2019年02月25日
前回のニコンZ 7に続き、今回はキヤノンのフルサイズミラーレス、EOS Rをテストしてみました。
EOS RとRF24-105mm F4 L IS USMレンズ
ボディはボタン類をかなり整理したためすっきりとした印象。
新開発のRFマウントは、レンズ内径54mmでEFマウントと同等の大口径。フランジバックはソニーのα7シリーズと同じく20mm。これまでの倍近い12ピンの電子接点を持ち、EFマウントと比べて大幅に通信速度を向上。レンズ自体の設計もより自由にできます。
フォーカスブリージングの検証
今回テストしたレンズは「RF24-105mm F4 L IS USM」。ニコンのZレンズ同様フォーカスブリージングがなく、ピント位置を変えても画角変化はほとんどありません。さらにMF撮影時、ズーミングをしてもフォーカスのズレもない。これまで高価なシネレンズでなければ難しいと諦めていたことが今後の新レンズで解消されていくなら、一眼カメラでムービーを撮る者にとっては嬉しい潮流です。
フォーカスブリージングがほとんどない FHD 1/30s f16 ISO3200 ニュートラルモード RF24-105mmズームレンズの48mm相当固定で撮影。
フォーカスの遠近を変えても画角変化がないのは、動画撮影用レンズとして重要なポイント。今回テストしたレンズは「RF24-105mm F4 L IS USM」のみだが、フォーカスブリージング(画角変化)はしっかりと抑えられている。
センサーは約3030万画素、35mmフルサイズCMOSセンサー。動画は最大4K(UHD)/30p内部記録、フルHDは60pの撮影が可能です。
ファイル形式はMP4のみで、AVC/H.264 ビットレート固定だったのが意外でしたが、ビットレートが高めのMOVがない代わりに、全ての記録サイズ、フレームレートでALL-IとIPBが選択可能。記録データの容量が大きく編集耐性が高い「お仕事仕様」か、小さく圧縮されて使いやすいがそれなりの画質の「普段使い」かの選択になっています。4K撮影は内部記録時4:2:0/8bit 記録ですが、HDMI出力の外部記録で4:2:2/10bitにも対応するため、外部レコーダーと組み合わせると、さらに編集耐性が高いデータを得られるハイレベルな選択肢も用意されています。
4KはこれまでのキヤノンDSRL機同様のクロップ撮影。オーバーサンプリング演算がない等倍読み込みはキヤノンのポリシーとして評価します。望遠が有利になり、過剰な解像感が演出されないというメリットと、超広角に弱くなるというデメリットを持ち、評価はそれぞれでしょう。
背面液晶モニターはバリアングル仕様
操作性の面では、動画モードへの切り替えがモードボタンを押したのち、INFOボタンを押す二段階方式。動画設定が不要に変更されないための配慮と思いますが、ワンアクションで動画に移れないのは、ややストレス。動画モードでのモード設定は、すべて動画撮影用となります。
ボディ背面に右手親指で操作する「マルチファンクションバー」が新しく装備されました。AF、ISO、WB、動画撮影、ピント確認などの撮影設定や画像送りなどの設定を割り当てられています。また新RFレンズには「コントロールリング」があり、こちらにもISOや露出補正を割り当てられる。左右それぞれの手で撮影中に常に操作可能なので、ワンマンオペレーションでもかなり自由度の高いシステムとなるでしょう。
背面上部に様々な設定を割り当てられる「マルチファンクションバー」を装備。スライドと左右のタップで操作するが、筆者の場合は指の静電気に問題があるのか、スムースに操作をするには慣れが必要そう。
可変NDフィルターを内蔵できるマウントアダプター
過去のレンズ資産を拡張して活用するマウントアダプターも4種類が用意されています。筆者が注目したのは可変式NDフィルターが付属しているタイプ「ドロップインフィルター マウントアダプター EF-EOS R ドロップイン 可変式NDフィルター A付」。基本的にシャッター速度が固定される動画撮影の明るい野外撮影でNDフィルターは必須。しかもレンズ面が出っ張っている超広角ズーム、魚眼などのEFレンズが使用可能なのも嬉しい。この仕様を考えついた人には拍手喝采を送りたいです。
正式な商品名は「ドロップインフィルター マウントアダプター EF-EOS R ドロップイン 可変式NDフィルター A付」
マウントアダプターに可変NDフィルターを差し込むドロップイン方式。ND3~ND500相当あり、画像がほとんど白飛びしているような露出オーバーの状態から、やっと物の形が判定できるアンダーの状態までコントロール可能だった。可変NDにしては大きな色変化が少ないのもさすがだと感じる。動画撮影は基本的にフレームレートでシャッター速度が決まってしまうため、明るい場所で開放近くの絞り値を使おうとすると、露出オーバーになりやすい。NDフィルターの効果 UHD 4K 1/30s f1.8 ISO100 ニュートラルモードで撮影。ISO100でも開放だと露出オーバーの状態。ND16 相当で適正。ほぼ暗闇のND500相当まで調整できる。高価なフィルターを複数枚揃える必要がなく、結果的にコンパクトになるので、このアダプターを使うために本体を購入するという人もいるのでは?
本機は全体的には静止画指向。動画機能はカードスロットがひとつだったり、4KがDCI-4K(4096×2160)ではなくUHD(3840×2160)だったり、撮りっぱで楽しみたい派とかなりの上級志向が同居するセッティングだったり、ある意味ミラーレス1号機としての「割り切り」のような印象を持ちました。「ミラーレス=動画に適した進化」とは一概には言えませんが、クイックリターンミラーもペンタプリズムも動画には不要なもの。新マウントによる通信速度の向上、AF速度の高速化やレンズ設計の自由度は、今後の動画性能アップに繋がるはずです。
ボディ内電子5軸手ブレ補正
EOS Rの手ブレ補正は5軸の動画電子IS方式(IS:Image Stabilization)。光学IS搭載のRFレンズで補正しきれないブレを、新マウント通信によってカメラ側の動画電子ISと協調して補正する(コンビネーションIS)。ただしセンサー自体が動く補正ではないので、効果を強くすると画角が狭くなる。
動画電子IS オン/オフ UHD 4K 1/30s f8 ISO100 ニュートラルモード 24mm(クロップ35mm相当)で撮影。ボディ側の動画電子ISを強くかけると、画角が狭くなる。印象では28mmのセッティングで35mm になる感じ。
EV-6の低輝度限界 かなり暗い店内でフルオートで撮影してみた。ISO10000、ほぼ開放でやっと適正露出が得られる状況でありながら、オートフォーカスはビシバシ効いていた。大きくカメラを移動させた時は一瞬フォーカスを逃したが、結構早く再合焦したのが素晴らしい。オートフォーカスが「被写体に食いつく」感覚はかなり優れいるかも。 model:柏原あんな
※この記事はコマーシャル・フォト2019年2月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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