玉ちゃんのライティング話

第33回 段階露光したカットをデジタル合成

解説 : 玉内公一

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玉:玉内 編:編集部

 デジタル撮影ならではと言うか、デジタル撮影だからこそ簡単にできるというテーマを用意しました。

 それは?

 ものすごく輝度差がある被写体の撮影です。作例として透明な白熱電球と小物を一緒に撮る「お題」を用意しました。

このセットで電球を発光させつつ、鉢植えをシャドーにせず、グリーンの色もきれいに見せたい。ただし写真全体としては電球の明かりで照らされている雰囲気は残す。さらに電球の内で発光するフィラメントの形も、ある程度見せていくには? というのが今回のテーマです。

段階露光した3枚の写真を合成した写真

img_tech_lightingstory33_01.jpg 画面に白熱電球を置いたテーブルトップ撮影。段階露光した写真をPhotoshopプラグインソフト「HDR Efex Pro」で1枚に合わせて仕上げた。非常に輝度差のあるセッティングだが、電球の透明感、発光感、電球で照らされた小物のコントラストの強い影は活かしつつ、鉢植えの植物もきちんと見せることができた。仕上げにヴィネット処理で周辺を落としている。

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上の写真のヒストグラム。アンダー気味だが、電球のハイライト部分までヒストグラム内に収まっている。

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実際には部屋を真っ暗にして撮影。フラッドランプを天井バウンスさせ、全体に弱いフィルインライトを入れている。段階露光合成をするため、カメラ、三脚はしっかり固定する。被写界深度を変えないように、絞りF11固定、シャッター速度で段階露光している。

 明るく灯った電球のフィラメントを写す撮影なんて、実際あるんですか?

 電球メーカーの広告とか、ないとは言えない。ま、あくまで作例ですから。

 白熱電球の明かりだけで撮ると、鉢植えの手前や植物が潰れてしまう。そこを明るくするには、普通、フィルインライトを入れますよね。

 フィルインライトを入れるのは正解。今回のセットで白熱電球を発光させると、電球内部の一番明るいところと、鉢植えの手前の影になるところの光量差は7段ぐらいでしょうか。それを補うために、フラッドランプ(拡散タイプの定常光)を天井にバウンスさせ、フィルインにしています。

それでそれなりに撮れるのですが、鉢植えや植物の色を出そうとしてフィルインを強くしていくと、全体が明るくフラットになってしまい、白熱電球で照らされている雰囲気がなくなってしまいます。

しかもやはり白熱電球の中は明るすぎて、フィラメントを見せることはできない。フィラメントを写すためにアンダーで撮ると、フィルインが効いてこない。

 白熱電球の明るさを弱めるのは?

 それだとフィラメントは見えてくるけれど、今度は白熱電球の光によってできる貝殻などの影が弱くなる。

実際にデジタル処理を考えずに一発で撮ろうと思ったら、調光機で白熱電球の明るさを加減しつつ、フィルインを調整して、ちょうどいいバランスを探したり、あとは多重露光という手もあるんですが…。

 非常に面倒ですね。それがデジタルだと簡単にできる?

 簡単ですよ。段階露光をして必要な部分のみ合成すればいいわけですから。しかも画像合成といっても、最近はほぼ自動で処理ができてしまう。

-2EVのカット

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白熱電球の内部、フィラメントの形を出すためのカット。ほとんどの部分がアンダーになり潰れてしまうが、電球内部は適度の明るさで描写できた。ヒストグラム右端ある小さな点が、電球ハイライト部分。

適正露光のカット

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電球の台座あたりが適正露光になるように撮影。フィラメント部分は飛んでいるが、電球のガラス、手前の影は実際に目で見えている状態に近い。フィルインは弱めなので、この露光量ではほとんど効いていない。f11・1/10秒

+2EVのカット

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白熱電球、またその強い光があたる周辺は飛んでいるが、鉢植えはフィルインが効いてちょうど適正ぐらいの明るさになった。ただし画面全体にもフィルインが効いてしまい、昼間の電球のような雰囲気。f11・1/2秒

 一番簡単なのはPhotoshopのレイヤーの自動合成ですね。段階露光した写真をPhotoshopのレイヤーで重ねて、レイヤーの自動合成をかけるだけ。ただ自動のため仕上がりに不満がないわけではない。Photoshopのレイヤーの自動合成はオーバーになった部分、アンダーになった部分を、単に、ヒストグラムに納まるように合成するというのかな。だから結果、それなりにまとまるけれど、細かい調整ができない。

一番上の作例は「HDR Efex Pro」というPhotoshopプラグインを使ってみました。使用した写真はマイナス2アンダーと適正露光とプラス2オーバーの写真3枚。ピント位置がずれるので、絞りではなく、シャッタースピードで明るさを変えています。

このソフトでは、段階露光した写真のどの明るさの部分を使うかをある程度コントロールできるのですが、マイナス2アンダーの写真を使いフィラメントの形を出しつつ、鉢植えの手前などはプラス2オーバーの写真が合成してます。全体の雰囲気を壊さないようにフィルインはかなり弱めに入れていますから、プラス2段くらいにしないと効いてきません。写真仕上げにヴィネット効果で周辺を落としています。

 しかしなんか騙されたような。合成すれば何だってできる。

 確かにライティングというよりも、デジタル合成技術ですね。でも同アングルカットのレイヤー合成というのは、これまでのライティングの考え方を大きく変えたのも事実です。今回、紹介した段階露光だけでなく、クルマなどの大きな被写体ではホイール、ボディ、車内といったパーツごとにライティングして撮った写真を、1枚のカットにまとめたりします。特に商品撮影などのスチルライフでは、ライティングを考える際、レイヤー合成も選択肢として用意しておくと、撮影の効率だけでなく、表現の幅も広がると思いますよ。

HDR Efex Pro で3枚の写真を合成

img_tech_lightingstory33_10.jpg 合成にはNik HDR Efex ProというPhotoshopプラグインを使用。

img_tech_lightingstory33_11.jpg 合成と言っても、スライダをコントロールするだけ。左のカットは一番上の作例より明るめで、しかもフィラメントがある程度見えるという方向で仕上げてみた。

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玉内公一 Kohichi Tamauchi

ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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