2010年07月28日
Adobe PhotoshopのCamera Rawのバージョンが6になり、大幅にRAW現像の機能アップが図られた。同じ画像処理エンジンを採用しているLightroom 3でも、従来とはRAWデータの処理方法が変更になっている。今回は、この部分の注意点などについて解説する。
変更されたRAWデータの処理方法
Lightroom 3(以下LR3)が発売されて約1ヵ月が経った。LR3の製品版に移行したフォトグラファーも徐々に増えてきているこの頃だと思う。
使い勝手はLR2とほとんど同じなので、今さら戸惑うこともないと思うが、RAWデータを表示させた時、右下に「!」マークが出る点だけ、「あれ?」と思う人も多いのではないだろうか。
この「!」マークだが、LR2とLR3でRAWデータの処理方法が変更になったため出るようになった。LR2から使っているカタログデータをLR3にアップグレードしたユーザーに対して、注意喚起するためのものだ。LR3から使い始めたユーザー、もしくはLR3で作ったカタログでは基本的には出ない。
LR3では、現像モジュールの「カメラキャリブレーション」に「処理」という新しい項目が追加されており、LR2までの処理は「2003」、LR3の処理は「2010」と表示される。右の図は、古いカタログデータをLR3に読み込ませた状態で、「処理」は「2003」となっていて、「!」マークが表示されている。
この「!」マークをクリックすると、下のようなウィンドウが開く。
「更新」をクリックすれば、新しい処理バージョン「2010」に変更される。その際に、「補正前と補正後のレビュー」にチェックが入っていれば、その処理の違いを比較として見せてくれる。
下の画像がその比較画面だ。
左が2003の処理バージョン、右が2010の処理バージョン。
プロファイルは「Adobe Standard」、ホワイトバランスなどもそのまま同じなのに、色の傾向だけが若干違っている。新しい処理バージョンでは、ノイズ処理とシャープネス処理も変更されているとのことだが、カメラプロファイルの「Adobe Standard」に関しては、色の傾向が大幅に変更になったようだ。
チャートの拡大写真。左が2003の処理バージョン、右が2010の処理バージョン。
僕が使っていて特に感じるのは、青の発色だ。青空の写っている風景写真をRAW現像した際に、このバージョンの違いは大きい。「2010」は、くっきりぱっきり、そんな印象を感じる。
個人的には、キヤノンユーザーということもあり、LR2までは「Adobe Standard」はそれほど使っておらず、「Camera Standard」を多用していた。
LR3からはほとんどの写真で「Adobe Standard」を使うということになりそうだ。それほどパッと見の仕上がりが好印象になったと思う。
もちろん、カメラキャリブレーションをいじらず、他のパラメーターを微調整していけば同じように写真を作っていくことも可能だが、どちらが簡単かは、考えるまでもないだろう。
次の例はソニーのα900の画像。これも同じような傾向に変更されているようだ。
左が2003の処理バージョン、右が2010の処理バージョン。
シャープネス処理の注意点
新しい処理バージョンでは、ノイズ処理とシャープネス処理も変更されている。
フジのS2ProのRAWデータ。
左が2003の処理バージョン、右が2010の処理バージョン。
この写真では分かりにくいが ノイズ処理の違いは各自チェックしてほしい。
同じようにシャープネス処理も変更されている。
左が2003の処理バージョン、右が2010の処理バージョン。違いは多少あるが、それほどの差とは思えない。
これも微細な差違だと思っていた。が、落とし穴があるので注意をしたい。
右の画面はLR2のディテール設定だが、実はLR2のカタログ上で、シャープ設定を大きくいじっている写真には注意が必要となるのだ。
僕の場合、ほとんどここでのシャープネス処理はしていないので、あるLightroomエバンジェリストの方に指摘されるまで気がつかなかったのだが 。
シャープの適用量をマックスの150まで上げた写真を例にしよう。
下の写真は、LR2でシャープ適用量マックスの150にした状態で、JPEG書き出ししたものを100%で切り出している。なお、「書き出し」の設定画面で「シャープ出力」の設定は行なっていない。
人によってはこのくらいのシャープをかけたいという人は多かったと思う。
次に、LR3で2003処理バージョンで同じように現像したもの。
基本的にはLR2の結果と同じようになる。
が、LR3でそのまま処理バージョンを2010にすると、下のようにバリバリにシャープネスがかかってしまう。
このように、LR2の時代に大幅にシャープをかけていたフォトグラファーにとっては、処理バージョンの変更は要注意の問題になる。
Lightroomではもともとシャープネスをそれほどかけていないし、新しい処理バージョンの方がよいということなら、「処理バージョンの更新」で「再表示しない」をチェックして、「フィルムストリップの全ての写真を更新」をクリックすると、もう「!」マークは出なくなる。
Lightroomは、Camera Rawと同じ画像処理エンジンを使用しており、Camera Raw 6でも事情は同じなので、ほとんどの人は「全ての写真を更新」してもかまわないだろう。
もし、以前の処理バージョンに戻したいという時は、「カメラキャリブレーション」の「処理」で「2003」を選択すれば、いつでも戻すことは可能だ。
Lightroomの最大の特徴である「非破壊処理」はLR3になっても変わりない。RAWデータの現像で何をやっても、元データには変更は加えられないので、写真の現像に対してアグレッシブにいきたいものだ。
今回の処理バージョンの更新は地味ではあるが、バージョンアップの移行期に必ず直面する問題なので、長々と取り上げた。次回以降、Camera Raw 6の新機能をからめて、実践的な使いこなしを書いていくつもりだ。
【特典】オリジナルプリセット30個ダウンロードポートレートRAW現像入門
関一也 著
紙版2,000円+税(電子書籍版1,900円+税)
基礎テクニック+Nik Collectionで魅力度アップ!Lightroom カラー作品を仕上げるRAW現像テクニック
桐生彩希 著
紙版1,800円+税(電子書籍版1,700円+税)
Lightroom CC/6で写真編集力アップ!作品づくりが上達するRAW現像読本
澤村 徹 著
紙版1,800円+税(電子書籍版1,600円+税)
湯浅立志 Tatushi Yuasa
1981年東京写真専門学校卒業。広告写真スタジオの社員カメラマンとして15年勤務。独立後は雑誌、広告、WEB媒体でモデル撮影から商品撮影まで幅広く活動。2004年(有)Y2設立。日本広告写真家協会会員。「ADOBE PHOTOSHOP LIGHTROOM 2 ハンドブック」(コマーシャル・フォト2008年10月号付録)を始め、デジタルフォトに関する原稿執筆多数。 http://tatsphoto.air-nifty.com/
- Lightroom CC 保存/編集など基本的ポイントを総まとめ
- Lightroom CC プロファイルから始める画像調整
- 仕事にも遊びにも使える Lightroomの新しいプロファイル
- フォトグラファーが徹底的にLightroom CCを使ってみた
- 画像データはどこにある? Lightroom CCでのバックアップ
- 新しくなった「Lightroom CC」は、いつでもどこでもLightroom
- 第40回 Lightroom CCで簡単に作品を公開しよう。スライドショーとAdobe Slate
- 第39回 Lightroom CC GPU支援とフィルターブラシ機能
- 開発者トーマス・ノールが語る「PhotoshopとLightroomが目指すもの」
- 第38回 Lightroom CCでパノラマを使いこなせ
- 第37回 Lightroom CC で今日から仕事で使えるHDR
- 第36回 Lightroom mobileを使いこなす その3 iPhone編
- 第35回 Lightroom mobileを使いこなす その2
- 第34回 Lightroom mobileを使いこなす その1
- 第33回 快速ワークフローを実現する「自動補正」
- 第32回 Upright™テクノロジー超活用法
- 第31回 より進化したスポット修正ツール
- 第30回 更に充実したスライドショー
- 第29回 円形フィルターを使いこなす
- 第28回 Adobe Photoshop Lightroom 5 パブリックベータ版公開 スマートプレビューについて
- 第27回 ソフト校正 その2
- 第26回 ソフト校正 その1
- 第25回 カラーフリンジ補正コントロール
- 第24回 Lightroom 4で行なうビデオ編集
- 第23回 新設されたマップモジュール
- 第22回 Lightroom 4で強化された補正ブラシ
- 第21回 Lightroom 4 Betaの現像モジュール
- 第20回 Lightroom 4 Beta 公開
- Lightroom Q&A ⑥ スピードアップのためのセッティング
- Lightroom Q&A ⑤ 2台以上のPCからLightroom 3を使うには?
- Lightroom Q&A ④ Capture One Proとの違いは?
- Lightroom Q&A ③ LightroomとBridge、どちらが良い?
- Lightroom Q&A ② フォルダーごとにファイルを書き出す
- Lightroom Q&A ① 複数のフォルダーを同期させる
- 第19回 スライドショー機能による表現
- 第18回 大切な写真はクラウドへ保存しよう
- 第17回 写真の保存と外付けハードディスク
- 第16回 公開サービスでFlickrを使いこなそう
- 第15回 新しくなったトーンカーブ
- 第14回 レンズ補正の使いこなし
- 第13回 カメラキャリブレーションの処理バージョンについて
- 第12回 Lightroom3へのバージョンアップ
- 第11回 「公開サービス」の使いこなし
- 第10回 テザー撮影の実践的使いこなし
- 第9回 Adobe Photoshop Lightroom 3 Beta2 公開
- 第8回 Lightroomからの書き出しとWeb公開
- 第7回 メタデータの使いこなし
- 第6回 「世界のプリセット」を楽しみながらバリエーションを使いこなす
- 第5回 操作を快適にするショートカットと周辺機器
- 第4回 カメラプロファイルの特性を試す
- 第3回 自動読み込みを利用した撮影ワークフロー
- 第2回 過去の写真をカタログ化してアーカイブしておこう!
- 第1回 カタログの使いこなし