2020年09月10日
筆者はパナソニック、ニコン、ソニーといったカメラを動画/スチル撮影、星空のタイムラプスなど状況に応じて使い分けています。動画撮影業務では汎用性や手ブレ防止などの機能、導入コスト面も含めて、ズームレンズを選択することが多いのですが、写真好き、カメラ好きとしては過酷な撮影状況でも品質を担保可能な「スペシャルなレンズ」も気になるところ。スチルだけでなく動画でも「これを使ったらどんな絵が撮れるだろう」というレンズ。今回は以前から気になっていて、メーカーにお借りして使ってみたら、余計に欲しくなってしまった3本のレンズを紹介します。
NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct
まずは明るさと開放時の解像感、それに価格も? 突き抜けた「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」。ニコンZマウントレンズで、特徴は一にも二にもF値が明るいこと。明るいレンズは「開放時は幻想的な描写、絞ると解像感が高くなる」というものが多く、それも嫌いではありませんが、本レンズはf0.95から凄まじい解像感を発揮し、ボケ量とボケの形状がなだらかに連続するのも大きな特徴です。
58mm単焦点レンズとしては驚くほど大きくて重く(全長約153mm、質量2000g )、しかも高価格(市場価格で1,000,000円超え)なのですが、メーカーラインナップにこんなレンズを揃えようと考え、実行してしまったことには脱帽です。ただでさえ高感度特性が高いZ6につけると、暗闇でも普通に撮影できてしまうモンスターレンズ。欲しい!! けど今は買えない 。
昨年12月の夜7時30分頃、秋葉原の万世橋付近で撮影。被写体までの距離は6メートルほど。途中、人物から背景の街並みまでフォーカスを移動したが、絞り開放でも合焦している部分の解像感、ボケている部分の品質の高さ、ボケていくグラデーションが見事。しかも「こんな場所で無照明で絵になる撮影ができるんだ!」と心の底から感動した。
カメラ:ニコンZ6 ムービー撮影 f0.95 ISO100 1/50s ProRessRAW
SIGMA Art 14mm F1.8 DG HSM
ソニーEマウント用レンズで気になるのは、メーカー純正ではないのですが「SIGMA Art 14mm F1.8 DG HSM」 (各社マウントあり)。35mmフルサイズをカバーして、焦点距離14mm(対角線画角114.2度)という超広角レンズでありながら、F1.8と驚くほど明るいレンズです。おそらく世界中を探しても、同じ焦点距離付近でこれだけの明るさを実現しているレンズは他にないでしょう。いったいこのレンズは何のために開発されたのか、メーカーに伺ったところ、「普通の広角レンズでは撮影不可能な環境での撮影を実現させることも念頭に置いている」、中でも「星景、夜景撮影を見据えて作った」とのことでした。
確かに「人間の視覚を超える画角の広さ」を持ちながら「絞り開放で実用になる解像感とシャープさを超広角の周辺部まで実現」し、「広角レンズに多い流れたようなボケ方をしない」という特徴のレンズです。超広角系の撮影では、中心部が解像していれば周辺部はさほど解像力を必要としないシーンも多いのですが、明るいF値を使用しながら広角の隅々まできちんと解像することを求められるシーンも必ずあるはず。そんなリクエストに本気で応えてくれたレンズなのです。これも欲しい!
夜の8時過ぎの東京駅。超広角レンズにありがちな歪みは全く見られない。画面隅のビル群の窓明かりも歪まず、滲まず。そしてやはりこのレンズの得意ジャンルと言えば広角での夜空撮影。
カメラ:ソニーα7R IV ムービー撮影 f1.8 ISO200 1/25s
こちらの作例は、館山に行き銀河をタイムラプス撮影したもの。駐車場の照明がややレンズに入ってしまったが、レンズの明るさのおかげでISO6400で星が流れない8秒露光ができ、銀河をしっかりと写してくれた。
カメラ:ソニーα7R IV タイムラプス f1.8 ISO6400 8s
LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm/F1.7 ASPH.
最後は筆者が業務の動画撮影でメイン機として使うことが多いパナソニックマイクロフォーサーズ用のレンズ「LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH.」。初めて手にした時、見た目の大きさの割にあまりに軽いことにびっくりしました。
大きいと言っても、35mm換算で20mm、24mm、28mm、35mm、50mmという5本分(40mmもカウントするなら6本分)のF1.7レンズをまとめて持っていると考えると、このサイズも決して大きくはないと思えます。超広角から標準をカバーしていることだけでも非常に魅力的ですが、ズーム全域でF1.7固定という明るさを実現しているレンズは、おそらく世界広しといえども唯一の存在だと言えます。
このレンズのスペシャルな点は、(言葉は矛盾しますが)全てのジャンルが得意という汎用性です。天体を含む風景から室内、夕暮れ、日中を問わないスナップ、標準域を使用したポートレイトまでカバーします。事実お借りしている間は、ほぼずっとこのレンズを使っていました。まずは、どうしても欲しい1本ということになります。
作例は夜の10時過ぎ、あたりは街灯に照らされているところしか見えない状況。高感度特性のよいGH5sにつけていることもありISO12800で充分使用に耐えられる画像を得ることができた。撮影途中でズーミングしているが、動画撮影で20mmから50mmの画角が自由になれば、あとは望遠ズーム1本あればなんでも撮れてしまいそう。とにかく持ちやすく、使いやすい。即実戦に投入して使いたい1本。
カメラ:パナソニックLUMIX GH5s ムービー撮影 F1.7 ISO12800 1/30s
※この記事はコマーシャル・フォト2020年7月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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