玉ちゃんのライティング話

第28回 グレースケールをヒストグラムで見る

解説 : 玉内公一

玉:玉内 編:編集部

 デジタル編の第2回目。ライティングとヒストグラムの関係をもう少し細かく見ていきましょう。

 前回はヒストグラムの形で、各色の要素がどの明るさで分布するのか、シャドー、ハイライトが飛んでいないか、潰れていないかを見ましたが。

 今回はグレースケールを使って、適正光量とは何かを解説したいと思います。下の作例は、適正露光での撮影です。

img_tech_lightingstory28_01.jpg左からディフューザー越しの1灯ライティング。右側はレフで起こしている。適正露光での撮影。

 被写体の組み合わせが大胆ですね。

 菓子はお馴染みm&m’sのチョコ、グレースケールもお馴染み、コダックのスケールです。普通、スケールの上に被写体がこぼれている状況なんてないのですが…。

 前々から聞きたかったのですが、このスケール上のA、M、Bというのは、どんな意味を持っているのですか?

 Mが反射率18%のグレー、つまり中間グレーです。そこから1/3EV刻みでグレーの明るさが変わっていきます。Mから明るい方に7コマ、つまり2と1/3EVプラスの点をA、またMから暗い方に9コマ、つまり3EVマイナスの点をBとしています。AからBまでは5と1/3EVの明るさの差があるということですね。

 その数値にはどんな意味が?

img_tech_lightingstory28_02.jpg
上の写真のグレースケール部分。説明のため左右を逆にしている。

img_tech_lightingstory28_03.jpg
グレースケール部分のヒストグラム。1/3EVの幅で山ができているが、ヒストグラム左側は山が重なっている。つまりB点以下の黒は、撮影段階で階調が分離されていないわけだが、実際に印刷やプリントでも人間の目には階調として認識されないので問題ない。

img_tech_lightingstory28_04.jpg
B点、M点、A点のみのヒストグラム表示。M点がヒストグラムのセンターに来ている。RGB数値もほぼ119。適正露光である。B点、A点は余裕を持ってヒストグラム内に納まっている。数値的にはB点30前後、A点225前後。

 5と1/3EVとは印刷や写真プリントなどの反射物で人間の目が識別できるグラデーションの幅ということです。このスケールを基準に、写真の最も明るいところ、最も暗いところを設定すれば、写真としての階調表現は保証される…と、その昔、コダックが決めたわけです。もちろん印刷が悪くてグラデーションが再現されないというのは別の話ですが。

では上の写真のグレースケールの部分だけを選択して、ヒストグラム表示してみましょう。

 1/3EVのステップだからヒストグラムも均等間隔に山が並ぶ。

 多少、ムラが出るので、山も幅がありますが、そういうことです。

次にA点、M点、B点だけを抜き出してみます。M点の山がヒストグラムのほぼ中央にできれば、「中間グレーが正しい濃さで撮影された」つまり適正露光となるわけです。数値的にはRGB値で119の明るさです。これはPhotoshopの情報パレットなどで、M点の数値を計るとわかるのですが、中間グレーであるM点が、RGB値119で写っていれば適正露光というわけですね。

 ちょっと待ってください。デジタルの明るさって0〜255の階調ですよね。その中間値なら128じゃないんですか?

 その説明をすると長くなるのだけど、色再現のベースとなる色空間の白から黒の変化がリニアな直線ではないんですね。それがいわゆるガンマカーブというものなのですが、そのカーブに従うと119という値が中間点になる。とにかくまず「119」と憶えておいてください。

 消防署みたい。

 まぁ、適正露光とはあくまでグレースケールを基準にした明るさの指針に過ぎません。表現的に問題がないなら、適正露光にこだわる必要はないし、適正露光を取りたい場合も、厳密に119でなくても、大体110〜130の範囲にM点が納まっていればOKでしょう。

 ところでA点、B点に関しては。

 極論を言えばM点がセンターにあればA点、B点はどこにあっても適正露光です。A点、B点をどこに設定するかは、ライティング表現の話になるわけですね。たとえば白を完全に飛ばしたければ、A点をヒストグラムの外にすればいい。

 メインの作例だと、A点、B点とも少し内側寄り、つまり完全な白、黒にはなってませんよね。

 完全な白がRGB値では255、完全な黒が0なのに対し、作例ではA点225、B点30ぐらいにしています。これはデジタル撮影のコツというか、ポイントみたいなもので、撮影段階では白側、黒側にある程度余裕を持っておくことで、Photoshopなどでの後工程の自由度が増すわけです。

M点のRGB値を確認しながらライティングを調整してみよう

img_tech_lightingstory28_05.jpg
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作例は、テーブルの上に被写体を置き、右からディフューザー越しにストロボ1灯。左にレフ板を置いている。適正露光の他、ストロボの出力を変えて、アンダー、オーバーの作例も撮ってみた。
それぞれのA、M、B点の動きを見てみよう。

アンダー
img_tech_lightingstory28_07a.jpg
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img_tech_lightingstory28_07b.jpg
アンダーの場合、M点の山はヒストグラムの左に寄ってくる。この写真ではRGB値74。シャドー部のB点はヒストグラムに残っている。ライト光量を上げることで、M点、A点は右に移動する。
適正
img_tech_lightingstory28_08a.jpg
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img_tech_lightingstory28_08b.jpg
適正露光で撮影されたカット。M点のRGB値は119〜120で、ヒストグラムの中央に山ができている。B点、A点もヒストグラム内に納まっている。

オーバー
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img_tech_lightingstory28_09b.jpg

オーバーの画像。M点がかなり右寄りに位置し(RGB値199〜200)、A点はヒストグラムから外れている(RGB値255以上)。ピンポン玉のハイライト部分は、グラデーションのない白飛び状態だ。

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ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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