2018年11月30日
今回は動画編集や画像処理を快適に行なうための二つの周辺機器を紹介する。
MacBook Proをデスクトップ並の編集環境にするBlackmagic eGPU
まずは先頃Blackmagic Designから発表されたグラフィックアクセラレーター「eGPU」(販売はApple)です。
最新のMacBook Proはついに32GBメモリーをサポート、SSD(M.4)もお金に糸目をつけなければ4TBもの容量を搭載することが可能。動画でも楽々ハンドリングできそうな雰囲気になりました。しかし動画編集に不可欠なもう一つの要素、ビデオボードのメモリーは残念ながら4GB止まり。Blackmagic社DaVinci Resolveなどの編集ソフトを快適に動かすには少々心許ない。そこでこのeGPUの登場です。Radeon Pro 580グラフィックプロセッサーと8GBメモリーを搭載したeGPUを、高速なThunderbolt 3でMacBook Proに増設して、快適な動画編集環境を提供しようというものです。
Blackmagic eGPU eGPUは、グラフィック機能だけでなく、Thunderbolt 3ポート×2、USB3ポート×4、HDMI 2.0ポート×1を持つので、MacBook ProをThunderbolt 3でつなぐだけで、デスクトップ機並みの編集環境に移行できる。しかも電源供給もThunderbolt 3経由で可能。MacBook Proをいちいち電源につなぐ必要もない。Appleサイトでの価格は89,800円(税別)だが、85Wの電力を供給するThunderbolt 3のHUB機能だけで2~3万円くらいしてしまうのだから、なかなかお買い得と言える仕様だ。
2018年モデルMacBook Pro(Core i9 2.9GHz/2TB storage/32GBメモリー)に、eGPUを接続してテストしてみました。本来ならDaVinci Resolveを使うのがベストですが、筆者の環境に合わせAdobe Premiere Pro CCでの検証。40分強の動画(4K 1本、FHD 2本、合計約1時間のクリップを編集したもの)のシーケンスレンダリングでは、MacBook Pro単体作業が150分、eGPUを接続すると42分とかなりの時間短縮。同データを「1pass 12Mbpsハードウェアエンコード」で書き出した場合、MacBook Pro単体が51分、eGPU接続で41分という実測値でした。
eGPU接続作業時のGPU使用状況 上からeGPU、MacBook Pro内蔵グラフィックボードGPU、MacBook ProオンボードGPU。eGPUにもっと作業を振り分けられないのが残念(eGPU側の問題ではなく、使用するソフトに左右される)。
eGPUをつなげることで MacBook Pro内蔵の二つのGPUと合わせて三つのGPUを使うことになりますが、その振り分けは任意に設定できるわけではなく、使用するソフトウェアによって変わります。DaVinci Resolveを使用する場合は、Blackmagic eGPUが優先的に使用されるのでかなりの効果が期待できますが、Premiere Pro CCでも充分なありがたみを実感できました。
ロケなどはMacBook Proのみ持って行き、事務所に戻ったらMacBook ProをeGPUに接続して本格的な編集。しかもeGPUはThunderbolt 3ポート×2、USB3ポート×4、HDMI2.0ポート×1の出力端子を持ち、85Wの電源供給も可能なので、MacBook Proのドッキングターミナルのように使えるのです。
複数の接続端子を持つため、MacBook Proを一気に拡張してくれる。たとえばeGPUとMacBook ProのHDMI端子を併用して5Kモニターを2台接続することも可能だ。
マウスとキーボードで作業環境が激変! ロジクールMX ANYWHERE 2S/KX1000s
もうひとつ、最近導入して便利に使っているのが、ロジクールのワイヤレスマウスMX ANYWHERE 2SとワイヤレスキーボードKX1000sです。
ロジクールMX ANYWHERE 2S/KX1000s もともと4Kの画面で1ピクセルを拾うのが通常のマウスでは困難だったため、最大4000dpiを謳うワイヤレスマウスMX ANYWHERE 2Sを購入したのだが、1回の充電で1ヵ月ほど使用でき、5個のカスタムボタンを備え、さらに「MacとWinを統合してディスプレイ間を渡る」機能を持っていた。そこで、マウスと連動して複数のコンピューターを操作できるキーボードKX1000sも追加導入。キーボードとマウスは合わせて3万円ほどしたが、今では手放せない状況になっている。
このマウスの特徴は最大3台までのWin/Macをコントロールできること。筆者の事務所にはMac mini、MacBook Pro、Mouse DAIV 7510(Winノート)の3つのモニターが並び、これまではそれぞれマウス、キーボードを使い分けるという面倒なことをしていました。しかしMX ANYWHERE 2Sでは、画面の端にカーソルを移動すると、やや引っかかった感触の後、隣の画面(=別のPC)にコントロールが移動します。テキストや小さい画像ファイルなら、コピーしてそのまま別のマシンにペーストすることも可能です。
マウスの設定画面 マシンの切り替え方法はカーソルが画面端に来た時に設定している。最大3台まで行き来して作業することができるが、筆者にとっては2台間を行き来するくらいがちょうど良く感じる。
キーボードKX1000sもマルチデバイス、マルチOS対応、マウスの移動にキーボードが追随してPCを自動的に切り替えるという離れ業をしてくれます。
マウスの操作感、キーボードのキータッチも申し分なし。特にMX ANYWHERE 2Sは解像度が最大4000dpi、4K動画の1ピクセルを拾うことができます。またKX1000sはキーボード左上についているCROWNという入力ダイヤルがAdobeのクリエイティブ系のソフトウェアに対応していて、たとえばPremiereのタイムラインを好みのスピードで移動することを可能にしてくれました。
キーボード左上の入力ダイヤル 回す、押す、押して回すの操作で対応ソフトのコントロールが可能。Photoshopでもブラシサイズの設定、明るさ、コントラスト調整などの機能を割り当てることができる。
現在、筆者の事務所では、このマウスとキーボードがコントロールタワーとなって、Mac2台とWindows1台がまるで「拡張されたひとつのマシン」のように稼働しています。
カーソルが画面を自在に行き来して、キーボードがそれに追随して切り替わる様は魔法のようで見事。いちいち身体をひねり、それぞれのキーボード操作をしなくてよいので、体への負担も大いに軽減。
※この記事はコマーシャル・フォト2018年11月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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