2017年06月16日
3月に発売となったパナソニックLUMIX GH5を使ってみました。4K 60p撮影、フルHDなら180p(6倍速)のスーパースローが長時間撮影可能。さらにオートフォーカスの性能向上や5軸手ブレ補正など新機種としての目玉的な特徴もありますが、GH4を日常の仕事で使っている筆者としては、まず気になったのが「デジタルカメラとしての基礎力」。基礎力と勝手に呼んでいるのですが、ダイナミックレンジ、高感度性能、色分離、再現する色彩の位置、解像感などのことです。
Panasonic LUMIX GH5
放熱を重視したためか、ボディはGH4と較べて一目でわかるほど大型化している。HDMIの受け口がAタイプとなり、しっかり固定されるようになったのは大歓迎。USBもタイプCで将来に大きな期待ができる。写真に写っているレンズは、カメラ装着がLUMIX G VARIO 12-60mm、左に立てているのがLEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm。LEICA DG VARIO-ELMARITは確かに高性能レンズだが、動画撮影ならばLUMIX G VARIOもなかなかいいレンズだ(2倍近くの価格の差でも、動画撮影ではその差に見合う画質差は感じられなかった)。センサーと演算の基礎力を見る
センサー有効画素数はGH4の1605万画素から2033万画素にアップしました。画像解像度が上がったことは静止画のカメラとしては評価点ですが、「フルHD:1920×1080pixel」「4K:3840×2160pixel」という2000万画素以下のフォーマットの動画では、この画素数アップはむしろピクセルピッチが細かくなってしまう つまり、ピクセル一つ分の情報が少なくなってしまうことで画質にどう影響するか、若干の不安がありました。
しかしGH5を使い込むうちに「色のり」や「立体感」を中心とした写真の「基礎力」が大きく向上し、その結果、動画カメラとしても「大きな階段を上った」と実感しました。
パナソニックの話によると、ベイヤー演算はこれまでの2倍近い面積から必要な情報を抽出しているとのこと。それが「色のり」や「立体感」に繋がったのでしょう。さらにセンサー自体の画素数が上がったことにより、GH4より大きい長辺5184ピクセルからダウンコンバートしてフルHDや4Kの動画を作っていること、ノイズを的確に取り除いたことも、解像感の向上に寄与しています。正直に言うと、もうGH4をあまり使いたくなくなってしまったほどです。
的確なノイズ処理は高感度性能にも大きく影響しています。ノイズと非ノイズを見分ける精度が向上したため、有害ノイズの選択的除去が可能になったと考えられます。これは静止画で顕著ですが、動画でもGH4では「実用的に使える限界」だと判断していたISO1600が、GH5ではポートレイト的な肌のシャドウ部分の質感を大事にした撮影であっても充分使えるレベルに到達しています。GH4では緊急避難的用途向きと感じていたISO3200も、実用的に使えるレベル。使い方によってはISO6400でも同様のことが言えると思います。
それに伴い、最高感度はISO12800まで設定可能になりました。たださすがにISO12800はコントラストもなく緊急避難的な使い方がメインでしょう。とは言っても個人的には、ISO3200という大きな壁を見事にクリアしてきたのは、非常にうれしい進化です。
大きくレベルアップしたGH5の4K動画
GH5には豊富な動画記録モード(記録画質の設定)が用意されているのも特徴です。上限では4K 60pを可能とし、これを撮影可能なミラーレス機は現時点では他に存在しません。さらにこの状態でバッテリーとカードの容量が続く限り(AC電源を繋ぐとさらに効果的)撮影可能。こんな一眼タイプのデジタルカメラは何処の世界にもないのです。
フルHDでは180p(24fpsで再生すると7.5倍、30fpsで6倍)というスローモーション動画が可能で、こちらも時間の制限はなし。現状の仕事では4K 60p撮影よりも、このフルHD 180pを使う機会が多いかもしれません。
さらにカメラ内で4.2.2.10bit記録ができるのも大きな魅力。編集時のハンドリング、色彩処理を安心して行なうことができます。ただし先に触れた4K 60p、フルHD 180pなどの内部記録は8bitまで。HDMI端子から4.2.2.10bit出力が可能なので、ATOMOS社のSHOGUN INFERNOやNINJA INFERNOなどを繋ぐとProRes 422HQでの記録できます。また夏のバージョンアップでは4K 30p、4.2.2.10bit 400Mbps ALL-Iという内部記録も可能になります。
GH5とGH4の4K撮影の比較
GH5 4K 60p、ProRes422/10bit撮影
GH4 GH4 4K 30p、4.2.0/8bit 撮影(編集後60p書き出し)
※この記事はコマーシャル・フォト2017年6月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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