2017年12月26日
前回に引き続いてD850、今回は大きく進化したインターバルタイマー撮影/タイムラプスについて触れたいと思います。長時間を圧縮して見せることや、通常の動画には不可能な長時間露光のコマをつなげて映像にすることも可能。その意味で筆者はタイムラプス撮影が大好きなのですが、D850はタイムラプスに関してデジタルならではの多くの新機軸を搭載してきました。
D850でのタイムラプス撮影
インターバルタイマー撮影でもティザー撮影が可能。インターバルタイマー撮影の最短間隔は0.5秒。つまり0.5秒間隔で8Kオーバー(記録画素数4544万画素)のコマ撮影が可能だ。8Kタイムラプスムービー制作には画像編集ソフトが必要だが、4Kタイムラプスならカメラ内で自動でムービーが生成される。またインターバルタイマー撮影では、セッションごとに新規フォルダーを作成して、ファイル番号もリセットできるが、同じようなシーンを何回かに分けて撮影する時など、膨大なコマを管理するのに役立つ。
星空から夜明け、そして日中の青空までを連続した時間軸で撮影した映像は、タイムラプスの醍醐味です。しかし露出固定では星空と日中の明るさの変化に対応できず、通常のAEでもムービーにした時に明るさの変化がうまく繋がらず、映像がチラついたりします。そこで究極の手法として、カメラを2台用意し、1台でずっと露光しながら、その数値を撮影用のカメラにリアルタイムで打ち込んだこともありましたが、結局カメラブレを誘発するだけで、半日を無駄にしました。
しかしD850は「露出平滑化」というまさにデジタル的な機能を搭載し、明るさが変化する状況でのタイムラプスでもチラツキのない映像の撮影が可能です。「露出平滑化」はD810の頃から搭載されていたようですが、さらにD850ではインターバルタイマー撮影で「サイレント撮影」「露出平滑化」に設定した場合、AE撮影時に低輝度測光限界が3絞りほど拡張できます。
電子シャッターによる無振動のサイレント撮影もニコンとしては初めての機能。音がしないこともメリットですが、シャッター回数が驚異的に多いタイムラプス撮影では、振動を気にせず、さらにシャッターの耐久性も気にしなくていいのは大きなメリットです。
滑らかな自動露出と「自然光オート」でチラツキの少ないタイムラプスムービー
東京の空をビルの屋上にカメラを据え、夜明け前から朝焼、青空に至るまで追いかけた。ISOオートと絞り優先オートの組み合わせは、まず絞り制御範囲で絞りが変化し、それで対応できなくなればISOが変化し始めるという制御。なかなか見事な自動露光をしてくれた。ホワイトバランスも街中の照明などに惑わされない「自然光オート」にしておくと、安定した色味が得られる。D850の記録画素数8256×5504は8Kオーバー。なので8Kタイムラプスムービーを作ることも可能。現在、それを鑑賞する環境はあまりないので現実的ではありませんが、ここから4K、2Kムービーを制作すると、8Kオーバーの広い画面から必要なシーンを切り取り、ズームイン、アウト、自在にパーンするタイムラプスを制作できます。
インターバルタイマーの撮影間隔も、これまでの1秒から、最短で0.5秒の設定が可能になりました。つまり1コマ/0.5秒の動画となるわけで、果たしてここまで短い撮影間隔になると「インターバル撮影」と呼べるのかわかりませんが、自由度が上がることは大歓迎です。
4544万画素インターバルタイマー撮影からの4Kタイムラプス
明け方6時~9時頃までの空を4544万画素でのインターバルタイマー撮影、そこから切り出して最終的に4Kタイムラプスムービーに仕上げた。タイムラプス撮影は1000カット以上の物量となり、8KオーバーのRAWを現像するだけでも大変。D850はカメラ内「RAW一括現像」が可能で、ロケ地からスタジオに戻るまでの間にカメラ内でRAW現像をするという荒技も使える。
「インターバルタイマー機能」とは異なりますが、タイムラプス動画を制作するための面白い機能が他にもあります。それは「CH、CLの連続撮影時、4秒以上のシャッタースピードに設定すると、連続撮影を継続できる」機能。インターバルタイマーは撮影間隔を設定しますが、こちらは撮影後にすぐ次のコマの撮影するため、像が消失する時間が極めて短く、画像を統合した際につなぎ目が目立たない。しかも通常ありえない「長時間露光のブレを表現した動画」が作れるわけです。
長時間露光のタイムラプスムービー
長時間露光で連続撮影したタイムラプス映像の一コマ。昼間の撮影だがND1000を装着。10絞り減光して10秒露光、ISO64、F8の撮影。D850は4秒以上の長時間露光の場合、メモリーカードの容量やバッテリー残量の許す限り連続撮影が可能なので、それをタイムラプスにしたわけだ。裏面照射CMOSを採用したおかげで、長時間露光によるノイズも大幅に減っている。ISO64という低感度設定もこういう時はありがたい。
これまでタイムラプスという手法は、単純に銀塩時代のそれをデジタルに置き換えただけの撮影方法でした。しかしここにきて、「電子シャッターによる無振動撮影」「長時間露光の連写」「露出平滑化」「周りの照明や支配的な色彩に惑わされない自然光オートホワイトバランス」などデジタルならではの機能が注ぎ込まれ、タイムラプス好きとして狂喜乱舞しています。
願わくは、今後「日中から夕方にかけてはマイナス1絞りまで露出補正が変化し、星が出る時間帯にはマイナス4まで露出を補正する」というような時系列プログラム、絞り値やシャッタースピード、感度の上下の使用限界も指定できるようになると、さらに楽しみが広がります。将来的には、前後のカットから正しい位置を類推するタイムラプス電子手ブレ補正、撮影中の画像をスマホなどで確認できる機能など、ちょっと考えただけで「デジタルだから可能な新機軸」は山ほどあるような気がします。
星空のタイムラプスを撮影
星空のタイムラプスを撮影したかったのだが、テスト機材貸し出し期間中、あいにく星空に巡り合えませんでした。
そこで山野泰照氏(写真家、写真技術研究家)のご厚意で、氏が撮影した夜空のタイムラプス「昇る冬の大三角」をお借りしました。撮影場所は沖縄の離島。インターバルタイマー撮影時に「サイレント撮影」と「露出平滑化」を組み合わせることによって、大幅に低輝度側の測光限界が拡張されるのを利用して、「冬の大三角」が昇ってくるところを見事に捉えています。
Yasuteru Yamano
レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 焦点距離27mm / 絞り優先 オートf2.8 / 感度自動制御 ON / 制御上限感度 12800 / 低速限界設定 6秒 / インターバルタイマー撮影 / 撮影間隔 9秒 / サイレント撮影ON / 露出平滑化ON
こちらのニコンスペシャルサイトにも山野さんの映像があります。
http://www.nikon-image.com/sp/d850/timelapse/
※この記事はコマーシャル・フォト2017年12月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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