玉ちゃんのライティング話

第34回 デジタルカメラの落とし穴

解説 : 玉内公一

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玉:玉内 編:編集部

 デジタル撮影の弱点について、お話ししましょう。

 弱点? デジタルカメラが苦手な被写体やライティングということですか?

 弱点というと大げさですが「落とし穴」みたいな感じかな。最初期のデジタルカメラは、それこそ「コントラストが高いライティングはできない」だとか「シャドーはノイズが出る」だとか、撮影やライティングにも、非常に気を遣ったのですが、最近の一眼レフタイプはそうした欠点も解消され、問題なく撮れるようになった。

 ほんとに昔のデジタルカメラは「あれはダメ」「これはNG」という感じで、弱点があることが前提で撮影していましたよね。

 でも、今はそういうこともほとんどなくなった。だからこそ、たまに問題にぶつかると「なんでこうなるの?」という「落とし穴」になるんですね。原因がわからないまま、そこで悩んでしまうと、作業が進まなくなる。そこはもう「そういうものだ」と割り切って、次の手を考えた方が早い。幾つかそんな例を挙げてみましょう。

デジタルカメラはビビットな赤の再現が苦手?

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撮影したままの画像
グレーバランスをとり、適正露光で撮影しているが、本来の赤よりもイエローが強く出て、朱色に見える。カメラの機種にもよるが、特に彩度の高い赤はデジタルカメラの苦手な色と言われている。
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Photoshopで補正した実物に近い色味
Photoshopで色味を補正して、実物の色に近づけた。このような彩度の高い赤は、カメラの性能上、再現されないこともあるので、その時はPhotoshopで調整してしまった方が効率がよい。

 まずは赤の発色。カメラにもよりますが、デジタルカメラはビビットな赤が苦手。マゼンタ系の赤がY(イエロー)に転ぶ傾向にあります。

 それはなぜですか?

 多くのデジタルカメラのセンサーのカラーフィルターが「RGGB」配列になっているのはご存じですよね。RとBの情報はGの半分しか取り込めない。600万画素のカメラだとしたら、Gが300万画素、RとBが150万画素と考えてもいい。

つまりRはもともと情報量が少ないんです。しかも赤の光はノイズの原因にもなるので、Rのフィルターは若干、色を制限しているというか…あえて波長をカットしている。

その結果、ビビットな赤がくすんで写る傾向になります。これはいくらグレーバランスをきちんととって撮影しても、カメラ本来の傾向だから仕方ないんですね。

 ではどうすれば?

 色が出ないことを悩んで時間を潰すより、色の出にくい被写体は、Photoshopでの補正を前提に考えた方が楽。

エメラルドグリーンの再現

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ビン手前と背景の乳半アクリルの後ろから、シアンのフィルターをつけたライトをあてた。写真だけを見ると、ほぼ適正かややアンダー目のライティングだが、ヒストグラムをみると、Bチャンネルが飛んでいるのがわかる。

 同様にエメラルドグリーンも苦手と言われますね。作例では透明のビンにシアン系のフィルターをつけたライトをあてて撮っていますが、見た目は適正でしょ?

 そうですね。青基調だから、若干ローキーに見えるくらい。

 でもヒストグラムを見ると青のハイライトが切れているでしょう。この写真をそのまま使うなら問題はないのですが、ちょっといじると、途端にデータが崩れ出す。

 なるほど。だけどフィルターでこんなブルーにした写真なんて、滅多に撮らないですよね。

 たとえばブルーのカラーフィルターを使って背景にグラデーションを作る時、見た目はちょうどよい明るさの背景ができても、このようにブルーがデータ的に飛んでいたら、補正をかける際、気をつけないと、直ぐに階調が破綻してしまう。結果、背景のグラデーションにトーンジャンプが起きるのです。

高感度撮影はJPEGの方がノイズが少ない場合がある

弱いライトをあてて、ISO1250設定で撮影。RAWとJPEGの同時記録でそれぞれの仕上がりを比較してみた。

RAWデータ撮影、現像処理

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RAWで撮影した画像は仕上がりがシャープで階調も出ているが、拡大すると(写真右)、シャドー部にカラーノイズ(RGB色のざらつき)や、背景のグレーにエンボスをかけたようなノイズが出てくる。

JPEGで撮影

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JPEG撮影の画像は、カメラ内部で補正処理が自動で行なわれる。処理がかかっているためRAWに比べ細部が滲んだように見えるが、その分、シャドー部のカラーノイズ、背景のざらつきは気にならない。

 最後にRAW撮影が絶対ではないという例を挙げましょう。たとえば最近のデジタルカメラは高感度も得意ですが、その際、RAWをそのまま現像すると、シャドーノイズやカラーノイズが出て、画像が汚くなることがあります。現像時にノイズ処理をすれば多少は軽減されますが、同じ条件でJPEG撮影した方が、結果、仕上がりが良いということがあります。

 高品質を目指すならRAWで撮っておくというのが通例ですが。

 そこが陥りやすい「落とし穴」の訳です。JPEGはカメラ内部の演算で画像処理をします。自動処理だから画質が悪いと思われているかもしれませんが、カメラ内部での処理は、むしろそのカメラに特化している訳ですから、高感度撮影など画像自体を無理に補正するような場合、自然に仕上がることも多いのです。

今回、挙げた例は撮影状況や使用カメラによって結果が違ってきますが、いくらカメラの性能がアップしたからと言って、万能ではない。自分の使っているカメラの特性を理解して、特に色の転ぶ傾向とか、ノイズが出やすい条件などを把握しておくとよいと思います。

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玉内公一 Kohichi Tamauchi

ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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