2020年12月03日
ドッキングステーションでフル装備状態になったMacBook Air
弊社の経理スタッフがリモートワークをするため、ヤフオクで散々探して2018年ものの中古を購入したのだが、USキーボードだったため、スタッフから「これでは仕事にならない」と却下され、放置されていたMacBook Air。内蔵SSDのアプリを最小限に絞り、Final Cut Pro X、Lightroom も、Photoshop CCも複雑なレイヤー構成にしない限り、そこそこ使えるようになった。
さらにドッキングステーションCalDigit TS3 Plusを介し、Windows機と共用の外部ディスプレイ、テンキー付きキーボードとマウス、社内LAN、バックアップ用RAID SSDディスク2TB(読み書き約800Mbps)などを「Thunderbolt 3」ケーブル1本で接続し、機能拡張をする。
これまでは撮影の仕事で「MacBook Air」を使おうと考えたことがなかった。ところがなぜか手元に低スペックのMacBook Air 2018が転がっている。これをなんとか仕事に使えないか? と思い立ったのが事の始まりでした。
まずはMacBook Air内蔵SSDのキャッシュスペースを確保
問題のMacBook Airは8GBのメモリー、内蔵SSDは256GB。内蔵SSDの換装ができないため、本体に入れるのはシステムと必要最小限のアプリだけにして、約170GBのキャッシュ空間を確保。Final Cut Pro X、Lightroomをロケで使用する場合は、基本的に撮影データの取り込みとセレクト、チェックのみ。Photoshopはとりあえず仕上げたデータのオープンしかしない。これならばビデオボードもあまり関係ないし、8GBのメモリーでもアプリ単体起動ならなんとかなりそうです。
MacBook Airには2018年型からThunderbolt 3の超高速なインターフェイスが搭載されています。そこで昨年制作をした900Mbpsオーバーの転送速度を誇るThunderbolt 3接続の2TBのSSDを、データ保管庫としてMacBook Airと一緒に持ち歩くことにしました。現場ではFinal Cut Pro Xで確認作業をするため、容量がかさむFinal CutのプロキシメディアもこのSSDに記録します。
これでMacBook Airでロケ時の動画、静止画取り込みをする環境ができました。しかしそのままではまだ充分な仕事はできません。ハブ(ドッキングステーション)に繋げて、外部ディスプレイ、イーサーネット、高速RAIDなどにも接続、機能拡張しようと考えました。
市場には非常に小さくて多くのインターフェイスを備えたハブがいくつも出回っています。「このサイズなら持ち歩ける」というものもあり、その中でも機能が多いものを購入したのですが、これが動かない。電力を消費するストレージなどを繋ぐと、あっという間に総消費電力を超えてしまい、メディアは認識しないわ、目玉焼きができそうなくらい熱を持つわと大騒ぎ。この手のハブはハンドリングできる電力がマシンだけでなく、つないだデバイスの全体で電源をシェアーしていることに気がつきました。
ドッキングステーション CalDigit TS3 Plus
全15ポート。前面にはよく使UHS-II(SDカードスロット)、5GbpsのUSB TypeA、TypeCポート。イヤホン、マイク端子は必要ないと思ったが、Zoomで遠隔撮影時に役に立った!
背面はThunderbolt 3×2、DisplayPort 1.2×1、USB 3.1 Type-A(Gen1-5Gbps)× 4、USB 3.1 Type-C(Gen2-10Gbps)×1、光デジタルオーディオ(S/PDIF)×1、ギガビットイーサネット×1を備える。電源アダプターは180WとMacBook Airの6倍。多くのポートを駆動させるにはこれだけの電力が必要だということだ。
価格は3万円前後と高めだが、電源アダプターとインテル認証の高品質Thunderbolt 3ケーブルが付属していることを考えると、結果的にそれほど高価ではないと思う。
その後も色々なハブを試したのですが、最終的に行き着いたのはCalDigit TS3 Plusドッキングステーションです。MacBook Air 2018との接続はThunderbolt 3。そして同じレベルのThunderbolt 3出力を1ポート持っています。DisplayPort 1.2× 1ポート、バックアップやサーバ接続にはUSB 3.1 Gen1-5Gbps と Gen2-10Gbps。SD 4.0 UHS-IIのカードリーダーも備え、ギガビットイーサネットでネットワークへの転送速度も高速。電源アダプターは180W出力で、全てに電源を供給してもへこたれない。ホストマシンに85W、さらに本体とそれに接続されたデバイスに95Wの電力を供給します。
ロケ用ハブ トランセンドHUB5CとUSB充電器 AUKEY Omnia PA-B3
ロケ用のハブとしてはトランセンドHUB5Cをセレクト。ディスプレイポートとイーサーネットポートはないのだが、コンパクトさを優先。UHS-I(microSD) UHS-II(SDカード)、Type-C(USB 3.1 Gen 2)、Type-C(充電専用最大60W Power Delivery)、Type-A(USB 3.1 Gen 1)×2の計6ポート。合わせてUSB-C/USB-Aポートを備えるAUKEY Omnia USB充電器PA-B3も導入。最大出力65W、二つの機器に電力を供給する場合、45Wと12Wに振り分けられるので、45Wをハブに渡して残りの12Wでスマホやカメラの充電も同時にできる優れもの。
ドッキングステーションはその性格上、「拠点において使用するもの」なので、とにかく帰宅時にケーブル1本でスタンバイできるのが魅力。外出、ロケの時に必要最小限の機能を追加するハブとして、コンパクトなトランセンドのTS-HUB5Cを導入。60Wパススルー充電が可能、前出の900MbpsのSSDに直結できるUSB 3.1 Gen 2のUSB Type-Cポートがあり、現場では絶対に必要なUHS-II対応のSDカードリーダーを備えています。
これでMacBook Air2018を普段の仕事使いにする準備が整いました。ロケだけでなく、ドッキングステーションによる拡張である程度のデスクワークもできます(と言っても事務所でのメイン作業はMacBook Pro 2013、作業の多い動画処理は自宅に置いてあるMOUSEのDAIV-NG7510E-1-S2ですが)。
自分が無知のままシステムを組み始めた筆者は、使えるハブを色々と試したりして、実のところ最終的に完成したシステムの1.6倍は投資するという羽目になってしまいましたが、この記事が同様のことを考えている皆様のお役に立てば幸いです。
※この記事はコマーシャル・フォト2020年11月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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