一眼ムービーなんて怖くない!

Lumix GH5の動画撮影機能をさらに検証する/Panasonic LUMIX GH5②

解説:鹿野宏

前回ではパナソニックLumix GH5の「絵の質」、つまり「カメラとしての基礎力」を紹介しました。

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スチルフォトグラファーのためのデジタル一眼レフ動画撮影ガイド/Panasonic LUMIX GH5①

今回は実際に様々な場面で動画撮影してみて、筆者が気になった機能や機構に焦点を当ててみたいと思います。

「NINJA INFERNO」と「DMW-XLR1」でパワーアップ

まずは、外付けとなる機能ですが、「絵の質」を保証してくれるATOMOS製品との連携です。4K 60pの映像で、4:2:2、10bit、1.7Gbpsという現在最も高精度な記録を可能にしてくれます。高画質、ハイスピード映像のため90秒の記録で約20GBという膨大なデータ量となりますが、たった一人か二人のクルーによる一眼ムービー撮影で、この撮影が可能というのは凄いことだと感じます。前回に作例を掲載しましたが、4:2:0、8bitの画像とはあきらかに質の差があります。

NINJA INFERNO

img_products_dslr_nofear49_02.jpg 4K 60p、10bit記録に対応する外部レコーダーATOMOS「NINJA INFERNO」、GH5専用のXLRマイクロホンアダプター「DMW-XLR1」と組み合わせることで、さらに高精細、高音質の映像記録が可能。「NINJA INFERNO」とはHDMI端子で接続。カメラ側のHDMI端子もGH4のTypeDよりも強度のあるTypeAになっている。「DMW-XLR1」はホットシューに取り付けるだけで、他のケーブル接続は不要。ハイレゾ音声(96kHz/24bit)をカメラ内部の動画に直接記録する。

DMW-XLR1

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「DMW-XLR1」の操作パネル。

外付けと言えば純正のXLRマイクロホンアダプター「DMW-XLR1」も別売で用意されていて、これを介することで、通常の外付けマイクをカメラに直接つなげるよりも、ノイズの少ない豊かな音声を記録してくれます。ホットシューに取りつける仕様で、メリットはカメラに接続すると自動的に電源が入り、記録される音声も自動的に切り変わること。ケーブルのつなぎ忘れや電源の入れ忘れがありません。動画ファイルに直接非圧縮の音声を記録できるのも、後工程の煩わしさを軽減してくれます。ライン入力や48ボルトのファンタム電源の選択も可能、ノイズカットなどの基本的な機能は全て備えています。

「DMW-XLR1」収録の音声波形をチェック

img_products_dslr_nofear49_04.jpg外部マイク→マイク端子
img_products_dslr_nofear49_05.jpgXLR外部マイク→DMW-XLR1
ミニプラグの外部マイクをカメラマイク端子に直接つなげた場合と、XLRマイクロホンアダプター「DMW-XLR1」を介したダイナミックマイクでの音声を比較してみた。
波形の山と山の間に見えている連続波形がノイズ(矢印)。マイク性能など様々な要因はあるが、「DMW-XLR1」を介したXLR接続のマイクで収録した方が、圧倒的にノイズが少ないのが見て取れる。

手ブレ補正、GH5 vs GH4

本体機能としては、ボディ内5軸手ブレ補正を新たに搭載。さらにレンズ内手ブレ補正と連動することで、特に望遠側のブレ補正が強化され、シャッター速度5段分補正+5軸補正という進化をしています。

手ブレ補正に関してはなかなか定量化できないので、評価の難しい機能ですが、今回はいつものようにGH4とGH5両方に同じ12ー35mmレンズを装着。ステーに取り付け、自転車に乗せて走ることで、大きな揺れや細かい上下の振動に対してどのように反応しているのか、見てみました。焦点距離は35ミリ換算で35mm相当。GH4はレンズ内手ブレ補正のみ。GH5はボディ内補正とレンズ補正の5軸ハイブリッド+電子手ブレ補正になります。

img_products_dslr_nofear49_09.jpg GH4とGH5を並べてステーにセット。スタビライザーなしにそのまま自転車のハンドルにつけた。

手ブレ補正比較映像 GH5(上)、GH4(下)で撮影

GH4とGH5をステーにつけて、自転車に乗って撮影。音声同期で2本の画像を合わせた後に画像をチェック。画面は上がGH5で下がGH4。GH5は5軸ハイブリッド+電子手ブレ補正。GH4はレンズ内手ブレ補正。その差はハンドルが曲がるシーンなどで歴然と現れた。細かい上下の振動もよく吸収している。

GH5は、細かい振動や揺れには5軸ハイブリッド、大きな揺れには電子手ブレ補正も効いていて、画面酔いするような不快な浮遊感はありません。手持ち歩行撮影でも、歩行の際の踵が地面についた時のショックを柔らかく緩衝します。広角側よりも望遠側で被写体を中心にとらえている時、特に素晴らしい動作をするようです。5軸手ブレ補正としては同じマイクロフォーサーズのオリンパスOM-D E-M1 MarkIIも強力ですが、ブレ補正に関する優位性は、イメージセンサーが小さいマイクロフォーサーズの「ダイナミックレンジや高感度性能とバーターで得たメリット」の一つとして数えることができるでしょう。

ローリングシャッター現象も低減

さらにまとめて紹介しますが、センサー読み出し速度の高速化により、高速で動く被写体がゆがんで撮影されるローリングシャッター現象も、かなり抑えられています。また、カメラ設定をSDカードやコンピュータに保存可能。設定を色々変更しても元の状態に戻れることは大きなポイント。電源を含む全てのワイアレスコントロール可能、ファインダーも表示が高速になり368万ドット、最高輝度2倍、コントラスト比10000対1とピントの確認もかなり容易です。カードスロットがUHS-II対応でダブルスロットになったこと、動画マニュアル時のISO感度オートかつ露出補正がやっとついたこともありがたい。

車窓から撮影した比較画像

センサーの読み出し速度が速くなったおかげで、ローリングシャッター現象にもかなり強くなっている。試しに東北新幹線の車窓から、路線脇の柱を撮影してみた。柱との距離は目測で3メ-トル程度。画面右が進行方向。つまりカメラから見て柱は右から左に高速移動している。さすがに最高速の時速320キロなるとはっきりとゆがむが、250キロでは柱が斜めになる程度。
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大宮、与野間。速度時速110キロ程度。問題ない。
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小山付近。時速250キロ前後。柱が傾斜するが使えるレベル。
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時速320キロ程度といわれる盛岡の手前。さすがにゆがむ。

まさに動画撮影をより強くサポートしてくれるような機能が満載の一眼カメラなのですが、実はこのGH5の動画撮影の肝はAFにあります。最近はソニー系やキヤノン系カメラにも搭載されている「動画に合わせたAF動作設定」。次回は一眼ムービーのAFの可能性について見てみたいと思います。




※この記事はコマーシャル・フォト2017年7月号から転載しています。


鹿野宏 Hiroshi Shikano

デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。

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