玉ちゃんのライティング話

第7回 鏡面の被写体を撮る

解説 : 玉内公一

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被写体はシルバーのワインクーラー。トレーシングペーパー、黒ボードで被写体全体を囲む。右側のトレーシングペーパーの後ろから、バンクライトとアンブレラで光をあて、トレーシングペーパーを均等に明るくする。
白い部分は、ハイライトといっても実際にはグレー。黒とのコントラストで明るく見える。シルバー素材をシャープに見せる表現では、シャドー部分は階調のない黒、明るい部分はニュートラルグレーを下限に、明るい白までの階調を作ると良い。

玉:玉内 編:編集部

 さて今回はスペキュラーオブジェクト、鏡面を持つ銀製品のライティングについて。前回、「光モノは周囲の環境をライティングせよ」という意味深な言葉で終わった訳ですが。

 別に意味深じゃないですよ。鏡面のシルバー食器とか、どうしたって周囲が映り込む訳です。特に曲面の被写体、銀の球なんて、周囲360度が映り込みますよね。それならば、映り込む環境の方をコントロールすればいい。散らかった部屋を映し込むより、きれいな部屋が映った方がいいでしょ。映り込む環境を整理するってことです。

 散らかった部屋も、それはそれで住み心地が…。

 そういう話じゃなくって! 「環境の整理」ということを、ライティングの点で考えてみると、鏡面の被写体に直接、光をあてるとライトの光芒が入ってしまう。部屋の状況をきれいに映し込みたいなら、部屋の方をライティングするんですね。

直接ライトの光をあてると

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アンブレラ1灯を直接あてたライティング。鏡面ではない被写体(ディフューズオブジェクト)なら、1灯でも全体に光を回して撮れるが、鏡面の被写体では、部分的にライトの光を反射してしまう。さらに周囲の壁なども映り込んで汚い。

  部屋の中で、光があたって明るい部分は被写体にもきちんと映り込むし、映したくない部分は光をあてずに、シャドーにすればよい。つまり「映し込む周囲の環境をライティングせよ」ってことなんです。

 なるほど。でも自分の部屋なんて、わざわざ映し込みたくないし…。

 そうですね。イメージカットでは観葉植物などを映し込んだりもしますが、商品撮影では、被写体の表面にあまりゴチャゴチャと映し込みたくない。ならば真っ白い壁とかを映し込めばいいんです。つまり白ホリに置いて、ホリの部分に光をあてれば何もない白が映り込む。それが大げさなら、被写体の周囲を白いディフューザーで覆って、そのディフューザーを明るくしてあげればいい。

鏡面に何を映し込ませるか

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テーブルに置き、そのテーブル面を映り込ませた。テーブル面を明るくすれば、映り込みも明るく(白く)なる。
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黒い布をテーブルに敷く。黒い布はほとんど光を反射しないので、被写体表面は暗くなる。

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テーブル面の半分を黒、半分を白にすれば、被写体表面も2トーンになり、シルバーのシャープな感じが増す。


 そうすると、シルバーの被写体全体が白くなる。

 ただし、シルバーの被写体は、白いだけだとシルバーには見えません。写真表現でシルバーは、白と黒、ハイライトとシャドーの表現なんです。だから映り込みにも黒い部分、つまりシャドーを作る。

 黒を映し込めばいいんですね。

 そういうこと。鏡面の被写体の周囲に真っ黒いものを置けばそれが映る。厳密に言えば「黒が映る」というのは変ですね。ライティング的には、「黒が映る」ということは何も映り込んでいない、つまり光があたっていない状態です。銀のシャープさを強調するなら、黒い紙やボードなどで、被写体にあたる光を部分的にカットする。つまり黒を映し込むということは、光をカットするということですね。

白と黒で表現する

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冒頭の作例のバリエーション。被写体左右に明るい白い面を作り、センターをシャドーにした。
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右側に黒ボードを立て、被写体右半分をシャドーにする。ページトップの作例とページ作例と逆のパターン。

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テーブル面の半分を黒、半分を白にすれば、被写体表面も2トーンになり、シルバーのシャープな感じが増す。


 白を映し込んでハイライトを作り、黒を映し込んでシャドーを作る。簡単ですね。

 いや話すのは簡単ですけど、曲面を持った被写体なんて、余計なものを映し込みたくなかったら、広い範囲を白で囲まなくてはいけない。被写体が大きくなるとセットも大きくなる。ポールやスタンドも隠す。かなり大変です。カメラなどがどうしても映り込んでしまう場合、セットで何とかするより、レタッチで後から消すくらいに考えた方が、撮影効率は良いかもしれません。


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ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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