玉ちゃんのライティング話

第22回 カラーフィルターで背景を作る

解説 : 玉内公一

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img_tech_lightingstory22_02.jpg メインは左サイドからバンクライト1灯。逆サイドに白ボードを置き、右側のシャドーを起こしている。
背景は黒のペーパーを垂らし、グリッド付きリフレクターに赤いフィルターをかけて照射。f16のカメラ絞りに対し、最も明るい部分でf11.2の光量(反射光式露出計での測定)。

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グリッドつきリフレクターに赤フィルターをつけ、黒の背景に濃い赤のスポットを作った。

玉:玉内 編:編集部

 前回に続き、ライトによるバックグラウンドの演出。今回はカラーフィルターを使ったグラデーションカラーバックですね。

 前回は色のついたペーパーに対して、無色の光をあてることでグラデーションを作りましたよね。この方法は、好みのペーパーの色を選んで、光でグラデーションを作っていくわけですから、暗い色のペーパーを使えば濃厚なトーンも作れるし、明るい色のペーパーなら、ソフトで軟らかい色が得られる。

一方、光源にカラーフィルターをつけて、白い紙を照らすのは、まさに光で紙を着色する感じですね。透明感があってクリアな仕上がりになります。

しかも複数のライトに色の違うフィルターをつければ、2トーン、3トーンのグラデーションもできます。

 色を混ぜることもできるんですね。

 あ、勘違いしている人(↑)も、たまーにいるのですが、ライトの色は混ざりませんよ。混ざらないと言うか、絵の具とは同じではない。赤と黄色のフィルターをつけたふたつのライトの光を合わせた場合、光が強く交わっている部分は濃いオレンジではなく…。

 …白くなる? 

 そうです。光の加色混合ですからね。フィルターで白いバックペーパーをオレンジ色にしたかったら、オレンジ色のフィルターを使うか、ひとつのライトに赤と黄色のフィルターを重ねてつけて、照射するのがいいのです。

カラーフィルターでグラデーションを作る

白のペーパーに対し、カラーフィルターをつけたライトをあててバリエーションを作ってみた。

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オレンジのフィルターを使用。グリッドつきリフレクターにつけることで、周辺を暗く落としたスポットライト的なグラデーションを作った。
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赤のフィルターを2つライトにつけ、左右から照射。ライトの向き、背景との距離を調整することで、均一の赤バックに仕上げた。
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2つのライトに違う色のフィルターをつけ、2色のスポットを作る。ここではオレンジとエメラルドグリーンを使用。光が交わる部分は透明になる。
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2つのライトを使い、ブルーのグラデーションに、パープルのスポットを重ねた。明るい中心部は色が薄いが、暗い部分はパープルの色がのってくる

 ついでに確認しておきますけど、たとえば青いフィルターをつけたライトで、青味を濃く出したい場合、ライトの出力は高くする? それとも低くする?

 もうひっかかりません。闇雲にライトの光量を上げても、青は薄くなっていくだけなんですよね。

 背景の白いペーパーに対し、他の光が一切あたっていない状態なら、その青フィルターをつけたライトの出力が0の時、背景は完全なシャドー=黒。徐々に出力を上げていくとシャドーに青味が乗ってきて、ある一定のところで青味が最大限になる。そして、それ以上、明るくしても青は薄くなっていくだけ。

 その「ある一定のところ」とは? 

 フィルターをつけないライティングでの適正光量よりも1~2段、高めくらいの出力かな。カラーフィルターを通過した光は、入射光式露出計で正確に計れないので、反射光式の測定になるのですが、フィルターをつけるとライトの光量は1~2段ほど下がりますからね。どのくらい光量が落ちるかは、フィルターの種類、色によって違います。 

 大体「適」の明るさで、ちょうどいい色が出るということですね。

光の強さとフィルターの色の出方

上は、白いペーパーに対し、ブルーのフィルターをつけたライトを照射。下は、比較として同じライト位置で、フィルターをつけずにグレーのペーパーを照らした。それぞれライトの出力を変えて、置物の鼻先ぐらいの位置での背景光量を測定(反射光式測定)。
カメラ絞りf16に対し❺が背景の適正光量。適正光量で青のフィルターは最適な色が得られた。ライトの出力をそれ以上上げると、青は透明に近づいていく。カッコ内の数値はストロボ出力。作例の青いフィルターの場合、ノンフィルターより約-2EV光量が落ちるので、ノンフィルターと同光量にする場合、約4倍の出力が必要。
手前の被写体に対してはライトをあてず、シルエットにしている。


フィルターつき

❶ f4(25Ws)
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❷ f5.6(50Ws)
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❸ f8(100Ws)
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❹ f11(200Ws)
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❺ f16(400Ws)
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❻ f22(800Ws)
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❼ f32(1600Ws)
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フィルターなし

❶ f4(6Ws)
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❷ f5.6(12.5Ws)
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❸ f8(25Ws)
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❹ f11(50Ws)
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❺ f16(100Ws)
img_tech_lightingstory22_20.jpg
❻ f22(200Ws)
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❼ f32(400Ws)
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 さて、最後に応用例として、黒バックに対してカラーフィルターの光をあてる方法を紹介しましょう。ベースが白いペーパーだと、明るめのグラデーションは簡単ですが、暗く重厚な雰囲気を作るのが難しい。そんな時、黒のペーパーに対してカラーフィルターつきのライトをあてるんです。

 ページトップの作例ですね。仕上がりは前回の作例に近い。

 前回は濃い赤のペーパーに無色のライトでグラデーションを作ったのに対し、この作例は黒ペーパーに赤のフィルターの光をあてています。同じような雰囲気でもトーンやグラデーションの出方が違うでしょ。

最近はPhotoshopで背景の色も簡単に変えられるけれど、昔は背景のトーンやグラデーションをどう作るか、カラーフィルターなのか、お気に入りの色のペーパーなのか、フォトグラファーそれぞれのこだわりがあって、それが作風、文字通りその人のカラーにもなっていたんですね。

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ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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