2022年01月18日
「商品写真」の目的は、商品の形、色、材質、さらにはクオリティやイメージを正しく伝えること。その目的に合わせて最適なレンズやライティングが決まります。
この連載では「商品撮影」を基本から考えます。
撮色の基準をどのように考えますか? カメラは正しい色に撮るわけではありません。
光の色は時間・天気・場所・ライトでも変わります。
正確な色味を求められる場合はグレースケールを一緒に撮影して、グレーが色転びしていないことを色の基準としますが、それが必ずしも「良い商品写真」とイコールにならないことを理解しましょう。
物には誰もがイメージとして持っている好ましい色のトーンがあります。
同じ白いものでも、例えばパンであればやや黄色にした方が美味しく見えますし、 Yシャツであれば少し青みががった方が清潔感が出ます。
そのため正確なホワイトバランスで撮影した写真でも、最終的な仕上げとしては、違和感を持たない程度に、商品それぞれにイメージに近いトーンに「色転び」させます。
どのくらい「色転び」させるかは、フォトグラファーのセンスによりますが、それは最終的にフォトグラファーの個性にも繋がります。
どちらが美味しそうですか?
~「温かさ」や「美味しさ」~
黄色方向にトーンを調整することで「温かさ」や「美味しさ」が強調される。たとえばパンの作例でも、朝の光=青い光を優先するのではなく美味しそうに見える色に調整する。
左は青みがかった朝の光のイメージした写真。
右が黄色方向に補正して、パンの香ばしさを強調した写真。
左は赤味があり美味しそうだが
右はやや彩度を落として高級感を表現。
わずかの色の差だが、フォトグラファーの個性が出る部分。
どちらのシャツを選びますか?
~清潔感や冷たさ~
青みのあるのトーンは「清潔感」や「冷たさ」「新鮮さ」が強調される。通常であれば、白いポロシャツならばニュートラルなグレーに、お米なら黄色くしがちだが、商品イメージで色を作ることが大切。
青方向のトーンは、清潔感、爽やかさを伝えられる。
米本来の色は左だが青みのあるトーンで、新鮮さを出した。
写真協力:河内工房
写真を見る環境を考慮する
フォトグラファーがカラーマネージメントされたモニターで正しい色味にしても写真の色は見るディバイスごとに変わる。どのディバイスを基準にするのかは、写真を扱う媒体で検討したい。
(作例はそれぞれのディバイスの色傾向をシミュレーションしたイメージ)
PC:彩度が低い
型の古いスマートフォン:やや黄色い
最新のスマートフォン:彩度が高い
黒川隆広 くろかわ・たかひろ
amanaにて、30年間、商品撮影を中心に活動。2016年退社後、アライアンス社員として連携。現在は大手ECサイト商品撮影講座講師、写真の学校特別講師他、セミナー、イベントなどで写真の学びの場を提供。プロからアマチュアまで、また企業から個人向けまで、プライベートレッスンも受け付けています。
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