玉ちゃんのライティング話

第10回 透明物の透過光撮影と黒締め

解説 : 玉内公一

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玉:玉内 編:編集部

 今回は「透明な被写体を透明に見せる逆光」と「黒締め」の技法を使って、ペットボトルの「切り抜き用カット」を撮ってみました。

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メインは左サイドからのバンクライト1灯。バックに乳半アクリルボードを置き、その後ろからバックライトをあてる。乳半アクリルに黒ケント紙を貼ることで、被写体周囲にシャドーラインを作る。

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背後から逆光をあてるため、黒締めで被写体輪郭を強調する。今回は被写体と背景の距離が近いため、ケント紙を直接背景に貼ったが(写真左)、被写体の形に切り抜いたケント紙を、被写体と背景の間に置くことも多い(写真右)。


 雑誌やカタログ、広告では商品の切り抜きカットをよく使いますからね。

 まず切り抜きカットとは何かを説明しておくと、写真というのはフィルムでもデータでも、四角いものなのです。その四角い写真をそのまま雑誌のページなどに載せる場合は「角版」、周囲の余分な部分をマスクなどでカットして、目的の商品だけを見せるのが「切り抜き」です。

 知ってますよ、そんなこと。

 そっか「編集」ですものね。

 ……。

 さて、では透明なものが透明に見えるのはなぜですか?

 向こうが透けて見えるからでしょ。

 そう。これをライティング的に説明すれば、向こうにある背景も明るくて、その光が透明な被写体を透過して目に入ってくるからです。透明のボトルを撮る時、前方からの光をいくら強くしても、その光はボトルを透過するのだから、被写体は明るくならないですよね。もちろんガラス素材などは、光のあたり方で部分的に強い反射をするので、そこがハイライトになるけれど、全体的には暗く写ってしまう。

 なるほど。

 テーブルなどに透明な被写体を置いて撮る時は、前方からの光が背景やテーブル面にもあたり、それが反射してボトル内部を透過して透明に見えるのです。それで切り抜き用カットですが、ボトルだけを見せるわけですから、向こうに何か透けて見えるとおかしい。何もない白バックがよいわけです。そしてその白をいかに明るくするかがポイント。

背後から光が透過することで透明感が出る

透明なビーカーの撮影。被写体背後から光が入ることによって、被写体内部が明るくなり、透明感が出てくる。

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左斜め前からのメインライトのみで撮影。白バックでの撮影だが、背景に届く光が少ないため、背景、ビーカー内部がグレーになり、透明感が出ない。
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メインライトに加え、白バックに向けて手前斜め上から直接ライトをあてる。背景が明るくなったことで透明感が出てきたが、もう少し明るさが欲しい。
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乳半アクリルのバックの背後から、真逆光のライトを入れる。これならば、少ない光量でビーカー内部も明るくなり、クリアな透明感も表現できる。

 上のビーカーを使った作例を見ていただけばわかりますが、白バックでも手前からメインのみでは背景の光量が足りず、容器の中はグレーになってしまう。

 つまり背景の白バックに反射して逆光で入ってくる光が少ない。

 メインを強くすれば背景も明るくなるのですが、それだと被写体のラベルなどの不透明部分が露出オーバーになる。そこで白バックに対して直接、メインとは別に光をあてるか、背景に乳半アクリル板などを用い後ろから透過光を入れる。後者の方が少ない光量で明るい背景を作れるので一般的な方法ですね。部分的に飛ぶくらい明るい方が透明感が出ます。ただし問題もある。

 問題というと?

 強い逆光を入れるから、特に透明な被写体は輪郭のエッジが飛んでしまう。切り抜きカットとして使う場合、シャープで立体感のある仕上がりにならないんですね。

 そこで「黒締め」ですね。

被写体のエッジをシャドーで絞める(黒締め)

逆光で輪郭が曖昧になるため、ケント紙などで被写体エッジにシャドーラインを入れる。

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被写体の輪郭にシャドーライン入れることで、背景と被写体の境界がはっきりした。また黒が入ることでより透明感が強調される。
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部分拡大。背景との境界ができたことで切り抜き作業もやりやすくなる。
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黒締めを入れないと、輪郭があやふや。切り抜き写真として使った場合、紙の白と同化してメリハリのない仕上がりになる。

 そうです。黒ケント紙などを使い、被写体のエッジにシャドーの細いラインを作っていく。黒締めの方法は被写体の材質、形状、また背景との位置関係で色々。透過ライトをあてた背景そのものに黒ケント紙を貼って余分な光をカットしたり、被写体の後ろに型抜きした黒ケント紙をセットしたりします。要するに、背後からエッジに回り込む光をカットすればよい。エッジに入るシャドーラインを見ながら調整します。黒が入ることで被写体のエッジが明確になるだけでなく、写真にコントラストがつき、より透明感が強調されるんですね。


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ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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