黒川隆広「商品撮影」基礎レッスン

Lesson 03 ゆがみと遠近感をコントロールする

写真・解説:黒川隆広

「商品写真」の目的は、商品の形、色、材質、さらにはクオリティやイメージを正しく伝えること。その目的に合わせて最適なレンズやライティングが決まります。
この連載では「商品撮影」を基本から考えます。

商品撮影に多い斜め俯瞰のアングルでは、撮影距離(使用するレンズ)によって、商品にパースがついてゆがみが生じてしまうことに注意しなくてはなりません。

その際、同じフレーミングでも、カメラと被写体との距離を離して、ズームレンズで撮ることでゆがみを軽減する(パース感を少なくする)といった方法がよく行なわれます。

被写体のサイズやスタジオの広さなどのために、カメラと被写体との距離が取れず、どうしてもパースがついてしまう場合は、撮影後、Photoshopなどのアプリケーションでゆがみを補正します。

変形までがフォトグラファーの仕事です。

また近距離からワイドレンズを使い、画面センターに撮らないことでパース感や迫力をコントロールすることもできます。


商品の形が伝わるのは
どちらの写真ですか?

背の高い商品の撮影の場合、斜め上からの撮影ではパースがついてしまう。 カメラと被写体の距離を離してもゆがみが軽減できない場合、 後処理でパースを補正する。

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左:撮影したままのデータ。右:パース補正後


自然に見える
パース補正のコツ

パースがついてゆがんでしまった場合、Photoshopなどの変形ツールで補正する。 その際、垂直線(被写体両サイドの縦のライン)を完全な平行にしてしまうと、 目の錯覚により下部が広がった不自然な形に見てしまう (もともとが斜め上からのアングルのため)。
垂直線をややすぼめつつ、自然な形に見えるように補正する。


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集合写真のゆがみ

近い距離でやや上から撮影した場合、上部が大きく、下部が小さく写る。 同じアングル、同じフレーミングで遠距離からズーム撮影をすれば、ゆがみは軽減する。
ズーム・望遠レンズがない場合、被写体からの距離をとったまま画面下部で必要なスペースに合わせて被写体を小さく撮影、トリミングで対応する。

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× 近距離からの撮影で被写体それぞれにパースがついてしまった。

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離れた位置から同アングルでズーム撮影をすることでパースを軽減。


フレームのどこに被写体を置くかで
商品の見え方を変える

被写体をフレームの中心に置いて撮影することが基本。 しかし撮影時にカメラの振りを変えて、ゆがみをなくしたり強調したりすることも 必要なテクニック。<>br /最終的にPhotoshopで必要な部分をトリミングをして仕上げる。

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ワイドレンズでセンターで撮影。

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画面左寄せで被写体を短く変形。

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画面右寄せでパースを強調。被写体を長く見せる。


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斜め上から、紙コップをフレームセンターで撮影。パース感が強調される。

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レンズをやや上に振り、紙コップをフレーム下で撮影。パース感が減少する。


料理写真で
お皿がゆがんでしまう時のアイデア

お皿を並べた料理の集合写真は、近い距離で撮影した方が「目の前に料理が並び、すぐにでも食べたい」という気持ちを表現できる。
しかし周辺部が広角レンズで引き延ばされ、左右にお皿が垂れて(延びている)見えることがある。その場合、撮影の時、お皿の下に厚紙を入れて、画面内側に持ち上げるようにセットしてゆがみを弱める。

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広角近距離からの斜め俯瞰撮影。皿が左右に延びて見える。

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皿の下(赤丸部分)に厚紙をいれ、皿を内側に起こして撮影をすると、ゆがみが軽減され自然な形に見える。液体が入っているカップなどは、液面が斜めに見えないように傾きは少なめに。




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黒川隆広 くろかわ・たかひろ


amanaにて、30年間、商品撮影を中心に活動。2016年退社後、アライアンス社員として連携。現在は大手ECサイト商品撮影講座講師、写真の学校特別講師他、セミナー、イベントなどで写真の学びの場を提供。プロからアマチュアまで、また企業から個人向けまで、プライベートレッスンも受け付けています。


kuro1868@icloud.com
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