一眼ムービーなんて怖くない!

ニコン Z 6で銀河のタイムラプスに挑戦

解説:鹿野宏

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ニコン初のフルサイズ「ミラーレス」一眼、Z 7とZ 6。この連載でも高画素タイプのZ 7は以前紹介させていただきましたが、今回はZ 6をテストすることができました。

デザインや機能などはZ 7に準じたカメラです。ただしZ 6は画素数が約半分の2400万画素。その結果、最高感度はZ 7のISO25600に対してISO51200を実現。体感でも約1段半ほど高感度に強くなった感があります。またデータの読み出しが高速のため、スポーツ撮影や動画向けと言ってよいでしょう。今回はそのZ 6で「銀河のタイムラプス」撮影…。顛末をレポートします。

通常の動画撮影ではシャッタースピードは遅くても1/24秒ですので、現在の一般的なデジタルカメラで銀河を動画撮影するには、どれだけ明るいレンズをつけても不可能でしょう。ISO128万でISO3200と同等の画質が望めればまた別のお話ですが…。そこで「動画で銀河を撮る」ためには、タイムラプスムービーという選択になります(普通に動画で撮っても全然、「星が動いて見えない」ですし…)。

タイムラプスでも高感度、長時間露光となるとノイズや、補正処理に対する画像の強度が求められます。1枚だけの写真を仕上げるならば、複数のカットから差分処理でノイズを除去したり、肉眼では見えづらい銀河を浮かび上がらせたりもできますが、タイムラプスではそうもいきません。「タイムラプスで銀河撮影」は筆者が何度トライしてもうまくいかなかった夢の撮影なのです。

現在Zシリーズ用の超広角レンズは未発売です。広角単焦点AF-S NIKKOR 20mm f/1.8 GEDをマウントアダプターで装着することにしました。

F1.8の明るいレンズを持ってしても、銀河を撮るには高感度で8秒程度の露光時間が必要です。もっとも銀河をタイムラプスで動かすには、ちょうど良い時間かもしれません。ただし少々絞らないとピントも不安ですし、光のエッジも不安でした。ともあれ、高感度でダイナミックレンジの広いZ 6と明るい超広角レンズの組み合わせで、機材の準備は整いました。


赤城山麓の夜空と早朝

銀河を撮るなら群馬県。中でも赤城山は周辺の灯りがなく、高度もあるし車でアプローチできます。月のない晴れた夜にレンタカーを借りて早速向かったのですが、直前の雪で完全にアイスバーンとなってしまい、ノーマルタイヤだったため、あと4キロで山頂というところで断念。当日は肉眼でもはっきりと銀河が見えていたのに、麓に降りると地平線に近い銀河は森に隠れてもう見えません。やむなく「森とただの星空」を朝まで撮影して一旦帰宅。データを開いてみると銀河は無理でしたが、意外と素敵な風景と星空が写っているので一安心です。

〈赤城山・夜空〉
タイムラプス ISO3200 F2 8秒露光 フラットモード
レンズ:AF-S NIKKOR 20mm f/1.8 GED + マウントアダプターFTZ

〈赤城山・早朝〉
タイムラプス ISO3200 F2 8秒露光 フラットモード
レンズ:AF-S NIKKOR 20mm f/1.8 GED + マウントアダプターFTZ
赤城山では残念ながら銀河の撮影はできなかったが、星が明るくISO3200で撮影可能な好条件。低い場所だったので、空の下方が明るいのは市街地の灯りだろう。明け方は木陰がシルエットになって美しく、露出平均化をかけての自動露光が見事にハマった。


館山の海岸で銀河のタイムラプス撮影

再トライは館山に行くことに。星空は見えているのですが、この日は肉眼で銀河がはっきりと識別できません。でもせっかく来たのですから、とにかく銀河がある方向にカメラを向けて撮影してみることにしました。

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レンズはFマウントAF-S NIKKOR 20mm f/1.8 GEDをアダプターで装着している。

テスト撮影後、その場でコンピュータにデータを取り込んで処理してみると、驚いたことに8 秒間という長時間露光、ISO感度8000という高感度にも関わらずノイズがほとんど見られません。これはZ 6のポテンシャルの高さでしょう。かなり強烈なトーンカーブを適用すると、肉眼では認識できなかった銀河が見えてきました!長年の夢が叶ったのは私の腕が上がったからではなく、カメラの性能が上がったからです。Z 6に心から感謝! 結局明け方まで館山の海でカメラを回していました。

〈館山・銀河〉
タイムラプス ISO8000 F2.2 8秒露光 フラットモード
レンズ:AF-S NIKKOR 20mm f/1.8 GED + マウントアダプターFTZ


館山の岬の突端にあった石柱にカメラを固定してタイムラプスを撮影。館山では星は出ていても、銀河がはっきりと見えない状態。撮ったままのデータも同様。しかしきつめのトーンカーブをかけると、銀河の形がきちんと把握できる絵が撮れていた。ISO8000、8秒露光のタイムラプスで、なおかつかなりのトーン調整をしても破綻のないZ 6のデータに感服。

〈館山・海と夜空〉
タイムラプス ISO8000 F2.2 8秒露光 フラットモード
レンズ:AF-S NIKKOR 20mm f/1.8 GED + マウントアダプターFTZ

本来は手前のタイドウォーターに星々を反射させてそこによって撮影するつもりだったが、万一波にさらわれてしまう危険を感じて消極的に引いて撮影。対岸は羽田空港のため、夜間でも発着する飛行機が山ほどいる。うるさいと思うか、動くものがあるので動画らしくなるというべきか…。

Z 7もいいカメラでしたが、動画撮影をメインに考えると筆者にとっては Z 6 の方が魅力的に思えます。今後、動画のRAW撮影にも対応し、本誌が出る頃にはNIKKOR Z 14-30mm f/4 Sも発売されるでしょう。一眼ムービーカメラとしてZ 6の存在感がグッと増した、今回の銀河撮影でした。

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ちなみにポータブル電源はFLOUREON HP200 146Whを持って行った。容量はやや少ないかと感じたが、1回であればPowerMac 15インチをフル充電可能。カメラバッテリーであれば理論上10回の充電可能。今回もバッテリー2個を交互に充電しつつ、一晩中最後までコンピュータの使用と撮影を続行することが可能だった。


高感度で人物撮影

UHD 4K 30fps ISO2000 F2 1/50秒 ポートレートモード
レンズ:NIKKOR Z 50mmf/1.8 S

人物撮影も試してみた。ISO2000、向かって左側のメインライトのみの撮影。ポートレートモードでハイライト基準測光。モデルが光源向きになっても逆光になっても立体感があり、シャドウ側に破綻が起きない。薄いベージュのセーターも白飛びせず、髪の毛も潰れていないのは、ダイナミックレンジが広いからだろう。肌も作りすぎていない自然な発色。ISO2000でモデルを動画で撮るなど、ちょっと前までは考えられないシーンだ。


※この記事はコマーシャル・フォト2019年4月号から転載しています。


鹿野宏 Hiroshi Shikano

デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。

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