玉ちゃんのライティング話

第8回 黒でシャドーを締める

解説 : 玉内公一

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明るい白バックを作るため、背景にユポを垂らして、その後ろからアンブレラ2灯を照射。手前からは光をあてずに、逆光だけでグラスの透明感を出した。ポイントは両サイドに立てた黒いボード。背景全体が明るくなるため、このボードでグラスのサイドに回り込む光をカット。縁にシャドーラインを作り、シャープさと立体感を出している。

img_tech_lightingstory08_03.jpg黒ボードを置かないで撮った場合、背景の光がグラス全面に入り、フラットな仕上がりになる。また部分的にグラスのエッジが背景に溶け込んでいる。


玉:玉内 編:編集部

 今回は黒でシャドーを締めることについて。特にスタジオでの商品撮影では、光を全体に回すライティングが多いでしょ。しかし光を回しすぎると、写真がフラットになるデメリットもある。そこで黒い紙や黒いボードを使って、被写体に陰影を作っていくことが、重要なライティングテクニックなのです。

 具体的には?

 わかりやすいのが、陶器のような真っ白い被写体を白バックで仕上げたい場合。バックと被写体を、どちらも同じような明るさの白で描写しようとすると、被写体が背景に溶け込んでしまいますよね。そこで被写体の一部分をシャドーにするんです。最も基本的な方法は、被写体のシャドーにしたい側に、光を反射しない黒いものを置く。ハイライトとシャドーの違いはありますが、やり方としてはレフを置くのと同じですよね。レフが被写体に光を映し込んでいくとしたら、黒でシャドーを映し込んでいくような感じです。

黒いボードを立ててシャドーを締める

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左からのアンブレラがメインライト。セット右側に大きな黒い布を垂らし、スタジオの壁、背景からの反射光を抑え、被写体右側に弱いシャドーを作る。さらにその手前に、黒ウールペーパーを貼ったボードを立て、シャドーを締める。ウールペーパーは光をほとんど反射せず、また被写体との位置も近いため、シャープなシャドーができるというわけだ。

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黒布、ウールペーパーがない状態。
光が全体に回って、立体感が乏しい。


 よく撮影現場では「黒締め」と呼ばれる技法ですね。

 画角に入らない位置に黒いケント紙などを置くこともあるし、大きな被写体では、黒いボードを立てることもある。白い壁のスタジオで、壁に反射した光が被写体に回り込むのを遮るため、大きな黒布を垂らすのも、広い意味では「黒締め」と言えるかな。また切り抜き用のカットでは、被写体のエッジラインをきれいに出すために、黒ケント紙を被写体の形に切り抜いて使ったりもしますよね。被写体のエッジにシャドーを入れることで、白い紙に印刷された時、見栄えがよくなる。

輪郭に沿って黒ペーパーで囲み、エッジにシャドーを入れる

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白いペーパーを敷いた台の上に、被写体を浮かせるようにセット。上からディフューズ越しの光をあてた切り抜きカット用撮影。被写体の輪郭に沿って、黒いケント紙を敷くことで、地の白ペーパーからの反射をなくし、縁にシャドーを入れる。

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手前にシャドーが入ることで、立体感が増す。さらにエッジが黒く締まることで、誌面に切り抜き掲載した時、紙白との分離感も出る。

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ケント紙による黒締めがないと、立体感が乏しく、シャドーによるエッジがないため、メリハリが出ない。


 つまり被写体のシャドー部を強調することで、立体感やシャープさを出していくわけです。また、シャドー部をきちんと出すことで、ハイライトがより白く見えるということも、忘れてはいけません。

 目の錯覚によるものですね。

 そう。数値的には階調を残したグレー気味の白でも、シャドーとの対比によって、より白さを感じさせるんです。前回のシルバーの被写体も、黒を入れることで、ハイライト部分がより明るく、光を反射しているように見えたでしょう?

 「黒で締める」とは、単にライトをあてて、成り行きでシャドー部を作るのではなく、意図的、積極的に被写体にシャドーを作っていくことですね。

 正にその通り。写真を音楽に喩えると、ハイライト部が主旋律、光があたり被写体の色や形を見せます。一方、シャドー部はベース音。主旋律を引き立てて、輪郭を作る。また重さ、軽さといったイメージを醸し出す。ライティングは光と影のシンフォニーなのです。

 今日は詩的ですねぇ。

 そのくらいシャドーの役割は重要なんです。だからライティングを組み立てる際にも、どこに光をあてて明るくするかを考えるだけではなく、どこをシャドーにするかを考えなくてはいけない。光をあてるだけで思い通りのシャドーができなければ、積極的にシャドーを作っていく必要があるのです。


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玉内公一 Kohichi Tamauchi

ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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