2020年12月14日
コンパクトボディにVlog機能を詰め込んだコンセプトカメラ
12-32mm付属レンズとバッテリー、メモリーカード込みで約412g。H 82.5mm×W115.6mmというコンパクトさ。個人的にはUSB給電不採用だったのは残念だが、機能は別にして、持った時の可愛さにちょっと負けてしまいそう。
このサイズでフリーアングルモニターであることだけでもありがたいが、モニターをひっくり返すと強制的に顔・瞳認識AFに切り替わり、露出も後方の被写体まで被写界深度に入れようと絞り込む方向に自動調整し始めるのには驚いた。さらに音声もトラッキングしてくれて、おまけに3秒間のカウントダウンまでしてくれる。もちろんこの設定はカスタムメニューでキャンセル可能。動画記録中の赤枠表示もディスプレイいっぱいに広がって抜群に見やすい。
Vlog(ビデオブログ)という今流行りのマーケットに向けて投入されたパナソニックのカメラLumix G100。マイクロフォーサーズのメリットを活かし、小さく軽く、しかも本格的にレンズ交換が可能。筆者の仕事でも使えるのではないかと気になり、テスト使用してみました。
早速、Vlogに挑戦
カウンターを背にした自撮りからの「〆銀鯖の炙り」調理のアップ。 撮影協力:にぎり屋 八べゑ
実際に馴染みの寿司店を訪れ、動画ブログを作ってみた。全てオートの設定で「記録ボタンを押して収録・停止」、キットレンズのズーミングを変更するだけの操作で撮影。基本的にナレーションモードで撮影していたが、自撮り時にはきちんとレンズ正面の音を記録する。どのシーンも驚くほど綺麗に撮れていた。
第一印象は「これだけ機能を満載した割によくぞここまで小さくまとめたものだ」でした。重量はキットレンズ、バッテリーなど込みで約412g。もちろんそのために外された機能もありますが、コンセプトがはっきりしたカメラであるため、それも納得がいきます。
イメージセンサーの総画素数はGH5と同じ2177万画素、測距点はGH5の225点に対して大幅に少ない49点です。しかしコントラストAFの駆動速度やAF速度の高速化を含めたアルゴリズムの進化のおかげなのでしょう。人物撮影においては思ったよりもいい感じにフォーカスします。
撮影可能時間はGHシリーズと比較して短く、4K 約10分、FHD 60p 約20分、FHD 30p 約30分。少々物足りない気もしますが、ターゲットを考えると10分以上長回しをする必要はあまりないのだと思います。
カメラ内蔵の手ぶれ補正は電子式。写真撮影ならば撮像素子シフト方式が理想ですが、動画撮影であれば充分。むしろ電子手ぶれ補正で「ここまで止まる」という性能を見せられた思いです。そもそも「このカメラに2177万画素が必要か?」と考えていたのですが、「ある程度の写真も撮れるし、電子手ぶれ補正の補正量を確保したい」となれば、この画素数も必要だったわけです。
EVFに関してもエントリークラス、Vlog向けならば「背面モニターがあれば不要では?」考えていました。しかし実際に使ってみると、フードをつけた外部モニターなしで撮影をしている時など、このファインダーで細部やフォーカス、色彩もきちんとチェックできます。この辺りも「カメラ1台で全て済ます」コンセプトの表れでしょう。
色彩再現、特に肌色に関してはGH5s以降劇的に進化し続けた肌色のチューニングがついに完成の域に達して、動画でも気持ちのいい肌色が苦労せずに手に入ります。
GH5sなどと比較すると高感度性能は「それなり」なのですが、ほぼノーマルのイメージセンサーと考えると(あくまで予想ですが)、頑張っています。
全体的にやや高感度寄りのカーブを採用しているようで、ISO200ではシャドウ側の階調が圧縮される傾向にあり、ISO400が一番美味しく、階調特性が優れています。高感度側も感度が上がるに従ってシャドウ部のコントラスト再現幅が狭まっていきますが、ISO1600までは女性のポートレイトでも問題なく、風景などであればISO6400も充分に使えると感じました。
ノキア社製OZO Audioを採用しているのも注目です。マイクはカメラ前面のステレオマイク2つに加え、背面に向けて1つ追加され、その位置関係を利用して環境音を立体的に拾うサラウンドモード、顔の位置や人数に合わせて収音範囲を自動調整するトラッキングモード、撮影者の声を中心に拾うナレーションモードなどが用意されています。内蔵マイクの音も良く、しかももっといい音を撮りたければ、マイク端子も用意されています。
確かに値段的にはエントリークラスのカメラですが、すでにLumix GHシリーズのカメラ資産のある筆者にとっては、サブカメラとして持って行き、仕事によってはそのまま最後までメインで使ってしまえそうなカメラだと感じました。
(スマホ以外で)ちょっと「動画撮影をしたい」という一眼ムービービギナーの方にもよいかも知れません。レンズを揃えることでステップアップを充分に楽しめ、中上級になっても手放さないカメラと言えます。
このカメラに似合った「10-25mmF2.8」といった小型のレンズの出現が待ち遠しいところです。
4Kライブクロップも、使ってみると意外と便利
写真左:トライポッドで窓際にセットしたG100。液晶画面の四角の枠がパンニングの設定。写真右:クロップ範囲を移動しながらFHD映像を記録していく。今回は4Kの全体画面の左下から右上にクロップ。
実際に記録された映像(FHD)。カメラを固定しているため、手ブレのないなめらかなパンニングが可能。
4Kライブクロップは、カメラ内で4K範囲からFHD動画を切り出して撮影する機能。これまでも4Kライブクロップが搭載されたカメラは使用してきたが、この機能を使うことはほとんどなかった。今回、入門機としては美味しい機能かもしれないと思い、撮影してみたのだが、仕上がりがFHDでいいのなら、かなり重宝なものだと初めて認識できた。切り出し範囲の移動やズームをあらかじめ設定しておけば、熟練のカメラマンがザハトラーにカメラを乗せてパンしているような見事なパンニングや、レンズマンがカメラ横にいるようなズーミングをしてくれる。使いこなすと映像に変化をつけることができるだろう。
作例はスカイツリーからの夜景。窓際にG100を小型トライポッドで固定して撮影。
スローモーション&AF機能
顔がレンズを向いている間はフォーカスが追い続ける。
スロー&クイックモーションの設定がモードダイアルに追加されたおかげで、思いついたらすぐスロー&クイック動画が撮影できる。10分間もスロー撮影ができ、しかもかなりの精度でAFが効く。作例は、カメラを三脚に据え、その前を筆者自身が前後左右に動いてみたもの。
※この記事はコマーシャル・フォト2020年12月号から転載しています。
この1冊で「ジンバルのすべて」が奥の奥までわかる一眼&ジンバル スピードマスター
ビデオSALON編集部 編集
2,000円+税
あのクリエイターが使っているレンズと作例を大公開ムービーのためのレンズ選びGUIDE BOOK
ビデオSALON編集部 編集
2,200円+税
ドローン空撮に関する各種情報を完全網羅! ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年
2,000円+税(電子書籍版1,900円+税)
鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
- クイックモーション設定で一味違う魅力的な映像を
- フジX-S10とXF50mmF1.0 R WRでポートレイト撮影
- 新時代到来を告げるM1チップ搭載MacBookの性能はいかに?
- 高速化を極めた結果、動画撮影機能が大幅アップ|ソニーα7S III
- 気軽に使えて高性能、エントリー機といって侮れないLumix G100
- MacBook Air 2018を仕事で使えるマシンにする
- ローリングシャッター歪みを計測する
- 光の色再現を評価する新基準TM-30-18を知っていますか?
- 使ってみたら絶対欲しくなるスペシャルなレンズたち
- 動画でも静止画でも「もう手放せない」Kaniフィルター
- 一眼ムービーもRAWで撮影できる時代が到来
- どう使いこなすか!? 注目のSIGMA fp
- 噂の新世代入力デバイス、Orbital2を使ってみた
- 動画撮影を本気で考えた一眼カメラ LUMIX S1H
- 高解像度静止画も動画も、という人にはお薦め、ソニーα7R IV
- 長時間勝負のタイムラプス撮影で愛用する機材
- 通話だけではもったいない。ソニー Xperia 1の凄い性能
- 4KハンディカムSONY FDR-AX700を今更ながら使ってみた
- ワンオペ撮影の強い味方となるか!? Roland V-02HD
- パナソニックのフルサイズミラーレスLUMIX S1/S1R
- ニコン Z 6で銀河のタイムラプスに挑戦
- 形はミラーレス一眼、中身はシネマカメラ、BMPCC4K(Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K)
- フルサイズミラーレス、キヤノンEOS Rの動画性能は如何に!?
- ニコン Z 7の大口径は動画性能アップにも繋がる
- 大きく進化した動画性能、FUJIFILM X-T3
- 動画編集作業を高速に行なうための特効薬
- ジンバル初心者にも気軽に使えて高機能、DJI Ronin-S
- 動画編集用コンピュータが欲しい!
- 動画撮影でF1.2大口径単焦点という選択、オリンパスM.ZUIKO PRO
- GH5Sの「Dual Native ISO」はやはりすごい
- 動画撮影でも富士フイルムの「色」への思想を感じさせるX-H1
- スチルもムービーも高性能なα7R IIIを導入しました
- HDR映像を撮影可能にするハイブリッドログガンマとは
- ニコンD850でタイムラプスムービーを極める
- 動画機能も確実に進化させてきたニコンD850
- フォトグラファーのための簡単絵コンテソフト「StoryBoard Creator」
- ますます実用的になってきた動画AF撮影/Panasonic LUMIX GH5③
- Lumix GH5の動画撮影機能をさらに検証する/Panasonic LUMIX GH5②
- スチルフォトグラファーのためのデジタル一眼レフ動画撮影ガイド/Panasonic LUMIX GH5①
- 特別編:動画撮影ならこの機能に注目 4Kムービー時代のカメラ選びのポイント
- 第46回 伝統の色と階調再現。それだけで欲しくなる!? 富士フイルムX-T2
- 第45回 iPad Airをカメラコントローラーにする「DIGITAL DIRECTOR」
- 第44回 「ただ者ではない」カメラ、ソニーα7RII
- 第43回 フォクトレンダーF0.95 NOKTONが動画撮影でも評判な理由
- 第42回 快適な4K編集のために「G-SPEED STUDIO」導入を検討する
- 第41回 高性能タブレット「VAIO Z Canvas」を使う
- 第40回 「SHOGUN」をGH4とα7Sで使ってみた
- 第39回 4K記録ができる外部レコーダー「SHOGUN」
- 第38回 オリンパスOM-D E-M5 MarkIIの「手ぶれ補正」は、かなり使える
- 第37回 軽量な一眼カメラに最適な本格派ビデオ雲台が欲しい
- 第36回 コンデジでも4K動画が撮れる! LUMIX LX100の実力
- 第35回 ストロボもLEDも測定できる「スペクトロマスターC-700」
- 第34回 FCP Xマルチカム編集の便利さを改めて実感
- 第33回 一眼ムービーの様々な「不可能」をこれ1台で解決!「NINJA BLADE」
- 第32回 日本語化&機能強化でさらに身近になった「DaVinci Resolve 11」
- 第31回 「QBiC MS-1」と専用リグで360°パノラマ動画に挑戦
- 第30回 一眼ムービーにベストマッチのALLEXスライダー三脚システム
- 第29回 動画で様々なフィルムのトーンを簡単に再現できるソフト
- 第28回 GH4を「ミニマル動画」でいかに使いこなすか!?
- 第27回 LUMIX GH4の性能アップは期待以上だった
- 第26回 NECのPAシリーズ、マスターモニタ化計画
- 第25回 シネマカメラBMPCCのRAWデータの実力
- 第24回 「DaVinci Resolve」、ただ今勉強中
- 第23回 話題のBlackmagic Pocket Cinema Cameraを使ってみた
- 第22回 ミニマル動画のワークフロー「アフレコ編」
- 第21回 ミニマル動画のワークフロー「編集編」
- 第20回 ミニマル動画のワークフロー「撮影編」
- 第19回 ミニマル動画のワークフロー「打ち合わせ、機材選択編」
- 第18回 LUMIX GH3は、想像以上に「撮れる」カメラ
- 第17回 一眼レフの足りない部分を補完するカメラ「LUMIX FZ200」
- 第16回 フレームレートとシャッタースピードの関係
- 第15回 一眼ムービーの撮影時の画質設定は?
- 第14回 SSD搭載でMacBook Proをメインマシン化計画
- 第13回 Xicato社の屋内照明用LEDを撮影に使いたい
- 第12回 Lightroomを使ってカラコレ
- 第11回 動画のバックアップはどうしていますか?
- 第10回 ビットレートを制するものは動画出力を制する!
- 第9回 画像の書き出し設定は目的によって使い分ける
- 第8回 ニコンD4を動画撮影で使ってみた
- 第7回 アンブレラを使った動画撮影の「Light Modify」を考える
- 第6回 動画撮影に適した光源とライティングを考える
- 第5回 デジタルカメラのためのオーディオインターフェイス「DC-R302」
- 第4回 未知の世界...音声、音楽、効果音
- 第3回 ムービー撮影ならではの単焦点レンズにこだわる
- 第2回 ゼロから覚えるのなら、「Final Cut Pro X」だ!
- 第1回 難しく考えず、スチル撮影の延長からスタート