2017年09月11日
パナソニック Lumix GH5の3回目。今回はGH5に搭載されたAF関連の機能を紹介しながら、一眼ムービーをAFで撮ることについて考えてみたいと思います。
過去の記事スチルフォトグラファーのためのデジタル一眼レフ動画撮影ガイド/
Panasonic LUMIX GH5①
Lumix GH5の動画撮影機能をさらに検証する/
Panasonic LUMIX GH5②
AFカスタム設定
この連載でも何度か触れてきましたが、本来写真撮影に特化してきたカメラのAFは、動画撮影には使えないというのが筆者の持論でした。フォーカスポイント移動の際も、AFが素早く動けば、静止画ではシャッターチャンスを逃しませんが、動画の場合、もっとゆっくりと動くフォーカス表現をしたい時もあるでしょう。被写体にフォーカスを合わせ続けるAF-C(コンティニュアスAF)も、あまり敏感に反応すると、常にフォーカスポイントを探して前後したり、少しでも動くと再フォーカス動作を繰り返す 動画では見苦しい画面になってしまいます。
そこで重要になるのが、動画のためのAF設定。現在、多くのカメラでは、動画撮影に切り変えた時点で合焦速度をやや遅くする設定になっているようですが、ソニー、キヤノンの最新カメラでは、さらにAFの感度や駆動速度を細かく設定できます。そしてパナソニックも、GH5でついに多機能な動画AF設定が搭載されました。
GH5のAFカスタム設定は、0を基準にAF駆動速度が±5の11段階、AF追従感度が±3の7段階、かなり細かく調整が可能です。AF駆動速度を遅くすると「フォローフォーカス」「徐々にぼけていく、あるいは徐々にピントが合っていく」といった表現が可能になります。またAF追従感度を「粘る」に設定しておくと、雑踏の中で特定の動く人物にフォーカスし続ける時、被写体が何かに遮られたり、画面からアウトして起こる「意図しない焦点の移動」も制御できます。
さらにGH5では、秒間480コマという高速なAF処理に加え、パナソニック独自のDFD(空間認識技術)で直線的にフォーカスを移動、コントラストAFで精度を上げるという合わせ技を駆使し、被写体に対する食いつきが良くなり、ピントを合わせ続ける精度が向上しました。
動画のAFカスタム設定
ジョイスティック
また注目の新機能として、「ジョイスティック」を採用。このジョイスティックを上下左右に操作して、必要な場所にフォーカスポイントを素早く移動させることが可能です。ファインダーを覗いている時、ちょうど右手親指の位置にスティックが来るので、写真撮影でかなり重宝しますが、ファインダーを覗かず背面液晶でモニターする場合は、スクリーンタッチによるフォーカスポイント選択との併用もできます(このジョイスティックはAFポイント設定以外の機能を割り当てることも可能)。
ジョイスティックでフォーカスポイントを動かす
GH5背面には、新たにジョイスティックが設けられた。ダイレクトフォーカス機能を割り当てることで、ジョイスティックを操作して、フォーカスポイントを縦、横に移動可能(斜め移動はできない)。GH4でも、背面右下のコントロールダイヤルで同様のことはできたが、ジョイスティック操作の方が圧倒的に使いやすい。右手でグリップを握った状態で、親指がジョイスティックにかかるので、ファインダーを覗きながらでも、フォーカスポイントを操作できる。
背面液晶。右上の四角がフォーカスポイント
ソニーの最新機α9にも「マルチセレクター」という名前でこれと近いコントロールが搭載されていますが、従来のカメラ発想ではない まるでゲームコントローラーのように画面上のフォーカスポイントを動かすアイデアを、パナソニックとソニーがほぼ同時期につけてきたのは、とても面白いと感じます。
フォーカストランジション
AFを補助する機能として、これまでビデオ専用機に搭載されていた「フォーカストランジション」が追加されました。あらかじめ指定しておいた任意の3点を撮影時に選ぶことで、そこにフォーカスが送られます。フォーカス駆動速度も5段階でコントロールできるので、マニュアルでは難しい「滑らかで一定速度のフォーカス移動」や、インタビュー撮影で「フォーカスで話者を高速で切り変える」などのテクニックが可能。こちらに歩いて向かってくる人物と、フォーカスの移動する時間を計って同調させれば「素晴らしく見事なフォローフォーカス」だって可能です。
むろんGH5といえども完璧ではなく、ロストしたり迷うシーンは見受けられますが、もう「動画撮影にAFは使えない」とは言っていられません。専任フォーカスマンのいないワンマンオペレーションでも、これらの機能を組み合わせ、使いこなすことでフォーカスの動きを使った動画特有の表現が、実戦レベルで可能になったのです。
これは便利!フォーカストランジション
フォ-カストランジションは、あらかじめフォーカスを合わせるポイント(3点まで)をプリセットしておき、撮影中、背面液晶のポジションボタン(POS1~3)をタッチすると、そこにフォーカスが送られる。
フォーカスのトランジション(移動)速度
フォーカスのトランジション(移動)速度は、SL<L<M<H<SHの5段階。設定したポイントを何度も行き来でき、ポイントの移動によるAFの動きも滑らかで自然。商品撮影のイメージムービーなどには実用的に使える機能だ。
【作 例】
※この記事はコマーシャル・フォト2017年8月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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- 第26回 NECのPAシリーズ、マスターモニタ化計画
- 第25回 シネマカメラBMPCCのRAWデータの実力
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- 第23回 話題のBlackmagic Pocket Cinema Cameraを使ってみた
- 第22回 ミニマル動画のワークフロー「アフレコ編」
- 第21回 ミニマル動画のワークフロー「編集編」
- 第20回 ミニマル動画のワークフロー「撮影編」
- 第19回 ミニマル動画のワークフロー「打ち合わせ、機材選択編」
- 第18回 LUMIX GH3は、想像以上に「撮れる」カメラ
- 第17回 一眼レフの足りない部分を補完するカメラ「LUMIX FZ200」
- 第16回 フレームレートとシャッタースピードの関係
- 第15回 一眼ムービーの撮影時の画質設定は?
- 第14回 SSD搭載でMacBook Proをメインマシン化計画
- 第13回 Xicato社の屋内照明用LEDを撮影に使いたい
- 第12回 Lightroomを使ってカラコレ
- 第11回 動画のバックアップはどうしていますか?
- 第10回 ビットレートを制するものは動画出力を制する!
- 第9回 画像の書き出し設定は目的によって使い分ける
- 第8回 ニコンD4を動画撮影で使ってみた
- 第7回 アンブレラを使った動画撮影の「Light Modify」を考える
- 第6回 動画撮影に適した光源とライティングを考える
- 第5回 デジタルカメラのためのオーディオインターフェイス「DC-R302」
- 第4回 未知の世界...音声、音楽、効果音
- 第3回 ムービー撮影ならではの単焦点レンズにこだわる
- 第2回 ゼロから覚えるのなら、「Final Cut Pro X」だ!
- 第1回 難しく考えず、スチル撮影の延長からスタート