玉ちゃんのライティング話

第24回 スローシャッターを使った表現

解説 : 玉内公一

玉:玉内 編:編集部

 今回はストロボとスローシャッターの合わせ技を紹介しましょう。

まず、おさらいから。電球や蛍光灯などの「定常光」に対し、ストロボの閃光時間はほんの一瞬。光量や設定によっても違ってきますが、閃光時間は大体1/250~1/1500秒ぐらい。大光量をその短い時間に照射するわけです。そして通常のスタジオ撮影では、カメラのシャッター速度を1/60~1/125秒に固定して使います。

 基本的にシャッター速度は、ストロボの閃光時間より長い。

 そうです。言うまでもなくストロボ撮影の場合、シャッターの開いている瞬間を記録するのではなく、暗いスタジオで、ストロボの光によって被写体が照らされている瞬間を記録するということですね。だから、高速で動くものの動きを止めたい場合、シャッター速度を早くするのではなく、閃光時間を短くするのがスタジオでのストロボ撮影の基本です。

ただし、一瞬で撮影に必要な光量が得られるストロボだからこそ、苦手な撮影がある。

 たとえば? 

 被写体自体が発光しているものや、動きのあるものをブラしたい時ですね。

 ストロボの強い光をあてれば被写体の光は消えてしまうし、瞬間光だから被写体の動きも止まってしまう。

 通常、そういう時は、定常光で撮るのですが、シャッター速度の調整とストロボの合わせ技で色々な表現ができます。下の作例は、キャンドルと水飲み鳥を撮影。こうしたセットの中にある光源や、インテリア撮影での部屋の明かりなどを「地明かり」なんて呼びますね。

キャンドルの明かりを活かしつつ動く被写体を撮る

img_tech_lightingstory24_01.jpg 水飲み鳥が首を振っている状態で撮影。キャンドル光の他、右奥の木の人形にはタングステンライトが弱くあたっている。絞りはf11。シャッター速度を1/1.5秒にして、水飲み鳥に対し手前からストロボ光(後幕シンクロ)をあてた。多少のブレは出るが、全体の雰囲気を壊さずに水飲み鳥を描写された。ストロボは小型のものを用い、キャンドルの方に行く光を黒ケント紙でカットした。


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通常のテーブルトップ撮影のように、バンクストロボ1灯で全体に光を回して撮影。絞りf11、シャッター速度1/125秒。水飲み鳥はブレずに写るが、雰囲気が出ない。
img_tech_lightingstory24_03.jpg
キャンドルと木の人形にあたるタングステン光のみで撮影。絞りf5.6、シャッター速度1秒。全体の雰囲気は出ているが、メインの水飲み鳥はブレてしまう。


 水飲み鳥とはまた懐かしい。首を振るんですよね。最近見かけないですが。

 ネットでようやく見つけました。

さて、このセット、ノンストロボで撮ると、キャンドルの明かりだけでは全体に光が回らないし、水飲み鳥がブレてしまう。かといってストロボでライティングすると、キャンドルの明かりが出ない。

そこでカメラのシャッター速度を1/1.5秒にして、水飲み鳥にはストロボをあててみました。要するにスローシャッターで地明かりを写し、ストロボで水飲み鳥の動きを止めています。シャッター速度による地明かりの露光量と、ストロボ光量のバランスがポイントです。

これと同じような手法は、電光表示のある機械の撮影にも使われますね。

 メカなどのブツ撮りで、普通にライティングすると、LEDなどのインディケーター部分の発光色が写らない。

 その場合、ライティングは変えなくてもOK。単にシャッター速度を遅くすれば、発光部がきちんと写ります。大体1/2秒~1秒ぐらいかな。この時、スタジオの明かりや、ストロボのモデリングは消しておくこと。

ストロボ+スローシャッターで、インディケーターの発光を写す

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DJ用CDプレイヤーを撮影。ライトは左斜め後ろからのバンクストロボ1灯。左の写真は絞りf11、シャッター速度1/60秒の通常ストロボ撮影。操作パネルのディテールは出ているが、インディケーターの光が見えない。写真右は、ライト位置、絞りはそのままで、シャッター速度を1/1.5秒に設定。全体のイメージは変わらず、インディケーターの発光も写し込まれる。
スローシャッターになるため、スタジオ内は暗くし、モデリングランプもオフにしておくこと。


 連続して動く被写体のブレの中に静止した像を写し込みたい場合は、定常光+ストロボ+スローシャッターを使います。ブレる被写体の一瞬だけを、ストロボの光で止めるわけです。

スローシャッターが閉じる瞬間にストロボを同調させれば、静止した被写体に残像が軌跡のように重なり、スピード感がある写真が撮れます。

 いわゆる後幕シンクロですね。

定常光+ストロボ+スローシャッターで、軌跡を写す

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定常光下でミニカーを走らせて撮影。斜め後ろにバンクストロボ1灯。絞りf11、シャッター速度1/4秒。ストロボが発光した瞬間だけ被写体が静止して見える。通常のシンクロ設定では、シャッターが開いた時にストロボがシンクロするので、写真左のように静止→ブレとなり、ミニカーがバックしているように見える。
写真右は後幕シンクロ設定。シャッターが閉じる直前にストロボがシンクロするため、ブレ→静止となり、ミニカーの動きが伝わる。


 高機能なジェネレーターだと、ディレイ機能で発光のタイミングを調整できるから、どのタイミングで被写体の静止像を入れるかも自由自在です。

また、ストロボの連続発光機能(マルチ発光)を使うと、科学写真によくある分解写真が撮れたりもするわけです。これもストロボの瞬間閃光+スローシャッター合わせ技の代表的な例ですね。

マルチ発光+スローシャッターで、分解写真を撮る

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シャッター速度を1秒に設定。ストロボのマルチ発光機能を使い、分解写真を撮影した。左が1秒間に3回発光、右が1秒間に6回発光。
マルチ発光の場合、動いている部分に露出を合わせると、静止している部分は何度も露光され、露出オーバーになる。この被写体の場合は、足の部分。ストロボの光量調整である程度、バランスを取り、最終的にPhotoshopで各部の明るさを調整して仕上げている。


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ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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