
明るい白バックを作るため、背景にユポを垂らして、その後ろからアンブレラ2灯を照射。手前からは光をあてずに、逆光だけでグラスの透明感を出した。ポイントは両サイドに立てた黒いボード。背景全体が明るくなるため、このボードでグラスのサイドに回り込む光をカット。縁にシャドーラインを作り、シャープさと立体感を出している。
黒ボードを置かないで撮った場合、背景の光がグラス全面に入り、フラットな仕上がりになる。また部分的にグラスのエッジが背景に溶け込んでいる。
玉:玉内 編:編集部
玉 今回は黒でシャドーを締めることについて。特にスタジオでの商品撮影では、光を全体に回すライティングが多いでしょ。しかし光を回しすぎると、写真がフラットになるデメリットもある。そこで黒い紙や黒いボードを使って、被写体に陰影を作っていくことが、重要なライティングテクニックなのです。
編 具体的には?
玉 わかりやすいのが、陶器のような真っ白い被写体を白バックで仕上げたい場合。バックと被写体を、どちらも同じような明るさの白で描写しようとすると、被写体が背景に溶け込んでしまいますよね。そこで被写体の一部分をシャドーにするんです。最も基本的な方法は、被写体のシャドーにしたい側に、光を反射しない黒いものを置く。ハイライトとシャドーの違いはありますが、やり方としてはレフを置くのと同じですよね。レフが被写体に光を映し込んでいくとしたら、黒でシャドーを映し込んでいくような感じです。
黒いボードを立ててシャドーを締める

光が全体に回って、立体感が乏しい。
編 よく撮影現場では「黒締め」と呼ばれる技法ですね。
玉 画角に入らない位置に黒いケント紙などを置くこともあるし、大きな被写体では、黒いボードを立てることもある。白い壁のスタジオで、壁に反射した光が被写体に回り込むのを遮るため、大きな黒布を垂らすのも、広い意味では「黒締め」と言えるかな。また切り抜き用のカットでは、被写体のエッジラインをきれいに出すために、黒ケント紙を被写体の形に切り抜いて使ったりもしますよね。被写体のエッジにシャドーを入れることで、白い紙に印刷された時、見栄えがよくなる。
輪郭に沿って黒ペーパーで囲み、エッジにシャドーを入れる
ケント紙による黒締めがないと、立体感が乏しく、シャドーによるエッジがないため、メリハリが出ない。
玉 つまり被写体のシャドー部を強調することで、立体感やシャープさを出していくわけです。また、シャドー部をきちんと出すことで、ハイライトがより白く見えるということも、忘れてはいけません。
編 目の錯覚によるものですね。
玉 そう。数値的には階調を残したグレー気味の白でも、シャドーとの対比によって、より白さを感じさせるんです。前回のシルバーの被写体も、黒を入れることで、ハイライト部分がより明るく、光を反射しているように見えたでしょう?
編 「黒で締める」とは、単にライトをあてて、成り行きでシャドー部を作るのではなく、意図的、積極的に被写体にシャドーを作っていくことですね。
玉 正にその通り。写真を音楽に喩えると、ハイライト部が主旋律、光があたり被写体の色や形を見せます。一方、シャドー部はベース音。主旋律を引き立てて、輪郭を作る。また重さ、軽さといったイメージを醸し出す。ライティングは光と影のシンフォニーなのです。
編 今日は詩的ですねぇ。
玉 そのくらいシャドーの役割は重要なんです。だからライティングを組み立てる際にも、どこに光をあてて明るくするかを考えるだけではなく、どこをシャドーにするかを考えなくてはいけない。光をあてるだけで思い通りのシャドーができなければ、積極的にシャドーを作っていく必要があるのです。
基礎から始める、プロのためのスチルライフライティング
スチルライフのジャンルでも、特にプロの世界で「ブツ撮り」と呼ばれるスタジオでの商品撮影をメインに、ライティングの基礎から実践までを解説していきます。
定価2,730円(税込)
玉内公一 Kohichi Tamauchi
ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。
- 第28回 グレースケールをヒストグラムで見る
- 第27回 ヒストグラムとライティングの関係
- 第26回 最初に揃える照明機材は?
- 第25回 ライトパネル+アンブレラで撮影
- 第24回 スローシャッターを使った表現
- 第23回 アクリルボードを使った背景の演出
- 第22回 カラーフィルターで背景を作る
- 第21回 ライトで背景のグラデーションを作る
- 第20回 ボトルのエッジを光らせろ
- 第19回 天からのスポットで被写体を強調
- 第18回 透明感を演出するライトテーブル撮影
- 第17回 バンクライト2灯でクラムシェル
- 第16回 商品撮影に便利な「天トレ」セット
- 第15回 モーテンセンの5つのパターン
- 第14回 ポートレイトライティングの組み立て
- 第13回 ループ、スプリットそしてバタフライ
- 第12回 レンブラントライティングで撮るポートレイト
- 第11回 半逆光でモノがよく見える
- 第10回 透明物の透過光撮影と黒締め
- 第9回 入射光式露出測定と反射光式露出測定
- 第8回 黒でシャドーを締める
- 第7回 鏡面の被写体を撮る
- 第6回 柔らかい光 硬い光
- 第5回 明暗のグラデーションを作る
- 第4回 円柱、円錐、球のライティングパターン
- 第3回 四角い箱のライティング
- 第2回 メインライトの位置を考える
- 第1回 フィルインライトは 天空の輝き?


















