2017年08月10日
ハッセルブラッド「X1D-50c」と富士フイルム「GFX 50S」のハイエンドデジタルカメラ。最後に感度と使用レンズ、ソフトウェアを比較してみた。
実用レベルの範囲なら画質と感度の差はない
スペックを比べてみるとCMOSセンサーのサイズは同じですが、画素数が微妙に異なります。どうやらベースのセンサーは、ハッセルブラッド、富士フイルム、PHASEONE、PENTAXで同じようです。それぞれ、各社専用仕様にカスタマイズされているのかもしれません。ベース感度は、ISO100となっていて2機種ともこの感度がベスト。この感度では画質の違いは見つけられませんが、「X1D-50c」のRawデータが16bit。「GFX 50S」のRawデータが14bitですから大きくレタッチ補正すると差が出るかもしれません。
高感度は「X1D-50c」がISO25600、「GFX 50S」がISO12800となっています。デジタルによるノイズリダクションを比較しても意味がないので、共にISO12800で撮影したものをLightroomのノイズリダクションをOFFにして現像しました。やはり少しでも新しい方が良い結果です。ただし、中判カメラでここまでの高感度を使用するのは現実的ではありません。ノイズリダクションは階調とシャープネスと引き換えですから、きれいにノイズが消えていても劣化は避けられません。高画質を求めて中判デジタルカメラを使用するのであれば最高画質であるISO100が標準になります。
レンズラインナップは今後に期待
「X1D-50c」用のレンズは、Xシステムです。現在は、XCDシリーズの、30mm/f3.5、45mm/f3.5、90mm/f3.2、120mm/f3.5マクロの4本を用意しています。標準となる60~65mmのレンズがありませんが、いずれリリースされるでしょう。システムとしては、まだ充分と言えるラインナップではありませんが、XHレンズアダプターを使うことで「H6D」用で24mmから300mmまでのHC/HCDの12本のレンズが全てとマクロコンバーター、3種類のエクステンションチューブを使用できるのが強みです。
「GFX 50S」のレンズは、Gマウントというシリーズです。23mm/f4、63mm/f2.8、110mm/f2、120mmF/f4マクロ、4本の単焦点レンズと32-64mm/f4のズームレンズ計5本のラインナップです。こちらもHマウントアダプターGを使用することで「GX 645 AF」用のレンズ12本と1.7Xコンバーターが使用できます。
いずれのシステムも他の自社レンズで対応していますが、新規ユーザーにとっては将来性を考えると投資しづらい部分です。普及が一番のポイントですができるだけ早めに充実させて欲しいところです。
「GF63mm F2.8 R WR」(写真左)
「GF23mm F4 R LM WR」
「GF32-64mm F4 R LM WR」
「GF110mm F2 R LM WR」
「GF120mm F4 R LM OIS WR Macro」
「XCD 3,5/45 MM」(写真右)
「XCD 3,5/30 MM」
「XCD 3,2/90 MM」
「XCD 3,5/120 MM MACRO」
両極端なメニュー画面の仕様
使用感のところでも触れましたが、「X1D-50c」はRaw撮影をメインとしています。なので、撮影後に変更できる設定のメニューはカメラに用意されておらず、シンプルな構成になっています。画像に対する設定はホワイトバランスと感度設定くらいしかありません。
直感的な操作で気軽に撮影に臨めるが、自由度は低い。
対して、「GFX 50S」のメニューは設定するのが難しいくらいの膨大な項目が並びます。これは、撮影後にRawに対して行なう調整をカメラ設定だけで行ない、Jpegで完結できるようになっているためです。Jpegのアスペクトレシオだけで7種類、富士フイルム独特のフィルムシミュレーションは15タイプあります。画像のトリミングやリサイズは再生メニューでできます。これらは「パソコンが得意ではない」とか「できればパソコンは触りたくない」というユーザーに向けているのではないでしょうか。富士フイルムでは、Rawデータはカメラ内現像を推奨していて純正Raw現像ソフトは提供していません。パソコンでのRaw現像には、「RAW FILE CONVERTER EX 2.0 powered by SILKYPIX」をバンドルしています。これは富士フイルムのRawデータにのみ対応したバージョンです。
ソフトウェアの使い勝手
どちらのカメラを使っても撮影時は基本的な設定だけでテザー撮影を行ない、ソフトで調整するのが一般的だと思いますが、みなさんはいかがでしょう。
ハッセルブラッドのソフトウェアは「Phocus」(Mac、Windows)一本でテザー撮影から調整そして現像まで行なえます。パソコンからのコントロールやライブビューもこのソフトで可能です。以前のソフトウェアと比較するとずいぶんと使いやすくなりました。ハッセルブラッドでは「Lightroom」も推奨ソフトになっていて、「Lightroom」でテザー撮影を可能にするための「Hasselblad Tether Plugin」を無償で提供しています。
富士フイルムのテザーには、3種類のソフトが選べます。単に転送するだけの「FUJIFILMX Acquire」。カメラのコントロールやパソコン上でのライブビューまで可能な「HS-V5」(別売。Windowsのみ)。Lightroomに「HS-V5」と同じ機能を提供する「Tether Shooting Plugin PRO for Adobe® Photoshop® Lightroom」(別売。Mac、Windows)です。「HS-V5」と「Lightroom」プラグインは、機能がほぼ変わらないのでRaw撮影であれば「Tether Shooting Plugin PRO」が良いでしょう。
両機種とも新鋭機らしくWi-Fi機能を搭載。それぞれ「Phocus Mobile」(iOSのみ)、「FUJIFILM Camera Remote」(iOS・Android)を使用してスマートフォンやタブレットでカメラコントロールや撮影、撮影画像の閲覧ができるようになっています。テザー撮影ができないときの画像確認には便利です。
※この記事はコマーシャル・フォト2017年7月号から転載しています。
BOCO塚本 BOCO Tsukamoto
1961年生まれ。1994年フリーランス、2004年ニューヨークSOHOにてART GALA出展、2007年個展「融和」、ほかグループ展、執筆多数。公益社団法人日本広告写真家協会(APA)理事、京都光華女子大学非常勤講師。
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