Lightroom 実践力アップ講座

第13回 カメラキャリブレーションの処理バージョンについて

解説:湯浅立志

Adobe PhotoshopのCamera Rawのバージョンが6になり、大幅にRAW現像の機能アップが図られた。同じ画像処理エンジンを採用しているLightroom 3でも、従来とはRAWデータの処理方法が変更になっている。今回は、この部分の注意点などについて解説する。

変更されたRAWデータの処理方法

Lightroom 3(以下LR3)が発売されて約1ヵ月が経った。LR3の製品版に移行したフォトグラファーも徐々に増えてきているこの頃だと思う。

img_soft_lightroom13_01.jpg使い勝手はLR2とほとんど同じなので、今さら戸惑うこともないと思うが、RAWデータを表示させた時、右下に「!」マークが出る点だけ、「あれ?」と思う人も多いのではないだろうか。

この「!」マークだが、LR2とLR3でRAWデータの処理方法が変更になったため出るようになった。LR2から使っているカタログデータをLR3にアップグレードしたユーザーに対して、注意喚起するためのものだ。LR3から使い始めたユーザー、もしくはLR3で作ったカタログでは基本的には出ない。

img_soft_lightroom13_02.jpgLR3では、現像モジュールの「カメラキャリブレーション」に「処理」という新しい項目が追加されており、LR2までの処理は「2003」、LR3の処理は「2010」と表示される。右の図は、古いカタログデータをLR3に読み込ませた状態で、「処理」は「2003」となっていて、「!」マークが表示されている。

この「!」マークをクリックすると、下のようなウィンドウが開く。

img_soft_lightroom13_03.jpg

「更新」をクリックすれば、新しい処理バージョン「2010」に変更される。その際に、「補正前と補正後のレビュー」にチェックが入っていれば、その処理の違いを比較として見せてくれる。

下の画像がその比較画面だ。

img_soft_lightroom13_04.jpg左が2003の処理バージョン、右が2010の処理バージョン。

プロファイルは「Adobe Standard」、ホワイトバランスなどもそのまま同じなのに、色の傾向だけが若干違っている。新しい処理バージョンでは、ノイズ処理とシャープネス処理も変更されているとのことだが、カメラプロファイルの「Adobe Standard」に関しては、色の傾向が大幅に変更になったようだ。

img_soft_lightroom13_05.jpgチャートの拡大写真。左が2003の処理バージョン、右が2010の処理バージョン。

僕が使っていて特に感じるのは、青の発色だ。青空の写っている風景写真をRAW現像した際に、このバージョンの違いは大きい。「2010」は、くっきりぱっきり、そんな印象を感じる。

個人的には、キヤノンユーザーということもあり、LR2までは「Adobe Standard」はそれほど使っておらず、「Camera Standard」を多用していた。

LR3からはほとんどの写真で「Adobe Standard」を使うということになりそうだ。それほどパッと見の仕上がりが好印象になったと思う。

もちろん、カメラキャリブレーションをいじらず、他のパラメーターを微調整していけば同じように写真を作っていくことも可能だが、どちらが簡単かは、考えるまでもないだろう。

次の例はソニーのα900の画像。これも同じような傾向に変更されているようだ。

img_soft_lightroom13_06.jpg左が2003の処理バージョン、右が2010の処理バージョン。


シャープネス処理の注意点

新しい処理バージョンでは、ノイズ処理とシャープネス処理も変更されている。

img_soft_lightroom13_07.jpgフジのS2ProのRAWデータ。

img_soft_lightroom13_08.jpg左が2003の処理バージョン、右が2010の処理バージョン。

この写真では分かりにくいが…ノイズ処理の違いは各自チェックしてほしい。

同じようにシャープネス処理も変更されている。

img_soft_lightroom13_09.jpg左が2003の処理バージョン、右が2010の処理バージョン。違いは多少あるが、それほどの差とは思えない。

これも微細な差違だと思っていた。が、落とし穴があるので注意をしたい。

img_soft_lightroom13_10.jpg右の画面はLR2のディテール設定だが、実はLR2のカタログ上で、シャープ設定を大きくいじっている写真には注意が必要となるのだ。

僕の場合、ほとんどここでのシャープネス処理はしていないので、あるLightroomエバンジェリストの方に指摘されるまで気がつかなかったのだが…。

シャープの適用量をマックスの150まで上げた写真を例にしよう。

img_soft_lightroom13_11.jpg

img_soft_lightroom13_12.jpg

下の写真は、LR2でシャープ適用量マックスの150にした状態で、JPEG書き出ししたものを100%で切り出している。なお、「書き出し」の設定画面で「シャープ出力」の設定は行なっていない。

img_soft_lightroom13_13.jpg

img_soft_lightroom13_14.jpg

人によってはこのくらいのシャープをかけたいという人は多かったと思う。

次に、LR3で2003処理バージョンで同じように現像したもの。

img_soft_lightroom13_15.jpg

基本的にはLR2の結果と同じようになる。

が、LR3でそのまま処理バージョンを2010にすると、下のようにバリバリにシャープネスがかかってしまう。

img_soft_lightroom13_16.jpg

このように、LR2の時代に大幅にシャープをかけていたフォトグラファーにとっては、処理バージョンの変更は要注意の問題になる。

img_soft_lightroom13_17.jpg

Lightroomではもともとシャープネスをそれほどかけていないし、新しい処理バージョンの方がよいということなら、「処理バージョンの更新」で「再表示しない」をチェックして、「フィルムストリップの全ての写真を更新」をクリックすると、もう「!」マークは出なくなる。

Lightroomは、Camera Rawと同じ画像処理エンジンを使用しており、Camera Raw 6でも事情は同じなので、ほとんどの人は「全ての写真を更新」してもかまわないだろう。

もし、以前の処理バージョンに戻したいという時は、「カメラキャリブレーション」の「処理」で「2003」を選択すれば、いつでも戻すことは可能だ。

Lightroomの最大の特徴である「非破壊処理」はLR3になっても変わりない。RAWデータの現像で何をやっても、元データには変更は加えられないので、写真の現像に対してアグレッシブにいきたいものだ。

今回の処理バージョンの更新は地味ではあるが、バージョンアップの移行期に必ず直面する問題なので、長々と取り上げた。次回以降、Camera Raw 6の新機能をからめて、実践的な使いこなしを書いていくつもりだ。

湯浅立志 Tatushi Yuasa

1981年東京写真専門学校卒業。広告写真スタジオの社員カメラマンとして15年勤務。独立後は雑誌、広告、WEB媒体でモデル撮影から商品撮影まで幅広く活動。2004年(有)Y2設立。日本広告写真家協会会員。「ADOBE PHOTOSHOP LIGHTROOM 2 ハンドブック」(コマーシャル・フォト2008年10月号付録)を始め、デジタルフォトに関する原稿執筆多数。 http://tatsphoto.air-nifty.com/

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