2017年08月04日
前回に引き続きハッセルブラッド「X1D-50c」と富士フイルム「GFX 50S」のハイエンドデジタルカメラ2機種を比較する。今回は実際に両機を使用し撮影してみた。
「GFX 50S」&「X1D-50c」の作例
T=HEATHER MEDENDORP(Visage model management)
ISO:100
露出モード:マニュアル
WB:マニュアル
画質:ロスレス圧縮RAW
シャッター:1/60
絞り:f4
※画像をクリックすると別ウィンドウでオリジナルデータを表示
ISO:100
露出モード:マニュアル
WB:マニュアル
画質:RAW
シャッター:1/180
絞り:3.2
※画像をクリックすると別ウィンドウでオリジナルデータを表示
レリーズ時に感じた使用感の違い
実際に両機を使用して撮影。今回はテザー撮影ではなくSDカードをメインに使用。媒体はどちらもSDXCまで対応しており執筆時点では512GBが最大です。撮影ではSDHC 95MB/sのカードを使いましたが、書き込み待ちなどのストレスはなし。
「GFX 50S」のEVFは369万画素、「X1D-50c」が226万画素です。画素数は違いますが、覗いた感じはあまり差がありません。「X1D-50c」の方が発色とコントラストが自然で見やすいと感じましたが、「GFX 50S」はメニューで明るさ、彩度、コントラストの調整ができます。また、カメラを振った時に発生するファインダーのブレは確かに感じますが、「GFX 50S」は100フレーム/秒とレートが上がっているので人物の動きを追って撮影する程度のスピードでは気になりません。「X1D-50c」は記載がありませんが同様の印象です。ファインダーについてはディレイ(遅延)を気にする人もいますが、0.005秒とレリーズタイムラグの1/10程度だと今回のような撮影では、私の反射神経のほうが問題です。
少し気になったのは、レリーズ時のブラックアウトです。Rawのみの撮影の場合は「X1D-50c」の方がわずかに長くなります。16bitの3FRは105MBで14bitロスレス圧縮のRAFの2倍超の巨大なファイルサイズが原因です。ファームアップでロスレス圧縮に対応すればブラックアウトも短くなるはずです。早めの対応を期待しましょう。さらに、「X1D-50c」はRaw+Jpegで撮影すると約2秒のブラックアウトになります。画像処理エンジンが、「H6D」と共通で内部でJpegを生成することを考えて設計されていないからです。これはハッセルブラッドの「情報量で劣るJpegを記録する意味が無い、後で処理できるところは後で行なう」という考え方です。この考え方には同意できますが、Jpegが必要なスタイルの人には厳しいかもしれません。「X1D-50c」はRaw専用モデルと考えても良さそうです。
安心感と撮影テンポに影響するフォーカス性能の差
作例のようなモデル撮影の場合は、ほぼ全面をカバーするフォーカスポイントはとても助かります。どちらもコントラストAFのみですが、遅いとは感じません。中判の撮影リズムは35mmフル、APS-Cなどと比べて少しゆったりしたテンポになります。ミラーレスのせいではなく、中判一眼レフでも同じような感じになるはずです。私は速度よりコントラストAFの精度による安心感の方が重要です。位相差AFは精度の点でどうしても信用できません。絞り込んで被写界深度が深い場合は良いですが、開放近くの絞りで撮影する時はその2~3倍のコマ数を撮影しないと安心できません。
特に「GFX 50S」はフォーカスポイントを最大425ポイント使用することができ、エリアも1点から3×3、5×5と選べるので深度によって使い分けることできました。一見便利そうな顔瞳認識AFですが、レリーズするごとに顔認識に時間がかかり少しテンポがよくありません。
「X1D-50c」は、フォーカスポイントが35点と少なくサイズも大きめです。引き気味の撮影では厳密なフォーカスは難しいと思っていましたが意外にほしいところにフォーカスが来ていました。こちらのカメラはレンズシャッターを採用しているのでシャッタースピードは最速1/2000までですが、ストロボには全速同調します。
※この記事はコマーシャル・フォト2017年7月号から転載しています。
BOCO塚本 BOCO Tsukamoto
1961年生まれ。1994年フリーランス、2004年ニューヨークSOHOにてART GALA出展、2007年個展「融和」、ほかグループ展、執筆多数。公益社団法人日本広告写真家協会(APA)理事、京都光華女子大学非常勤講師。
- Aputure新型ライト amaran Sシリーズ & PTシリーズを検証する|vol.2
- Aputure新型ライト amaran Sシリーズ & PTシリーズを検証する
- ColorEdgeはアーティストにとっての眼。なくてはならない大事な道具 TELYUKA × 小島勉
- EIZO CG2700Xの魅力を語る 小島 勉 × 佐藤かな子
- ColorEdge CGシリーズ、27型初の4K対応モデル「CG2700X」をプリント制作の視点から検証する
- 【intel CPU review】なぜフォートンはインテル製プロセッサー搭載PCを使うのか?
- 【解析特集】SIGMA fp / fp L
- 写真・映像編集に最適なクリエイター向けのデスクトップパソコン「raytrek ZF 東京カメラ部10選 別所隆弘監修モデル」
- 最短1/80,000秒の閃光時間を誇るストロボジェネレーター Profoto Pro-11 × YUMIKO INOUE
- 撮影ワークフローを向上させるプロ向けスマートフォン ソニー Xperia PRO
- ライカ SL2-S|写真・映像、2つの世界を1台で写し撮る
- 省スペース・高コスパのフォトグラファー向けPC エプソン Endeavor SG100E
- 【解析特集】Profoto A10 & OCFアダプター
- A3ノビに対応した小型インクジェットプリンター Canon PRO-G1/PRO-S1
- 【新製品インプレッション】ソニー α7S Ⅲ × YUMIKO INOUE
- 【撮影レポート】八木 淳が使うソニーα7R IV
- 【解析特集】出力が2倍にアップしたバッテリー搭載型ストロボ「Profoto B10 Plus」
- FUJIFILM GFX100 「1億画素が描き出す世界」
- 【解析特集】1億200万画素のラージフォーマットセンサー搭載 FUJIFILM GFX100
- 【撮影レポート】SONY α9の秒20コマ連写でハイクオリティ動画を撮影する
- 【解析特集】SONYαシリーズ大型アップデート検証
- 【解析特集】プロフェッショナル向けフルサイズミラーレス一眼 Panasonic LUMIX S1 & S1R
- 【解析特集】世界最小のコードレスオフカメラ・フラッシュ Profoto B10 AirTTL
- 【特集】最新ミラーレスを検証する③ FUJI FILM X-T3 / GFX 50R
- 【特集】最新ミラーレスを検証する② Nikon Z 6 / Z 7
- 【特集】最新ミラーレスを検証する① Canon EOS R
- 業界トップクラスのスピードと耐久性を誇る「インテル® Optane™ SSD 905P シリーズ」をクリエイティブの現場で徹底検証
- 現地に行かずにロケハンもできる MatterportのVR撮影&3Dモデリング制作の現場
- 【解析特集】マクロ撮影にも対応した3本のティルト・シフトレンズ「Canon TS-E レンズ」
- 【解析特集】高解像度・高速連写を両立させたオールマイティなフラグシップ機 SONY α7R lll ②
- 【解析特集】高解像度・高速連写を両立させたオールマイティなフラグシップ機 SONY α7R lll ①
- 画素数、高感度性能、連写性能のすべてが進化したNIKON D850
- Panasonic LUMIX GH5Sの動画性能を検証する②
- Panasonic LUMIX GH5Sの動画性能を検証する①
- Panasonic LUMIX GH5S ファーストインプレッション / コマーシャル・フォト4月号
- iMac Proの動画/静止画処理能力をプロがテスト
- 全域でF2.8を実現した3本のズームレンズ SONY G MASTER LENS
- 【解析特集】世界最小のスタジオライトの実力と活用法 Profoto A1 AirTTL
- 新型 iPad Pro とレタッチアプリ「Affinity Photo」を使い、モバイルで本格的な画像編集とプリント作りを行う【後編】
- 新型 iPad Pro とレタッチアプリ「Affinity Photo」を使い、モバイルで本格的な画像編集とプリント作りを行う【前編】
- オリンパス・ミラーレス一眼による物撮りの可能性
- 【解析特集】ロケ撮影最強のモノブロックストロボ Profoto B1X 500 AirTTL③
- 【解析特集】ロケ撮影最強のモノブロックストロボ Profoto B1X 500 AirTTL②
- 【解析特集】ロケ撮影最強のモノブロックストロボ Profoto B1X 500 AirTTL①
- 【解析特集】フルサイズミラーレス一眼の最先端「SONY α9」で撮る③
- 【解析特集】フルサイズミラーレス一眼の最先端「SONY α9」で撮る②
- 【解析特集】フルサイズミラーレス一眼の最先端「SONY α9」で撮る①
- 中判ミラーレスカメラ「GFX 50S」&「X1D-50c」の実力を徹底解析! ③
- 中判ミラーレスカメラ「GFX 50S」&「X1D-50c」の実力を徹底解析! ②
- 中判ミラーレスカメラ「GFX 50S」&「X1D-50c」の実力を徹底解析! ①
- SIGMA & FUJI FILM コンパクトで高画質シネレンズで広がる映像表現 ③
- SIGMA & FUJI FILM コンパクトで高画質シネレンズで広がる映像表現 ②
- SIGMA & FUJI FILM コンパクトで高画質シネレンズで広がる映像表現 ①
- 中判サイズのイメージセンサーを搭載したハイエンドミラーレスの実力を検証 FUJIFILM GFX 50S
- 中村成一が語るFUJIFILM GFX 50Sの魅力
- ワコムの新世代ペンタブレット「Wacom Intuos Pro」を試す
- 【取材レポート】ソニー SDカード業務用モデルってどうなの?
- 広角歪みとレンズの歪曲を自動で補正できるLensTRUEが近代インターナショナルよりリリース