができる。
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