玉:玉内 編:編集部
編 前回は、太陽の下でモノを見るのと近い状態を、メインライトとフィルインライトで作るという話でした。
玉 メインが太陽光、フィルインが空全体から拡散して降り注ぐ光という考え方ですね。今回は、それをもう少し応用して、メインライトの位置を考えてみようと思います。
編 普通、メインライトは斜めからあてますよね。
玉 斜めからあてた方が、正面からあてるよりも自然な影ができて、立体感が出るのは当然ですよね。また、やや上方からあてるのも、通常は太陽の光が上にあることに倣っているわけです。水平45度、垂直45度ぐらいの高さにライトをセットするのが、基本的なライティングですね。
下の作例の、両端から棒が出た立体の場合、被写体正面をカメラの光軸からやや斜めに向けた方が、形全体が見えて立体感を感じます。さらに被写体が向いた方向とは逆斜めからライトをあてると、手前が明るくなり、カメラから遠い部分に影が落ちて、奥行き、立体感が強調される。
これが同じ斜めからの光でも、被写体の向いた正面から光をあてると、全体がのっぺりとした印象でしょう? つまり「被写体の形状」「被写体の向き→カメラアングル」「光のあたる方向→ライトアングル」が、ライティングの重要なポイントなんです。
メインライトの位置でモノの見え方が変わる
小型バンクライトをメインにして、その位置を色々と変えてみた。
明暗のコントラストをつけるため、フィルインはストロボを使わずに、大きなレフ板を囲むようにセットした。


水平45度/垂直45度
左斜め上前方から。手前が明るく奥が暗くなる、基本的なライティング。被写体が過不足なく照らされる。

水平0度/垂直45度
正面上斜めから。作例のような被写体では影がなくなり立体感が出ない。

水平0度/垂直90度
真上からのライティング。影が真下に落ちる。太陽の位置が高い夏の日差しの感じ。

水平45度/垂直0度
作例の円錐形の被写体はある程度、高さがあり、上面に照らす必要がないので、水平45 度でも自然な仕上がり。

水平0度/垂直0度
ほぼカメラ位置からのライティング。影がなくなり立体感が乏しくなる。

水平-45度/垂直0度
被写体の正面にライトがあたっている状態。被写体正面は明るくなるが、立体感がやや減じる。

水平135度/垂直0度
斜め後ろからの逆光気味のライティング。被写体正面が暗くなる演出的な手法。

水平-135度/垂直0度
左の写真と逆の位置からの逆光。被写体正面のエッジにハイライトが入る。
玉 ところでマジックアワーって知っていますか?
編 朝、夕の太陽が出る直前、太陽が沈んだ直後ですよね。クルマのロケ撮影は、その時間帯がいいと言われますね。
玉 そう、モノがとてもきれいに見える一瞬。マジックアワーとはメインの光源、すなわち太陽が地平に沈み、まだ明るさが残る空の光のみでモノを見る状態。ライティングで言えば、全体に回る光、フィルインライトだけで撮影する感じです。

メイン(左斜め上)+ フィルインの2灯ライティング。適度にハイライト、シャドーが入るノーマルなライティング(写真左)。フィルインのみの「マジックアワー」ライティング。全体の立体感は乏しくなる反面、被写体の色、質感が出てくる。すべての被写体にマッチするわけではないが、絵画のような雰囲気のある仕上がり(写真右)。

編 メインライトがないと、立体感は失われませんか?
玉 強い影がなくなるので、明暗差による立体的な見え方はしませんが、全体を柔らかい光が覆い、被写体表面の凹凸が自然な感じで浮き上がってくる。また、ハイライトや濃いシャドーがなくなり、モノの自然な色、グラデーションが出てくる。 人物の場合、ホリの深い人なら、そのホリの凹凸がよりはっきりする。女性なら肌のトーンが出てくる。被写体がぐっと存在感を増すというのかな。だから、プロポーズは夕暮れ時がいいんですよ。
編 本当ですか? それってもしかして経験談? でも何十年前のことなんですか?
玉 いやいや、マジックアワーっていうのは、原理的には広い水平線が見えるような場所だからできるわけで、日本みたいに山が多いと、日が山に落ちて、すぐに暗くなってしまうのですよ。
スタジオライティングで、マジックアワーの状態を作るには、大きなディフューザー、沙幕などで被写体を覆って、光を回す。いかにきれいに均等に光を回すかがポイントです。人物撮影ではよく行なわれる手法で、メイプルソープのモノクロのポートレイトは、そんな感じですよね。物撮影だとハイライトを入れたり、もう少し全体の立体感がほしくなるんですが。
基礎から始める、プロのためのスチルライフライティング
スチルライフのジャンルでも、特にプロの世界で「ブツ撮り」と呼ばれるスタジオでの商品撮影をメインに、ライティングの基礎から実践までを解説していきます。
定価2,730円(税込)
玉内公一 Kohichi Tamauchi
ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。
- 第28回 グレースケールをヒストグラムで見る
- 第27回 ヒストグラムとライティングの関係
- 第26回 最初に揃える照明機材は?
- 第25回 ライトパネル+アンブレラで撮影
- 第24回 スローシャッターを使った表現
- 第23回 アクリルボードを使った背景の演出
- 第22回 カラーフィルターで背景を作る
- 第21回 ライトで背景のグラデーションを作る
- 第20回 ボトルのエッジを光らせろ
- 第19回 天からのスポットで被写体を強調
- 第18回 透明感を演出するライトテーブル撮影
- 第17回 バンクライト2灯でクラムシェル
- 第16回 商品撮影に便利な「天トレ」セット
- 第15回 モーテンセンの5つのパターン
- 第14回 ポートレイトライティングの組み立て
- 第13回 ループ、スプリットそしてバタフライ
- 第12回 レンブラントライティングで撮るポートレイト
- 第11回 半逆光でモノがよく見える
- 第10回 透明物の透過光撮影と黒締め
- 第9回 入射光式露出測定と反射光式露出測定
- 第8回 黒でシャドーを締める
- 第7回 鏡面の被写体を撮る
- 第6回 柔らかい光 硬い光
- 第5回 明暗のグラデーションを作る
- 第4回 円柱、円錐、球のライティングパターン
- 第3回 四角い箱のライティング
- 第2回 メインライトの位置を考える
- 第1回 フィルインライトは 天空の輝き?


















