2013年08月22日
2012年3月に発売されたニコンのデジタル一眼レフカメラ「D4」。そのD4をテストできたので、今回は筆者が特に気に入った「D4ならではの特徴」をレポートします。
動画機能が大幅に強化されたD4
2012年3月に発売されたニコンデジタル一眼レフフラグシップ機、D4。動画機能が大幅強化された。中でもヘッドフォン端子が装備され、音質が向上したことが、筆者にとって最大の注目点。
D4の優れた高感度特性やダイナミックレンジ、かなり暗いところでも合焦できるようになったAF機能、それらはすでに雑誌のテスト記事などで語り尽くされた感がありますが、筆者も是非、「ダイナミックレンジが広いこのカメラを使った動画を撮影」を実感してみたいと思っていました。
でも、今回の検証で最も驚いたのが「オーディオ」です。内蔵されている「マイクアンプ」のプアーさがなくなり、ホワイトノイズも激減しています。さらにヘッドフォン端子が装備され、ヘッドフォンを使ってリアルタイムで記録されている音声を確認。液晶部の音声インジケーターでも目視で確認できます。
「同録取材」が仕事のひとつである筆者には「やっとカメラ内蔵のオーディオ機能も使えるレベルにきたか」という感慨があります。動画スタンバイ(ライブビュー)時にオーディオレベルをチェック、設定することができるので、よりきれいなオーディオをカメラだけで録音できそうです(もっとも仕事で使う場合、ICレコーダーなどによるオーディオバックアップはこれまでと同様に必要ですが )。
1920×1080クロップモードは画像がシャープ
左が「FXクロップ」モード(通常のモード)、レンズは58mm。右が「1920×1080クロップ」モード。レンズは20mm。「FXクロップ」は35ミリフルサイズのセンサー全面を使うが、実際の映像はフルHDサイズに縮小される。一方、「1920×1080クロップ」は、センサー中央部1920×1080画素分だけ撮影。縮小補正がないため、解像力が向上している。
また動画撮影の新機能で注目したいのは、「1920×1080クロップ」モードが追加されたこと。D4はイメージセンサーのほぼ全面を使う「FXクロップ」、それよりも撮像範囲が狭い「DXクロップ」、そして「1920×1080クロップ」の3つのモードでフルHD(1920×1080)の撮影が可能です(「マルチエリアモードフルHD Dムービー」)。
同じレンズを1.5倍、2.7倍のレンズとして活用できるのがいかにもデジタル機器らしく、面白い考えだと思います(“ぼけ”の量は変わらないのですが、レンズ交換なしで50mm F1.8標準レンズが75mm F1.8中望遠、135mm F1.8望遠として使用できてしまう)。
いちいち撮影を中断しなければモードを変更できないという面倒くささはありますが、レンズ交換するよりはスピーディだと感じます。
また「1920×1080クロップモード」では、1920×1080フルHDサイズの映像を、イメージセンサーの1920×1080画素分だけ使って撮影するので、余計な縮小演算がかかっていない分、エッジの“ぼけ”が少なく、解像感が高いように見受けられます。
さらに1280×720(HD)モードでは60p/50p/30p/25pというフレームレート(1秒間のコマ数)が選択可能になっています。
実はこれまで50p/25pというフレームレートはあまり重要視してこなかったのですが、東日本においてはフリッカーが最も発生しにくいシャッタースピードに対応するのです。高周波点灯していない蛍光灯の会議室内などで、蛍光灯を消せずに撮影する必要性がある場合、有利なシャッタースピードだと言えますし、50pであれば後から簡易スローモーション映像にすることも可能です。その意味で、1920×1080(フルHD)モードで50pが見送られたのが、とても残念です。
ちなみに1280×720/25pというモードは、インターネットやデジタルサイネージの仕事が多い筆者にとって、最も理想的なモードです。なぜなら、インターネットやデジタルサイネージでは、TV放送基準の30p(29.97fps)にこだわる必要がない。画質的にも通常1秒25コマ=25pもあれば充分(インターネットでは必要に応じてもっと削る場合もあり得る)。不要に大きなサイズで撮影して、編集時のパフォーマンスが抑えられるよりは、必要充分なデータ量で仕事をした方が正解だと思うのです。
こんなシーンが照明なしで撮れてしまう
ISO12800 F4 1/60で撮影。照明セットなしでもロケができちゃう
。凄いことです。下がKodak Step Tablet,No.2。素通しと黒部分を合わせて22段階が再現されています。つまり約11絞りを記録しているということになります。
ダイナミックレンジはD3と同等の広さを保ち、シャドーノイズは驚くほど抑えられています。高感度特性が高いおかげで、ISO感度が12800であっても我慢できるレベルのノイズです。撮影可能領域が大幅に広がるでしょう。ということは露出さえうまくまとめれば、かなりコントラストが強い条件であったり、暗視スコープが必要な条件であっても動画を撮影できる たぶん世界で最も逆境に強い動画カメラだと言えるでしょう。
また、センサーからのデータの転送速度が上がったことによりローリングシャッター現象もかなり抑えられたようです。その他、専用のシャッターが追加され、さらにシャッターボタンを動画用に変更することでリモートコントロールも可能になりました。タイムラプス撮影も充実して、かなり長時間の記録も可能などなど、動画撮影の新機能が増えています。
ニコンのデジタル一眼レフは、D7000でやっと仕事で使用できる動画記録カメラになったとはいえ、まだまだ動画のための装備がプアーでしたが、このD4まできてやっと「本格的に動画を撮影できるカメラに成長した」と言ってよいでしょう。
ただ、撮影時のビットレートが低い(これはD7000もそうだったのですが )ように感じられたり、動画撮影中の操作にいくつかの制限が残っています。動画に関しては、まだまだ進化の余地はある とはいえ、動画機能だけで欲しくなってしまうカメラでした。
このカメラなら、もっと良い映像を記録できる気がしてくるから不思議です。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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