玉ちゃんのライティング話
第5回 明暗のグラデーションを作る
2010年01月26日
玉:玉内 編:編集部
玉 前回の続きでグラデーションについてお話ししましょう。
編 曲面を持つ円柱や球では、ハイライト部とシャドー部のつながり、グラデーションをどう作るかで、その立体感や見え方が変わってくるという話でしたよね。
玉 円柱や球だけでなく、グラデーションというのは写真表現の最も重要な部分ですからね。明から暗へのグラデーションがないと、写真が昔のCGや浮世絵みたいになってしまう。もちろんそういう写真表現もあるんですが。
左方向からの1灯のみ。やや逆光気味にあてた。黒バックで周囲からの光の回り込みをなくし、明暗のコントラストを強調したイメージ。
左斜め前方向からメイン。正面からフィルインをあて、セット右側には白ペーパーを垂らした。シャドー部の面積の少ない明るいイメージ。
右側に垂らしたペーパーを黒にして、フィルインの光量を下げることで、ポット右側に広めのグラデーションを作った。シャドー面積が広くなることで、イメージはやや暗くなるが、立体感は強調される。
玉 ところで影と言っても、厳密には2つのものがある。ライトをあてた時、被写体が落とす影と、被写体そのもの陰影。前者はShadow、日本語で言う『影』。後者はShade、日本語で言えば『陰』。
写真の内容によっては『影』も重要なイメージの要素ですが、ライティングでは、それ以上にどのような『陰』を被写体に作っていくかが重要なんです。
編 つまり、円柱や球のグラデーションとは、その『陰』にあたる。
玉 そうです。普通はShadowもShadeも分けずに、シャドーと言っていますし、ここでもシャドーとしていますが、取り合えず、影にも2種類あることは憶えておいて下さい。
「カゲ」の種類
それぞれの「カゲ」をコントロールすることがライティングでは重要
Shade(陰)
被写体の陰影。どのようなグラデーションを作るかでモノの見え方が変わる。Shadow(影)
光をあてることによって地、背景にできる影。本影と半影
特にスタジオでバンクやリフレクター付きストロボなどを使いライティングする場合、光のバランス、回り込み具合によって影が二重になる。濃い部分が本影(アンブラ)、周囲の薄い部分が半影(ペナンブラ)にあたる。点光源では本影(アンブラ)のみになる。玉 ちなみに被写体が落とす影 これは先の話でいうShadowですが、この影の濃い部分をアンブラ(umbra)=本影、周囲に薄く滲んだ影をペナンブラ(penambra)=半影と言います。
編 夏の強い光ではペナンブラが少ない。
玉 そう。逆にフィルインライトで全体に光を回すと、アンブラの面積が減っていくわけです。さて、ここで今回のテーマ、被写体表面のグラデーション。
編 おお、やっと本題。
玉 下の作例は黒バックなので被写体の影(Shadow)は関係ない。でも球表面の陰影(Shade)の付け方で、見え方は大きく違います。
グラデーションの違い
メインの位置を同じにしてグラデーションの違いを作ってみた
左斜め35度の位置から小型バンク1灯のみ照射。ハイライトとシャドーのメリハリをつけた。
メイン位置は①と同じ。カメラ後方から全体に弱いフィルインをあててシャドーをやや明るくし、グラデーションをなめらかにした。
球の右手に白いペーパーを垂らしてレフにする。メイン光が反射しシャドー側に光が回り込むことで、グラデーションがさらに柔らかくなる。
セットは③と同じ。フィルの出力を上げ、球全体に光を回した。
玉 明から暗へのグラデーション、これはメインライトの方向、メインライトが直進性の強い光か拡散気味の光か、そしてメインに対するフィルインライトとのバランスで決まります。さらにライティング以外の部分では、フィルムや印画紙の種類、デジタルで言えばトーンカーブの作り方でもグラデーションの見え方は変わります。
フィルインを弱くして、メインを強くすれば明暗がはっきり分かれる。でも、線で引いたように分かれるのではなく、狭い幅ではあるけれどグラデーションがある、これが写真なんですね。
編 なるほど。
玉 それから、これは一般論なのですが、日本の商品写真や人物写真は、どちらかというと、幅の広い柔らかなグラデーションが好まれるかな。つまりフィルインで光を全体に回す。ヨーロッパなどでは、あまり光を回さず、明と暗のコントラストがはっきりした写真が多いですよね。
編 どうしてでしょう?
玉 お国柄なのかな。絵画と浮世絵の違いと言うのか、モノの形をきっちり捉えるために面の陰影をはっきりさせる文化と、輪郭線だけでものを表現する文化の違いなのかもしれませんね。
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玉内公一 Kohichi Tamauchi
ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。














