玉ちゃんのライティング話

第23回 アクリルボードを使った背景の演出

解説 : 玉内公一

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バックは乳半(乳白色半透明)アクリルボードを使い、カラーフィルター光を透過して、透明感のあるオレンジの背景を作った。被写体下には黒のアクリルボードを敷いて、被写体を映り込ませている。黒アクリルは、背景の色も映り込むので、濃いオレンジに仕上がっている。
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メインは左サイドからグリッドつきのリフレクター1灯。スポット気味に光を絞り、背景、被写体下の黒アクリルに光があたらないようにしている。背景は乳半アクリルボードの後ろから、オレンジのフィルターをつけたライトを照射。バーンドアをつけているが、これはフィルターをとめるためのもの。スポットの大きさは、乳半アクリルとライトの距離で調整。

玉:玉内 編:編集部

 前回と前々回、2回にわたって背景のライティングを解説してきましたが、いずれもペーパーによる背景でしたよね。そこで今回は、応用としてペーパーの代わりにアクリルボードを使ってみましょう。

 あれ? 背景については全2回という予定でしたよね。「第21回」でそう予告してますが…。

 特にブツ撮りでは、アクリルボードやメラミンボードの背景が、ペーパーや布より使われることも多いので、予定変更。基本的な考え方は前回、前々回で紹介した通りなのですが、アクリルやメラミンボードは、同じように光をあてても、仕上がりがペーパーとかなり違うし、半透明のアクリルは透過光を使った背景表現もできます。

 なるほど。乳半アクリルボードはディフューズ素材として使われますよね。メラミンボードと言うのは?

 アクリルもメラミンもボードの材質(樹脂)のこと。色も揃っていて、どちらも背景や撮影台に使います。メラミン製のボードはデコラ板とも呼ばれ、柄のあるものや表面にテクスチャ加工したものもありますが、ライティングとは少し話が違ってくるので、ここでは単色のボードについて考えてみます。

アクリルボードもメラミンボードも、ペーパーや布と違い表面が非常に滑らかです。これがまずポイントです。

 光を拡散せずに反射する。

 マット仕上げのものもあるのですが、基本はそうですよね。光をあててグラデーションを作る際、アクリルやメラニンボードだと、光があたった所は、より強いハイライトになります。

 ペーパーや布と違って表面に布目、紙目がないのも重要ですね。

 その通りです。ペーパーや布の背景は、明るいハイライト部分ならテクスチャも飛んでしまうのですが、中間からシャドーにかけては紙目、布目が強調される。もちろんそれを活かした表現もあるのですが、どうしても中間調のざらつきは避けられない。これがブツ撮りのセットのサイズとも大きく関係するんです。

 それはなぜ?

 ある小物をシンプルな白からグレーのグラデーションバックで撮るとしましょう。白やグレーの背景紙を用意して、背景用ライトをあてる場合、紙目を出したくないので、被写体と背景の距離をとって背景をぼかす。必然的にセットは大きくなりますよね。これが白のアクリルボードだと紙目を気にする必要がない。

 つまり被写体と背景が近くても大丈夫ということですね。

 さらに、半透明の乳半アクリルボードの後ろから透過光をあてるようにすれば、被写体と背景との間にライトを置く必要がないので、さらにセットは小さくできる。しかも乳半アクリルを透過した光は拡散して滲むので、奥行き感のある背景ができるわけです。

カラーフィルターを使った背景ライティングでも、ペーパーか乳半アクリルか、また乳半アクリルでも、透過か直射かで、仕上がりが変わってきます。

 その比較が下の作例ですね。

ペーパーとアクリルボードのグラデーション表現の違い

❶白ペーパーバック

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❷乳半アクリルバック

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❸乳半アクリルバック/
透過光

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img_tech_lightingstory23_07.jpg❶は白ペーパーに対し、ブルーフィルターをつけた背景用ライトを、手前下から照射。❷は同様のライト位置で、背景を乳半アクリルボードにしたもの。ホットスポットが白く抜け、周辺のブルーも残っている。❸は乳半アクリルの後ろからライトをあてた透過光バック。ライト位置を調整することで、ホットスポットとブルーの面積を調整できる。

 ペーパーの場合、バックを明るめにしようとすると、どうしても青が薄くなってしまうけれど、反射率の高いアクリルなら、ホットスポットは白く、かつ青の色も出せる。

さらに透過光の場合、ライト位置が自由にできるし、透過の際の光の拡散で、柔らかな中間のブルーもきれいに出せました。

また斜め俯瞰で撮る時、被写体下にシャープな映り込みを作るのも、アクリルやメラミンボードを使った背景演出のひとつですね。この場合も、ライト位置によって光の反射をコントロールすることで、グラデーションを作ることができます。

アクリルボードの上に被写体を置く

❶黒アクリル
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❷白アクリル
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❸黒アクリル/グラデーション
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❹赤アクリル/グラデーション
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img_tech_lightingstory23_12.jpgアクリルボードに被写体を置き、斜め俯瞰45度から撮影。ライトはグリッドつきリフレクター1灯をディフューザー越しに照射(天トレ)。
❶❷は被写体真上にライトをセット。アクリルボードにあたったライトの光は真上に反射し、レンズには入ってこない。そのため黒、白の色を飛ばさずに映り込みができた。
❸❹は、アクリルボードに反射した光がレンズに入るように、ライトを後ろ斜め45度の位置にセット。黒や赤のボードでも、ホットスポット部分が白くなり、グラデーションができた。またカラーボードを使った場合、被写体の影部分にそのボードの色がのってくるのが特徴。

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ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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