2020年03月12日
シンプルだけど多機能、Orbital2
1年ほど前のこと、左手が急に痛くなり腫れてきました。どうやらコンピュータ操作の達人が罹るという「腱鞘炎」のようです。筆者は多くの人と同様に、右手でマウスを持って、左手でキーボードのショートカットキーを押すスタイルですが、きっと我流のフィンガーポジションでショートカットを連打していたのが原因でしょう。「これで自分もエキスパートの仲間入りか?」なんて喜んではいられません。その時はショートカットが登録可能なマウスを購入して、よく使用するキーコンビネーションをマウスに割り当てて使用しているうちに、痛みがなくなりました。
しかしコンピュータ作業は、ショートカットを適切に設定して、ルーティン動作を簡略化することが効率化のポイントです。そこでネットで見つけた「新世代の入力デバイス」、BRAIN MAGIC Inc.のOrbital2(オービタルツー)を試してみることにしました。
Orbital2(オービタルツー)
シンプルでスマートなデザイン。実際に触ってみて、その質感、スイッチの感触、回転時のクリック感、重さ、確実にスイッチが入っているという反応の良さに、機械としての完成度の高さが感じられます。「これまで使ってきたポインティングデバイスやコントローラーとはモノが違うぞ!」というのが第一印象。
Adobeのクリエイティブ系ソフトはもちろん、ショートカットキーが設定されているほとんどのソフトウェアに対応するとのこと。本体周囲の発光部はフルカラーLEDライトで、使用ソフトごとに発光色を設定できる。
「倒す」「回す」「押す」の動作でアプリケーションをコントロール
PCとの接続はUSB、右手はマウスやペンタブレットを持ち、Orbital2は左手で操作するという形。基本操作は「オービタルエンジン」という名称のジョイスティック型レバーを「倒す」「回す」「押す」というものです。
使い慣れないデバイスですし、設定が盛りだくさんなので、最初はとっつきにくい印象を受けましたが、試しにPremiere Pro CC用の推奨プロファイル(プリセット)をダウンロードして使ってみて、ようやくジョイスティックとダイヤルの関係が理解できました。Orbital2を試される方は、最初は少しだけ我慢することをお勧めします。その後はバラ色の画像処理、動画編集が待っています。
オービタルエンジンの設定画面
現在、AdobeのPremiere Pro、Photoshop、Lightroomで自分の作業に合ったOrbital 2のセッティングを模索中。ここではフォトグラファーに一番馴染みのあるPhotoshopの設定を掲載した。まだまだ完璧とは言えないが、「オービタルエンジン」にはパラメータ変更とブラシのサイズ変更、履歴を戻る/進む、拡大、縮小などの作業に割り当てている。 ちなみにPremiere Proの方の設定は、ほぼサイトからダウンロードしたプリセット設定をそのまま使用。上下左右4方向のみの設定で、シーケンスを行ったり来たり、拡大したり縮小したりがメインだが、これだけでも作業がかなり効率化された。
筆者が使ってみたプリセットは「数値の上下/タイムラインをシャトルする/コマ送りをする/シーケンスの伸縮をする」という4つの項目を、レバーを上下左右に倒して決定し、「ダイヤルを回して動作させる」というものでしたが、それだけで作業は驚くほど効率化、同時にストレスが大きく軽減されたのです。
さらにレバーを「押す」ことで、その機能に関連した動作を実行することもできます。たとえば数値変更をダイヤルで行なっている時に、「tab」キーを割り当てておけば、数値ボックスを巡回可能。「オービタルエンジン」では倒す方向で最大8つの機能(ショートカット)を登録できるので、「倒す」「回す」「押す」の組み合わせで300以上のショートカット動作が登録できるということです。
Orbital2にはもう一つ「フラットリング」と呼ばれるインターフェイスも用意されています。「オービタルエンジン」周囲のリングがスイッチになっていて、ここにも8つのショートカットを割り当てられます。8つも登録したらどれがどれだかわからなくなるという場合(実際、筆者がそうでした)、作業中の画面に登録項目をフリックメニューで表示させる機能もあり、そこから使いたい項目を選んで実行もできます。
フラットリングの設定画面
こちらはPhotoshopでの「フラットリング」の設定。「オービタルエンジン」とは別に、「フラットリング」の8方向のスイッチに特定のキーコンビネーションを割り当てる。ポップアップに設定しておくと、作業中の画面に8方向のフリックメニューを表示させたり、プルダウンのメニューを表示することも可能。
フリックメニューはマウスポインタの近くに表示されるので、マウスで素早く項目を選択できる。
Orbital2の3番目の機能が「グロウリング」です。フルカラーLEDでアプリケーションごとに発光色を切り替えることが可能。今、どのアプリケーションで動作しているのかが一目瞭然です。筆者はPhotoshopをブルー、Premiere Proを紫、Lightroomを暗いブルーグレーに設定。そうです、Adobe 社のアイコンの色をそのまま採用しています。
今回、紹介したのは基本機能のみですが、実は筆者自身、未だに使いこなせている気はしません。定型化できる一連の処理を「プログラムマクロ」として記憶/実行させる機能や、10個までのショートカットキーをローテーションで呼び出す方法、もったいないけれど単にマウスのように使用する機能なども用意されています。Orbital2は自分の作業環境に合わせてカスタマイズすることで、進化していくデバイスなのです。筆者はPhotoshopの作業でスクリプトを多用しているので、それらをどのように組み込んでいくのか現在、悩み中です。
※この記事はコマーシャル・フォト2020年2月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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