2021年11月26日
「商品写真」の目的は、商品の形、色、材質、さらにはクオリティやイメージを正しく伝えること。その目的に合わせて最適なレンズやライティングが決まります。
この連載では「商品撮影」を基本から考えます。
撮影で一番大切なことは、距離とアングルです。商品の見え方や表情は、距離を変えることで変わります。
アングルが5cm上下/左右に動くことで、厚みや長さの印象が違ってきます。
レンズ(の焦点距離)を決めてから、カメラと被写体の距離を決めるのではなく、いくつかのレンズで距離を変えて同じフレーミングで撮影してみます。その結果を比較して表現に最適な焦点距離を選ぶこと、それがレンズの決め方です。
近い距離で撮影すれば、商品の手前と奥で前後関係ができて、遠近感がつきます。遠近感で迫力を出すのは良いのですが、商品が歪んで形が正しく見えないのは避けましょう。遠くから撮影すれば、遠近感は弱まりゆがみにくくなります。
商品の形が伝わるのはどちらの写真ですか?
〜カメラと被写体の距離の違い〜
近距離からの撮影はパース感で迫力は出るが、正しい形が伝わらない。
× 近い距離から撮影
○ 遠い距離からズームで撮影
ボリューム感、立体感が伝わる写真は?
〜アングルの違い〜
正方形に近い形の箱型。右側面を広く見せるアングルでは、長さ(横幅)が短く感じられる。
× 幅が短く見える
× 薄く見える
○ ボリュームを感じる
セールスポイントはどこ?
同じ商品配置でも、カメラと被写体の距離で伝えるポイントが変わる。
カメラを近づけて撮影 60cm
遠近感を強調して、商品の中でも白がメイン(一番売りたい色)であることを伝える写真。
カメラを離して撮影 120cm
ズームで撮影。同じ大きさで同列に見せて、カラーバリエーションを伝える写真。
正面から円筒形の丸みを出すには?
この商品の場合は、カメラとの距離を離してズームで撮影すると、丸みが感じられない。丸みを見せるために、近い距離で斜め上からのアングルで撮るとパースがついてしまう。近い距離で商品の高さの中心から撮ることで丸さを表現できる。
× カメラと被写体の距離が遠いと、丸みが出ない。
× 斜め俯瞰から撮ると、上が大きく下が小さくなり、正確な形が伝わらない。
○ 近距離から商品の高さの中心で撮ることで、上下の丸さを出す。
○ 遠距離撮影でも、商品を傾けて底面を見せ、上下で丸さを表現できる。
黒川隆広 くろかわ・たかひろ
amanaにて、30年間、商品撮影を中心に活動。2016年退社後、アライアンス社員として連携。現在は大手ECサイト商品撮影講座講師、写真の学校特別講師他、セミナー、イベントなどで写真の学びの場を提供。プロからアマチュアまで、また企業から個人向けまで、プライベートレッスンも受け付けています。
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