2019年02月18日
Z 7とZマウントレンズ
フルサイズミラーレス機がニコンとキヤノンの2社から相次いで発売されました。「デジタルカメラの進化の最終形はミラーレスであるべき」という持論の筆者も、待ちに待ったカメラ。今回はニコンZシリーズから高画素タイプ、Z 7をテストすることができました。
Zシリーズの特徴は何と言っても新開発Zマウントの55ミリという径の大きさ。初見では「レンズもでかくなるし、ここまで大きくしなくても」と思ってしまったのですが、カメラとして進化するためには、入ってくる光の情報と質を上げることが何よりも大事なのです。
Z 7
4575万画素(有効画素)の裏面照射型ニコンFXフォーマットCMOSセンサーを搭載。約5.0段分の5軸手ぶれ補正搭載。感度はISO64~25600。動画撮影では4K UHD(3840×2160)/30pをフルフレームで撮影可能。Zマウントレンズ
レンズは現在、3本がラインナップされている。 写真左からNIKKOR Z 24-70mm f/4 S(カメラ装着)、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S。 ボディは小さくなったものの、「レンズがでかい」と考えていたが、レンズの性能がとてつもなく上がっており、それがAFにも、最終画質にも関わってくると知り、納得。「イメージセンサーの基本性能はD850を踏襲」と聞いていましたが、実際に解像度テストチャートをスチル撮影してみると、擬解像のノイズ感の少なさや色相分離の能力は、D850よりもブラッシュアップされていると感じました。これは大口径ZマウントとZマウントレンズ、処理回路の1年間の進化がもたらした効果です。
さらに全て電子化された接点は、情報をやり取りするスピードを高速化、大容量化。ピント移動やブレ量の検知、自動露出の演算スピードが格段に速くなり、特に1秒間に30コマもの画像を撮影し続ける動画においては、フレーム間ノイズリダクションなど、フレームごとの細かい補正をリアルタイムで行なうことで「静止画とほぼ同等の仕上がり」を実現しています。
ISO25600の高感度性能
いつものステップチャートを動画撮影してみると、ノイズの暴れをほとんど感じない、驚くべき高感度耐性が確認できました。センサーが同サイズで解像度が約半分=画素ピッチが大きいZ 6ではさらに期待できそうです。
フラットモードでISO200〜ISO25600(感度拡張+2)まで感度を上げながらステップチャートを撮影。シャドー部のノイズをチェックしてみた。
撮影してすぐに気づくのがAFの飛躍的進化。高速化、合焦精度、イメージセンサーのほぼ90%を越す合焦範囲、全てがこれまでの機種を上回っています。さらに「動画時のAF-C」の使い方がとてもスマート。AF-Cでは基本、常に顔認識と自動追尾が働く状態で動作し「今、ここでフォーカスを固定したい!」という時にAF-ONボタンを押して「AF-C」を停止。もう一度押して再開が可能です。
AF合焦速度・AF追従感度も細かく設定可能になり、動画でも自然なAFの動きを出せます。新しいZマウントレンズのAFはとても静かなので、同録でも動作音をほとんど気にしないで使っていけます。
AFに関して特筆すべきは、ハイスピード撮影でもこの精度を保ってAF-Cが作動すること。顔認識でも自動追尾でもしっかりと被写体に合焦していました。
Z マウントレンズのブリージングの検証
Zマウントレンズに関しては、ブリージングが少ない点も触れておかなくてはなりません。インナーフォーカスレンズ特有のブリージング(フォーカスを動かすと画角が変わる現象)は、スチル撮影ではあまり気になりませんが、動画では問題なのです。
AI AF NIKKOR 50mmはピント位置によって画角が変わり、遠景の窓ガラスの▼マークがズレていくのがわかる。手前の像にピントを持ってくると、(背景がぼけてわかりづらいが)左上の▼マークは画面から外れてしまう。一方、Zマウントレンズは、ピント位置を変えても▼マークの位置は変わらない。
ミラーレスカメラとして気になるEVFの見え方は、かなり一眼レフのファインダーに近い感覚で使えます。特にピントの視認性が上がり、動画撮影時にもファインダーで確認したくなります。
Z 7での実写
4Kタイムラプス撮影。レンズ:NIKKOR Z 35mm f/1.8 S 定評あるニコンのタイムラプス。サイレント撮影と組み合わせ低輝度測光限界を拡張して深夜から夜明けまで撮影。見事な映像を作ることができた。今回は4Kムービーだが、8Kムービーに仕上げることも可能。
ハイスピード撮影。FHD DX 120fps f4 1/200秒 ISOオート FLAT レンズ:NIKKOR Z 24-70mm f/4 S フルHD/120p撮影で鳩を追い飛び立つ瞬間。レンズは24-70mm。ズームレンズだが、 合焦している部分のメリハリの良さとボケている部分の美しさに「50mm単焦点レンズで撮ったのかしら?」と錯覚してしまうほど。
フルフレーム4K UHD(3840×2160)/30p、フルHD/120の動画撮影性能は、4K/60p撮影をすでに実現しているマイクロフォーサーズ機パナソニックGH5や、APS-Cサイズセンサーの富士フイルムX-T3と比べると見劣りするかもしれませんが、現状、フルサイズのセンサーでは、まだ4K/60pは難しいのでしょう。
記録メディアはXQDカードオンリー。ボディの小型化の兼ね合いで、カードスロットが1口しかないことはやや不満ですが、高速のXQDカード採用は今後4K/60p以上の動画記録に対応するための布石だと考えられます。
動画カメラとしては、まだまだ進化の余地を残したZシリーズ。フルサイズミラーレスとして、画質、操作性において写真と動画にハイブリッドで対応してきた機種だと確認できたのは嬉しい限りです。
※この記事はコマーシャル・フォト2019年1月号から転載しています。
この1冊で「ジンバルのすべて」が奥の奥までわかる一眼&ジンバル スピードマスター
ビデオSALON編集部 編集
2,000円+税
あのクリエイターが使っているレンズと作例を大公開ムービーのためのレンズ選びGUIDE BOOK
ビデオSALON編集部 編集
2,200円+税
ドローン空撮に関する各種情報を完全網羅! ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年
2,000円+税(電子書籍版1,900円+税)
鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
- クイックモーション設定で一味違う魅力的な映像を
- フジX-S10とXF50mmF1.0 R WRでポートレイト撮影
- 新時代到来を告げるM1チップ搭載MacBookの性能はいかに?
- 高速化を極めた結果、動画撮影機能が大幅アップ|ソニーα7S III
- 気軽に使えて高性能、エントリー機といって侮れないLumix G100
- MacBook Air 2018を仕事で使えるマシンにする
- ローリングシャッター歪みを計測する
- 光の色再現を評価する新基準TM-30-18を知っていますか?
- 使ってみたら絶対欲しくなるスペシャルなレンズたち
- 動画でも静止画でも「もう手放せない」Kaniフィルター
- 一眼ムービーもRAWで撮影できる時代が到来
- どう使いこなすか!? 注目のSIGMA fp
- 噂の新世代入力デバイス、Orbital2を使ってみた
- 動画撮影を本気で考えた一眼カメラ LUMIX S1H
- 高解像度静止画も動画も、という人にはお薦め、ソニーα7R IV
- 長時間勝負のタイムラプス撮影で愛用する機材
- 通話だけではもったいない。ソニー Xperia 1の凄い性能
- 4KハンディカムSONY FDR-AX700を今更ながら使ってみた
- ワンオペ撮影の強い味方となるか!? Roland V-02HD
- パナソニックのフルサイズミラーレスLUMIX S1/S1R
- ニコン Z 6で銀河のタイムラプスに挑戦
- 形はミラーレス一眼、中身はシネマカメラ、BMPCC4K(Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K)
- フルサイズミラーレス、キヤノンEOS Rの動画性能は如何に!?
- ニコン Z 7の大口径は動画性能アップにも繋がる
- 大きく進化した動画性能、FUJIFILM X-T3
- 動画編集作業を高速に行なうための特効薬
- ジンバル初心者にも気軽に使えて高機能、DJI Ronin-S
- 動画編集用コンピュータが欲しい!
- 動画撮影でF1.2大口径単焦点という選択、オリンパスM.ZUIKO PRO
- GH5Sの「Dual Native ISO」はやはりすごい
- 動画撮影でも富士フイルムの「色」への思想を感じさせるX-H1
- スチルもムービーも高性能なα7R IIIを導入しました
- HDR映像を撮影可能にするハイブリッドログガンマとは
- ニコンD850でタイムラプスムービーを極める
- 動画機能も確実に進化させてきたニコンD850
- フォトグラファーのための簡単絵コンテソフト「StoryBoard Creator」
- ますます実用的になってきた動画AF撮影/Panasonic LUMIX GH5③
- Lumix GH5の動画撮影機能をさらに検証する/Panasonic LUMIX GH5②
- スチルフォトグラファーのためのデジタル一眼レフ動画撮影ガイド/Panasonic LUMIX GH5①
- 特別編:動画撮影ならこの機能に注目 4Kムービー時代のカメラ選びのポイント
- 第46回 伝統の色と階調再現。それだけで欲しくなる!? 富士フイルムX-T2
- 第45回 iPad Airをカメラコントローラーにする「DIGITAL DIRECTOR」
- 第44回 「ただ者ではない」カメラ、ソニーα7RII
- 第43回 フォクトレンダーF0.95 NOKTONが動画撮影でも評判な理由
- 第42回 快適な4K編集のために「G-SPEED STUDIO」導入を検討する
- 第41回 高性能タブレット「VAIO Z Canvas」を使う
- 第40回 「SHOGUN」をGH4とα7Sで使ってみた
- 第39回 4K記録ができる外部レコーダー「SHOGUN」
- 第38回 オリンパスOM-D E-M5 MarkIIの「手ぶれ補正」は、かなり使える
- 第37回 軽量な一眼カメラに最適な本格派ビデオ雲台が欲しい
- 第36回 コンデジでも4K動画が撮れる! LUMIX LX100の実力
- 第35回 ストロボもLEDも測定できる「スペクトロマスターC-700」
- 第34回 FCP Xマルチカム編集の便利さを改めて実感
- 第33回 一眼ムービーの様々な「不可能」をこれ1台で解決!「NINJA BLADE」
- 第32回 日本語化&機能強化でさらに身近になった「DaVinci Resolve 11」
- 第31回 「QBiC MS-1」と専用リグで360°パノラマ動画に挑戦
- 第30回 一眼ムービーにベストマッチのALLEXスライダー三脚システム
- 第29回 動画で様々なフィルムのトーンを簡単に再現できるソフト
- 第28回 GH4を「ミニマル動画」でいかに使いこなすか!?
- 第27回 LUMIX GH4の性能アップは期待以上だった
- 第26回 NECのPAシリーズ、マスターモニタ化計画
- 第25回 シネマカメラBMPCCのRAWデータの実力
- 第24回 「DaVinci Resolve」、ただ今勉強中
- 第23回 話題のBlackmagic Pocket Cinema Cameraを使ってみた
- 第22回 ミニマル動画のワークフロー「アフレコ編」
- 第21回 ミニマル動画のワークフロー「編集編」
- 第20回 ミニマル動画のワークフロー「撮影編」
- 第19回 ミニマル動画のワークフロー「打ち合わせ、機材選択編」
- 第18回 LUMIX GH3は、想像以上に「撮れる」カメラ
- 第17回 一眼レフの足りない部分を補完するカメラ「LUMIX FZ200」
- 第16回 フレームレートとシャッタースピードの関係
- 第15回 一眼ムービーの撮影時の画質設定は?
- 第14回 SSD搭載でMacBook Proをメインマシン化計画
- 第13回 Xicato社の屋内照明用LEDを撮影に使いたい
- 第12回 Lightroomを使ってカラコレ
- 第11回 動画のバックアップはどうしていますか?
- 第10回 ビットレートを制するものは動画出力を制する!
- 第9回 画像の書き出し設定は目的によって使い分ける
- 第8回 ニコンD4を動画撮影で使ってみた
- 第7回 アンブレラを使った動画撮影の「Light Modify」を考える
- 第6回 動画撮影に適した光源とライティングを考える
- 第5回 デジタルカメラのためのオーディオインターフェイス「DC-R302」
- 第4回 未知の世界...音声、音楽、効果音
- 第3回 ムービー撮影ならではの単焦点レンズにこだわる
- 第2回 ゼロから覚えるのなら、「Final Cut Pro X」だ!
- 第1回 難しく考えず、スチル撮影の延長からスタート