
被写体はシルバーのワインクーラー。トレーシングペーパー、黒ボードで被写体全体を囲む。右側のトレーシングペーパーの後ろから、バンクライトとアンブレラで光をあて、トレーシングペーパーを均等に明るくする。
玉:玉内 編:編集部
編 さて今回はスペキュラーオブジェクト、鏡面を持つ銀製品のライティングについて。前回、「光モノは周囲の環境をライティングせよ」という意味深な言葉で終わった訳ですが。
玉 別に意味深じゃないですよ。鏡面のシルバー食器とか、どうしたって周囲が映り込む訳です。特に曲面の被写体、銀の球なんて、周囲360度が映り込みますよね。それならば、映り込む環境の方をコントロールすればいい。散らかった部屋を映し込むより、きれいな部屋が映った方がいいでしょ。映り込む環境を整理するってことです。
編 散らかった部屋も、それはそれで住み心地が 。
玉 そういう話じゃなくって! 「環境の整理」ということを、ライティングの点で考えてみると、鏡面の被写体に直接、光をあてるとライトの光芒が入ってしまう。部屋の状況をきれいに映し込みたいなら、部屋の方をライティングするんですね。
直接ライトの光をあてると
玉 部屋の中で、光があたって明るい部分は被写体にもきちんと映り込むし、映したくない部分は光をあてずに、シャドーにすればよい。つまり「映し込む周囲の環境をライティングせよ」ってことなんです。
編 なるほど。でも自分の部屋なんて、わざわざ映し込みたくないし 。
玉 そうですね。イメージカットでは観葉植物などを映し込んだりもしますが、商品撮影では、被写体の表面にあまりゴチャゴチャと映し込みたくない。ならば真っ白い壁とかを映し込めばいいんです。つまり白ホリに置いて、ホリの部分に光をあてれば何もない白が映り込む。それが大げさなら、被写体の周囲を白いディフューザーで覆って、そのディフューザーを明るくしてあげればいい。
鏡面に何を映し込ませるか

テーブルに置き、そのテーブル面を映り込ませた。テーブル面を明るくすれば、映り込みも明るく(白く)なる。

黒い布をテーブルに敷く。黒い布はほとんど光を反射しないので、被写体表面は暗くなる。
編 そうすると、シルバーの被写体全体が白くなる。
玉 ただし、シルバーの被写体は、白いだけだとシルバーには見えません。写真表現でシルバーは、白と黒、ハイライトとシャドーの表現なんです。だから映り込みにも黒い部分、つまりシャドーを作る。
編 黒を映し込めばいいんですね。
玉 そういうこと。鏡面の被写体の周囲に真っ黒いものを置けばそれが映る。厳密に言えば「黒が映る」というのは変ですね。ライティング的には、「黒が映る」ということは何も映り込んでいない、つまり光があたっていない状態です。銀のシャープさを強調するなら、黒い紙やボードなどで、被写体にあたる光を部分的にカットする。つまり黒を映し込むということは、光をカットするということですね。
白と黒で表現する

冒頭の作例のバリエーション。被写体左右に明るい白い面を作り、センターをシャドーにした。

右側に黒ボードを立て、被写体右半分をシャドーにする。ページトップの作例とページ作例と逆のパターン。
編 白を映し込んでハイライトを作り、黒を映し込んでシャドーを作る。簡単ですね。
玉 いや話すのは簡単ですけど、曲面を持った被写体なんて、余計なものを映し込みたくなかったら、広い範囲を白で囲まなくてはいけない。被写体が大きくなるとセットも大きくなる。ポールやスタンドも隠す。かなり大変です。カメラなどがどうしても映り込んでしまう場合、セットで何とかするより、レタッチで後から消すくらいに考えた方が、撮影効率は良いかもしれません。
基礎から始める、プロのためのスチルライフライティング
スチルライフのジャンルでも、特にプロの世界で「ブツ撮り」と呼ばれるスタジオでの商品撮影をメインに、ライティングの基礎から実践までを解説していきます。
定価2,730円(税込)
玉内公一 Kohichi Tamauchi
ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。
- 第28回 グレースケールをヒストグラムで見る
- 第27回 ヒストグラムとライティングの関係
- 第26回 最初に揃える照明機材は?
- 第25回 ライトパネル+アンブレラで撮影
- 第24回 スローシャッターを使った表現
- 第23回 アクリルボードを使った背景の演出
- 第22回 カラーフィルターで背景を作る
- 第21回 ライトで背景のグラデーションを作る
- 第20回 ボトルのエッジを光らせろ
- 第19回 天からのスポットで被写体を強調
- 第18回 透明感を演出するライトテーブル撮影
- 第17回 バンクライト2灯でクラムシェル
- 第16回 商品撮影に便利な「天トレ」セット
- 第15回 モーテンセンの5つのパターン
- 第14回 ポートレイトライティングの組み立て
- 第13回 ループ、スプリットそしてバタフライ
- 第12回 レンブラントライティングで撮るポートレイト
- 第11回 半逆光でモノがよく見える
- 第10回 透明物の透過光撮影と黒締め
- 第9回 入射光式露出測定と反射光式露出測定
- 第8回 黒でシャドーを締める
- 第7回 鏡面の被写体を撮る
- 第6回 柔らかい光 硬い光
- 第5回 明暗のグラデーションを作る
- 第4回 円柱、円錐、球のライティングパターン
- 第3回 四角い箱のライティング
- 第2回 メインライトの位置を考える
- 第1回 フィルインライトは 天空の輝き?


















