玉ちゃんのライティング話

第1回  フィルインライトは 天空の輝き?

解説 : 玉内公一

玉:玉内 編:編集部

 コマーシャル・フォトで好評連載中の「玉ちゃんのライティング話 基礎実践編」、装いも新たに、Web版のスタートです。しかし、せっかくのWeb版だというのにずいぶんとシンプルな作例写真ですね。

 基礎なので、光のあたり方がわかるようにという配慮です。追々、カラーの被写体も増えていきます。

 それを聞いて安心。で、基礎実践編というのは?

 ストロボを使ったスタジオライティングを、基礎の基礎から色々と考えてみようと思ってます。


ストロボの直光をあてるだけだと、強い影が落ちる。大気のない月面の写真のようだ(写真左)。いつも我々が見ているモノと同じように、自然なコントラスト、階調を得るためには、適度な拡散光と周囲から回り込む光が必要だ(写真右)。


自然の光の中で見るモノがもっとも自然に見える。自然の光とは強いメイン光である太陽光線と、地球の大気で拡散したフィルイン光がミックスされた状態だ。

 さて、モノが自然で立体的に見える光とは、どんな光だと思いますか?

 それはやっぱり自然の光でしょ。

 そう。明るい部分があって、適度に影がある。当たり前ですが、我々人間が一番見慣れた太陽の光、つまり自然の状態の光が、もっとも「自然」なわけです。
昔は5月〜10月、薄曇りの日のワシントンD.C. の10時から14時までの光が写真的昼光=Photogenic Daylight なんて言われてましたしね。

 なんでワシントンD.C. ?

 アメリカのフィルムメーカーが決めたことだから…。
それはさておき、もう少し分析していきましょう。自然の光は、太陽が光源です。
とても離れた地点から、地球にあたっている。だから、平行光線と考えられます。そして地球には大気があり、太陽の光はその大気で散乱(拡散)され、ちょうどドームのように空全体が明るくなるわけです。
南の空に太陽がある場合、南からの光がモノを照らし、反対方向に影を作りますが、それと同時に空全体、周囲360度からも柔らかな光があたっているわけです。

 つまりその状態が、モノが自然に見える状態だと?

 そうです。スタジオライティングとは、人工の光でその状態を作ることからスタートしているんですね。南からの日差しがメインライト、天空から周囲に回り込む光はフィルインライト。フィルイン(fill in)とは「満たす」ということです。
曇りの日はメインの太陽光が弱まり、影が薄くなる。つまりメインライトにトレペなどのディフューザーをかけた状態ですね。
たとえば月には大気がないので、月面の写真は明暗差が激しいでしょう?
スタジオで1灯を直に被写体にあてると、これに近い光になります。これではモノは自然に見えません。


1灯 水平正面から
被写体の正面、ほぼカメラ位置からのライティング。前面に光があたるが立体感が乏しい。


1灯 斜め45 度から
左斜め45度からのライティング。光のあたらない部分は濃い影ができ、ドラマチックではあるが、「自然なライティング」とは言えない。


左斜め1灯+レフ板
左斜めからのメイン光に対して、右側にレフ板を置いて、影の部分に光を補う。レフからの反射光がフィルインライトの役割。


左斜め1灯+バンク1灯
バンクライトによるフィルインライトをメインの反対側から入れる。2灯によるもっとも基本的なライティング。メインで光の方向性とエッジを出し、フィルインで全体の形を出す。

 スタジオ撮影でも空全体からの光が必要なんですね。

 そう。もちろん被写体のサイズによっては、1灯でも全体に光が回る場合もありますが、通常はメインに対して、被写体全体を柔らかく覆う光を入れる。簡単なのは反対側にレフを置くことですよね。2灯使うなら、1灯を強めのメインして、もう1灯はバンクなどを使い、広い範囲の拡散光を あてればいい。

 なるほど。だからメイン1灯とバンク1 灯が基本になるわけですね。

 基本ついでに言うと、メインがあたる明るい側と、影の側の明るさの比は3:1。
ただし、あくまで基本ですよ。表現や目的によってまた違った解答はあるわけですから。

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ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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