2013年05月28日
35ミリ一眼レフデジタルカメラを使った撮影で一番大変なのが、音を「きれいに録音すること」。前回も取り上げましたが、これまで試行錯誤の連続でした。特にインタビューなどの同時録音の場合、画像と同じくらいウエイトがかかります。最終的にたどり着いたのが「ピンマイク」でしたが、被写体から離れて撮影する際、ケーブルを延ばすことでノイズを拾う確率が上がります。デジタルカメラ側の音声入力端子がミニジャックというのも、ノイズを拾いやすい一因でしょう。
そんな中、友人でもある銀一の柏原君がフォステクス(オーディオマニアならご存知のはず 小さく安いけれど、とてもバランスのいいスピーカーを制作しているフォスターのグループ会社です)さんに、「こんなモノ作ってくれない?」と持ちかけた機材が、デジタルカメラムービーのためのオーディオインターフェイス「DC-R302」です。
FOSTEX DC-R302
本体上部にブラケットがあり、カメラをセットできる(ブラケットは取り外しが可能)。本体左のキャノンコネクターが入力端子。3ch入力。サイズはW152×H45(ブラケット装着時52.5)×D108mm。重さは約690g (ブラケット・電池ケース含む/電池別)。価格は99,750円(税込)。
http://www.fostex.jp/products/DC-R302
デジタルカメラやビデオカメラを搭載できるように、上部に取り付け部分があり、下側には三脚に取り付けるネジ穴が切ってあるこの装置は、デジタル一眼レフ向けのオーディオインターフェイスで、「ミキサー」「ステレオレコーダ」「アナログ→デジタル変換」の機能を兼ね備えています。
ミキサーとしては入力に3チャンネル持っているのが魅力です。通常の取材レポートは2人が話すことが多いのですが、それに加え環境音も同時に別録りできる。あるいは3人の話を同時に記録できるのが強みです。イベント取材などでも、会場の音を録音しながら、もう一つのチャンネルに会場ミキサーからの音声を記録しておき、後から音量のバランスをLRチャンネルで変更するという高等技術も使えるようになります。
DC-R302は3チャンネルの音声をミキシングして、デジタルカメラにステレオで入力します。それと同時に「ステレオレコーダ」として、同じ音声を「アナログ→デジタル変換」し、本体に格納したSDカードにも記録します。もちろんUSB接続で、そのままラップトップコンピュータにデジタル音声を送出することも可能です。
私が2番目にありがたいと思った機能が、スレートトーン(録音開始や終了時にピピピ!という音を同時に記録して音声と動画の同期をとりやすくする仕組み)。デジタルカメラに記録した音声と、DC-R302内蔵のSDカードの音声にスレートトーンを記録し、後から音声トラックを差し替える際に、この信号を頼りに同期を取ります。
上の波形がカメラに記録された音声。下部にノイズが均等に入り小さな音はノイズに隠れている。下の波形がDC-R302のSDカードに記録された音声。ノイズのレベルが大幅に低いことがわかる。
理由は前述した「カメラ側の音声入力端子がミニプラグである」こと、そしてカメラに搭載された音声レコーダの品質(圧縮率であったり処理ビット数であったり )などの問題があるのでしょう。
そのため私はこれまでも、 ICレコーダで記録した音声をカメラの音声に差し替えるという作業を行なってきましたが まるで作業が楽になりました。動画ファイルの数だけ音声ファイルが生成されるので、これまでに比較すると格段に早く、正確に同期作業を進められます。
いずれはデジタルカメラ側でも音声の問題は解決されていくでしょう。最近発売されたキヤノンのEOS-1DX/5D Mark Ⅲやニコン D4/D800などには、かなり期待しているのですが、それ以前のデジタルカメラは、音声に関して色々と不満も多く、特にこれまで「音声をモニターする機能」が省かれていたことは大きな問題でした。
私にとってDC-R302の3番目に嬉しい機能が、ライブモニタリングを可能にしてくれたことです。ヘッドフォン端子が搭載され、記録中はもちろん、記録後に内蔵のSDカードに記録された音声を素早くチェックできます。これまで待ちに待った機能です。この装置を使うことで、同録時の「音が録れてないかも」「何かの拍子でノイズが入っていないか?」「電池が切れていないか?」などの不安が消し飛びました。
しかもカメラと一体化させて三脚に取り付ける機能、少し工夫してオフセットすれば、グリップ下に取り出し口があるカメラのバッテリーも交換できるようにセットできます。キヤノン用には「録音と録画を同時にスタートさせる」機能も搭載されています(ニコンの場合は現時点で未対応とのこと)。これでシーンごとに「音と映像を同期させる」ために費やしてきた労力も大幅に軽減されます。本体には単三電池4本を収納でき、屋外使用にも対応します。
周辺音を最適なバランスでミックス、臨場感のある対談を録音私のスタジオで通常の撮影中(となりのスタジオで撮影をしている)に、「電塾塾長早川廣行氏と私が Adobe Photoshop Lightroom 4をテーマに対談する」というやや強引なシチュエーション。スタジオの環境音の録音には通常のマイクを立て、私と早川氏はピンマイクをワイアレスで取り付けての撮影。二人の声のどちらも割れないようにピークをそれぞれセットし、「撮影しているストロボのチャージ音やざわめきは環境音として小さく拾う」という設定。使用したワイアレスピンマイクはゼンハイザー社の 「ew112p-G3」(写真右)。ワイアレスながらとても高音質で安定している。受信装置にはホットシューアダプターも用意されている。
実際に上の写真のようなシチュエーションで使用してみましたが、ほとんど後処理する必要のないレベルで録音することができました。これまで対談の撮影時には必ず「音声のブラッシュアップ」に多くの時間が必要とされていたことを考えると、驚くほどの効率化。そして高い品質の録音を私たちでも実現できる。デジタルカメラのための「音の収録」を、よりきれい、確実、高精度に記録することをアシストしてくれる初めての機材です。
プロショップ銀一(http://www.ginichi.com/)でも取り扱っています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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