黒川隆広「商品撮影」基礎レッスン

Lesson 06 1灯のバウンス ライトを極める

写真・解説:黒川隆広

「商品写真」の目的は、商品の形、色、材質、さらにはクオリティやイメージを正しく伝えること。その目的に合わせて最適なレンズやライティングが決まります。
この連載では「商品撮影」を基本から考えます。

ストロボは、どんなにディフューズしても直接打てば光は硬いように思います。

今回は、1灯のライトを白壁にバウンスして撮影をしてみます。

白壁へのバウンスライトは窓から差し込む光と同じです。

ライトと壁の距離で光の硬さをコントロールできます。

ライトを天井に多く向ければ影は短くなり、灯数を増やせば大きな窓にもなります。

自然光とほぼ同じで、影の長さや光の硬さを変えながら撮影できるのが、バウンスライトです。

一方向からの光で広い範囲に均一に光があたり、影も柔らかく、本や絵の複写、料理の撮影にもおすすめです。


ライトと壁との距離で
光をコントロールする

バウンスライトはライトとバウンスする壁までの距離を変えることで光の硬さが変わる。
壁からライトを遠ざければ光は柔らかくなり、近づければ硬くなる。ここでは高さ2m、壁からの距離1m、2mで撮り比べてみた。
1灯だと箱から落ちる影が左右に広がるが、気になる場合には、両脇にバウンスライトを足すことで影がまっすぐになり、一方向からの光で、レフ板を使わずとも、綺麗な影を作ることができる。
手前からレフ板で影を起こすのは、レフ板から近い部分の影は明るくなり、ライト(壁にバウンスした光)に近い影は明るくならず、違和感を感じるからだ。

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左:ライトを壁に近づける(壁との距離1m)と壁にバウンスする範囲が狭くなる。自然光に例えると、光が差し込む窓が小さい状態。被写体にあたる光が硬くなり、被写体の陰はややシャープになる。
右:ライトを壁から離すとバウンスする範囲も広くなる。大きな窓辺の光と同じ状態。被写体にあたる光は柔らかくなり、影も柔らかくなる。


ライトの高さで
光をコントロールする

ライトの高さの違いでも光の硬さが変わる。パッケージの硬さも変わる。
被写体にあたる光の角度も違ってくるため、背景の状態や背景(被写体を置いたペーパー)の明るさも変わる。
作例はライトと壁との距離2m。ライトの高さ被写体から1m、0m(被写体と同じ高さ)、 の撮り分け。微妙な違いだが、商品撮影では大切なことだ。


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左:通常のライトの高さ。背景(地)の左上が明るく、柔らかな光の中で立体感を感じる表現。
右:被写体と同じ高さのライト。背景はやや暗く均一になり、影がやさしくかなり柔らかい光になる。


白い被写体を白い背景で撮る

厚みのない白い被写体を白い背景(地)で撮る場合、(白いページの本の複写など) 被写体の色よりやや黄色い紙を背景にすることで同化しにくくなる。
やや黄色い背景は、撮影するとそれほど黄色く感じない。
スチレンボードなどを被写体下に仕込み、5mmほど背景から浮かすだけでも光のあたり方が変わり背景との分離感が出る。

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被写体と背景を
同一平面にしない

バウンスライトで撮影する際、被写体と背景を同一平面にしないだけでも、 光のバランスを変えることができる。たとえば被写体を白い背景(地)に置いて、 壁バウンスで撮影すると背景と被写体の光が同じなので、背景は暗くなる(写真上)。
被写体をやや手前に起こすと被写体が暗くなるので、適正露出にすれば背景が明るくなる(写真下)。

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右上からのバウンス光。被写体と背景(地)が同一平面なので、箱の中の商品に露出を合わせると、背景はグレーになってしまう。

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被写体をやや手前に起こすことで背景と被写体の光の差ができる。被写体に露出を合わせると、背景は白くなる。




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黒川隆広 くろかわ・たかひろ


amanaにて、30年間、商品撮影を中心に活動。2016年退社後、アライアンス社員として連携。現在は大手ECサイト商品撮影講座講師、写真の学校特別講師他、セミナー、イベントなどで写真の学びの場を提供。プロからアマチュアまで、また企業から個人向けまで、プライベートレッスンも受け付けています。


kuro1868@icloud.com
LINE ID:kuro390714



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