玉:玉内 編:編集部
編 「硬い光」「柔らかい光」ってよく言いますけど、実際のところ、それはどんな光なんですか?
玉 もっともシンプルにお答えすると、硬い光とは直進性がある光、つまりスペキュラー(specular)ライト。モノの影がシャープに出ます。光源で言えば点光源、ベアバルブの光が、スペキュラーライトですね。
柔らかい光とは拡散光、つまりバンクライトやバウンスを使ったディフューズ(defuse)ライト。光が回り、影は柔らかく表現されます。
右:アンブレラによる「柔らかい」拡散光。光が回って全体のディテールは出るが、シャープ感は少なくなる。
編 シンプルな答えということは、シンプルじゃない答えがある?
玉 そういうわけではないんですが、たとえば拡散光のバンクでもホットスポットから周辺までの光の落ち方が急激だと、そのバンクの光は硬いなんて言われますね。
さらに光の硬/軟と、写真の硬/軟が混同される場合もありますが、光の硬/軟はあくまで写真の硬さの一要素であって、イコールではない。写真の硬さは被写体(の材質)、光のあて方、また昔で言えば印画紙の硬さや焼き、ピント、シャープネスなどさまざまな要素で決まる。
つまり拡散光で撮った「硬い写真」というのもあるわけです。
編 でも、一般的にシャープでカリッとしたイメージを作りたい場合は、硬い光を使うのがいいんですよね。
玉 そうですね。特に光の硬/軟と光のあて方は、被写体の質感を表現する上で重要です。
編 硬い金属などは硬い光ですね。
玉 そうとは一概に言えません。光にスペキュラーライトとディフューズライトがあるように、被写体にもスペキュラーサブジェクトと、ディフューズサブジェクトがあります。スペキュラーサブジェクトとは光を直進的に強く反射させる表面を持ったもの。ディフューズサブジェクトは光を拡散して反射する表面のもの。
ディフューズサブジェクトはスペキュラーライト、ディフューズライトのどちらでも撮影できるけれど、スペキュラーサブジェクトはスペキュラーライトで撮らないのが、ライティングの基本なんです。
シャープに見せたい被写体の代表、銀食器など光沢の強いモノは、スペキュラーライトで撮ると光を強く反射してむしろ質感が損なわれる。
編 言われてみればそうですね。
玉 また、柔らかい毛糸のような素材も、あまり光を回しすぎると、メリハリのないぼやけた写真になる。ちょっと硬めの光をあてた方が、毛足に陰影がついて毛糸の感じが出る場合もあるんです。
編 お汁粉の仕上げに、塩をひとつまみ入れると甘さが引き立つのと同じですね。
玉 たとえ話が飛躍しすぎてません? ま、いずれにせよ被写体の表面の質感、またそれをどう見せたいかを考えた上で、最適なライトの硬さを決めていくわけです。
直進性の光により、影が強く出る。錆た鉄球のざらついた表面が強調された。
適度な直進性と拡散性を持った光。影ははっきりと出るが、エッジは柔らかい。
光が回り、細部のディテールが再現される一方、コントラストが減り、柔らかな表現となる。
アンブレラよりさらに光が拡散して柔らかい仕上がり。毛糸の質感もほどよい。
銀面が光を直線的に照射するので、シャープではないが濃い影ができ、「ヌメッ」とした印象になる。
光をかなり拡散させたソフトな表現。光は柔らかいが、毛糸などの被写体表面の凹凸感が少ない。
編 ところで銀食器などの「光り物はディフューズ光」ということですが 。
玉 特に鏡面のものは直に光をあてない。周囲の環境をライティングするのが基本です。
編 環境をライティングする?
玉 そこは次回ということで。
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玉内公一 Kohichi Tamauchi
ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。
- 第28回 グレースケールをヒストグラムで見る
- 第27回 ヒストグラムとライティングの関係
- 第26回 最初に揃える照明機材は?
- 第25回 ライトパネル+アンブレラで撮影
- 第24回 スローシャッターを使った表現
- 第23回 アクリルボードを使った背景の演出
- 第22回 カラーフィルターで背景を作る
- 第21回 ライトで背景のグラデーションを作る
- 第20回 ボトルのエッジを光らせろ
- 第19回 天からのスポットで被写体を強調
- 第18回 透明感を演出するライトテーブル撮影
- 第17回 バンクライト2灯でクラムシェル
- 第16回 商品撮影に便利な「天トレ」セット
- 第15回 モーテンセンの5つのパターン
- 第14回 ポートレイトライティングの組み立て
- 第13回 ループ、スプリットそしてバタフライ
- 第12回 レンブラントライティングで撮るポートレイト
- 第11回 半逆光でモノがよく見える
- 第10回 透明物の透過光撮影と黒締め
- 第9回 入射光式露出測定と反射光式露出測定
- 第8回 黒でシャドーを締める
- 第7回 鏡面の被写体を撮る
- 第6回 柔らかい光 硬い光
- 第5回 明暗のグラデーションを作る
- 第4回 円柱、円錐、球のライティングパターン
- 第3回 四角い箱のライティング
- 第2回 メインライトの位置を考える
- 第1回 フィルインライトは 天空の輝き?


















