玉ちゃんのライティング話

第18回 透明感を演出するライトテーブル撮影

解説 : 玉内公一

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小さなガラス容器に染料で着色した水を入れて撮影。ライトテーブルの透過光によって容器内部も、クリアかつ鮮やかに再現される。

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上の写真のセット。ガラス板+アクリルボードで撮影台を作る。撮影台の下は白い紙を敷き、周囲も白いボードで囲んだ。ライトを下に向けて照射するとバウンス効果で、アクリルボード面が均一に明るくなる。トップからバンクライト+ディフューズで光を入れている。トップの光量は、背景(ライトテーブル面)の約1段落ち。

玉:玉内 編:編集部

 以前、ガラス瓶やペットボトルなどは、背景自体を光らせて逆光で撮ると、透明感が出せると話しましたが(第10回 透明物の透過光撮影と黒締め)、それを斜め俯瞰のテーブルトップ撮影でやる方法を紹介します。

 その方法とは?

 撮影台、つまりテーブル面を光らせればいいんです。名付けて「ライトテーブル」撮影。

 そのまんまなネーミング…。

 ま、それ以外言いようがないわけで…。簡単に言ってしまえばポジを見る時に使っていたライトテーブル、ライトビュワーに被写体を置いて、斜め上、または俯瞰から撮るような感じです。実際、ビュワーを使ってもできるのですが、普通は撮影専用セットを組みます。

用意するのは透明なガラス板。面積は被写体、撮影画角に合わせてください。撮影スタジオでは大体、90×180cmくらいのものを用意していますね。それと同サイズの乳半アクリルボード。そしてテーブルの脚になるもの。

ライトテーブルのセッティング
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撮影用の脚、サイコロなどにガラス板を渡して、その上に乳半アクリルボードを置く。ライトはテーブルの下に仕込む。周囲を白く囲み、バウンスを利用すると光の拡散効果で、アクリル面を均等に明るくできる。リフレクターの直光をコントロールして、グラデーションをつけてもよい。

 脚は、サイコロ(30〜60cm角程度の木製の立方体)や馬(折り畳みの脚)など、いつも撮影で使うものでいいんですね。

 その脚にガラスを平行に渡して、その上にアクリルボードを置く。ガラスを下にするのは、アクリル板のたわみを防ぐためです。そしてテーブルの下にライトをセットします。広いテーブル面を均一に明るくしたいなら、複数のライトを使ってもいいですし、ベアバルブにして光を広く回してもいい。

テーブルの下に白い紙を敷いて、ライトを下に向けて照射。拡散したバウンス光を使う場合もあります。光を効率よく回すために、テーブルの下を白いボードで囲むとよいでしょう。

 ライトテーブルセットはどんな時に使うのですか?

 先ほども言いましたが、テーブルトップ撮影で被写体の透明感を出したい時。氷とウィスキーが入ったグラスを撮る時などですね。通常のセットで前方からの光だけで撮ると、グラスの内部が暗くなり透明感やウィスキーの色が上手く出ません。でも撮影台が光れば、その光がグラスに透過して透明感が出せるのです。

ライトテーブルで透過物を撮る
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ウィスキーの入ったグラスを撮影。フロントライトのみだと、背景(撮影台面)はグレーになり、グラス内部もすっきりとしない。ライトテーブルで下からの光を入れると、グラス内部、氷自体が発光しているような、独特の雰囲気に仕上がる。

ライトテーブルの光だけで撮ると逆光表現、被写体前面もきちんと見せたい場合は、フロントライトを入れます。被写体がグラスなどの反射物なので、フロントは天トレにしてもいいですね。

もちろん透明物じゃなくても、ライトテーブル撮影ならではの白バック撮影が可能です。

 と言うと?

 ライトテーブル撮影では、テーブル面が光るため、そこに置いた被写体の影が出ないんです。携帯電話などの撮影で、白い紙を敷いたテーブルに置いて斜め俯瞰から撮ると、被写体下に影が出てしまう。通常は被写体を直に置かずに、少し浮かせたりもするのですが、それでも影は消えません。一方、ライトテーブルなら無影撮影が可能。何もない空間に浮いたような浮遊感が出せます。

ライトテーブルで無影撮影
img_tech_lightingstory18_07.jpg斜め前方からのフロントライト1灯で撮影。被写体が適正露出になる光量だと、白いはずのアクリルボードがグレーになる。また、被写体の影がアクリルボードに映り込む。
img_tech_lightingstory18_08.jpgライトテーブルで下から弱めの光を入れた。フロントライトとの明るさのバランスは、ちょうど1:1ぐらい。被写体の影もかすかに残っている。

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下からの光を強め、ちょうど被写体のハイライト部分と同じ程度の明るさにした。背景に落ちる影がほぼなくなり、空中に浮いているような仕上がりとなる。

 でも白バックなら切り抜きにして、影をカットしても同じでしょう。

 白バックと切り抜きは違いますよ。テーブルを光らせても完全に飛ばさない白にすることは可能ですし、テーブル下に仕込んだライトを調整することでグラデーションを作ることもできる。たとえばライトにカラーフィルターをかければ、背景に色をつけることもできます。

その他、ライトテーブルはアイデア次第で色々なイメージが可能です。ガラス板、アクリルボードは、ライトテーブル以外でも、ブツ撮りにはよく使うので、用意しておいた方がいいですね。

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ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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